パートタイム労働者や有期雇用労働者を雇い入れたとき、会社は、自分から待遇に関する措置の内容を説明しなければなりません。パートタイム・有期雇用労働法第14条第1項の義務です。この説明は、有期労働契約を更新するたびに必要です。「最初の1回だけでよい」という誤解が見られます。
第14条は3つの規定でできている
| 項 | きっかけ | 内容 |
|---|---|---|
| 第1項 | 雇い入れたとき | 第8条〜第13条の措置として講ずることとしている措置の内容を説明する |
| 第2項 | 労働者から求めがあったとき | 待遇の相違の内容・理由と、第6条〜第13条の措置を決めるときに考慮した事項を説明する |
| 第3項 | 第2項の求めをしたとき | 求めたことを理由とする解雇その他不利益な取扱いの禁止 |
第1項は、聞かれる前に会社から説明する義務です。第2項は、労働者から求められたときに説明する義務です。対象の範囲も違い、第1項は「第8条から」、第2項は「第6条から」になっています。
第1項の条文
事業主は、短時間・有期雇用労働者を雇い入れたときは、速やかに、第8条から第13条までの規定により措置を講ずべきこととされている事項に関し講ずることとしている措置の内容について、説明しなければなりません。
言い換えると、「法律が求めている各措置を、この会社ではこう講じています」と入口で伝える義務です。
何を説明するのか
説明の対象は第8条から第13条までです。
| 条文 | 内容 | 説明の例 |
|---|---|---|
| 第8条 | 不合理な待遇の禁止 | 正社員との間で、待遇ごとに不合理な相違を設けていないこと |
| 第9条 | 差別的取扱いの禁止 | 正社員と同視すべき短時間・有期雇用労働者に当たるかどうか |
| 第10条 | 賃金(努力義務) | 賃金を、職務の内容や成果、能力、経験などのどの要素で決めているか |
| 第11条 | 教育訓練(第2項は努力義務) | 受けられる教育訓練の内容 |
| 第12条 | 福利厚生施設 | 利用できる給食施設、休憩室、更衣室 |
| 第13条 | 通常の労働者への転換 | 正社員への転換制度の内容 |
施行通達によると、努力義務の条文(第10条、第11条第2項)も説明の対象に含まれます。一方、労働基準法第15条第1項で明示する事項と、法第6条第1項の特定事項(昇給・退職手当・賞与の有無、相談窓口など)は、第1項の説明から除かれます。どちらも別に明示義務があるからです。
「説明の例」の欄は、実務でよく使う説明の仕方を示したものです。通達に書かれた例ではありません。
説明の方法
施行通達では、次のどちらかの方法で説明するとしています。
- 資料を活用し、口頭で説明する方法
- 説明すべき事項を全て記載した、分かりやすい内容の資料を交付するなどの方法
一人ひとりに説明するほか、雇入れ時の説明会などで複数の労働者に同時に説明しても差し支えありません。
有期労働契約は更新のたびに説明が必要
誤解が多いのはこの部分です。施行通達には、次のように書かれています。なお改正前の通達にも同じ文言があり、この扱いは今回の改正前より変わっていません。
有期雇用労働者については、労働契約の更新をもって「雇い入れ」ることとなるため、その都度本項による説明が必要となるものであること。
短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律の施行について 施行通達 第3の10(3)
有期労働契約の更新は、法律上は新しく雇い入れることにあたります。だから第1項の説明も、更新のたびに必要になります。措置の内容を変えていなくても同じです。「最初の雇入れ時と、制度を変えたときだけ説明すればよい」という例外は、通達にはありません。
「望ましい」とされているのは別の話
混同されやすいのが、雇用管理指針(令和8年厚生労働省告示第202号)の次の部分です。
説明の求めがない場合であっても、労働契約の更新の際等に、待遇の相違の内容及び理由について容易に理解できる内容の資料を交付することや、説明を求めることができることを周知すること等が望ましい
「更新の際」と「望ましい」が同じ文に出てくるため、第1項の説明も更新時は望ましいだけ、と読まれがちです。けれども、この指針が扱っているのは第2項側の話、つまり待遇の相違の内容・理由の資料と、説明を求めることができるという周知です。
| 更新時の扱い | 根拠 | |
|---|---|---|
| 第1項の説明(措置の内容) | その都度必要 | 施行通達 |
| 待遇差の資料の交付、説明を求められることの周知 | 求めがなくても行うことが望ましい | 雇用管理指針 |
違反するとどうなるか
第14条の違反には、過料はありません。過料の対象は、第6条第1項(特定事項の明示)の違反だけです(法第31条)。
第14条に違反すると、厚生労働大臣による助言・指導・勧告の対象になります。勧告に従わなければ、公表されることがあります(法第18条)。公表の対象は、第6条第1項、第9条、第11条第1項、第12条から第14条まで、第16条の違反です。第8条(不合理な待遇の禁止)は公表の対象に入っていません。
公表されないからといって、第8条に違反しても問題がないわけではありません。不合理な待遇差は、労働者から損害賠償を請求される原因になります。
更新のたびの負担を減らす運用
措置の内容を変えていなければ、前回と同じ説明資料を渡せば足ります。毎回、説明をゼロからやり直す必要はありません。
令和8年10月1日からは、労働条件通知書に「法第14条第2項の規定による説明を求めることができる旨」も書くことになりました。第1項の説明資料と、第2項の説明を求める窓口の案内をセットにして、更新のたびに労働条件通知書と一緒に渡してください。そうすれば、義務の部分と望ましい部分を一度に満たせます。
まとめ
- 第14条第1項は、雇い入れたときに、第8条〜第13条の措置の内容を会社から説明する義務
- 努力義務の条文も説明の対象になる。労働基準法第15条の明示事項と特定事項は除かれる
- 有期労働契約の更新は「雇い入れ」にあたるため、更新のたびに説明が必要(措置の内容に変更がなくても同じ)
- 更新時に「望ましい」とされているのは、待遇差の資料の交付と、説明を求められることの周知
- 違反に過料はないが、勧告に従わなければ公表されることがある。第8条は公表の対象外
