パートタイム・有期雇用労働法|第14条第2項の求めがあった時の説明を解説(待遇の相違の内容・理由と考慮した事項)

パートタイム・有期雇用労働法|第14条第2項の求めがあった時の説明を解説(待遇の相違の内容・理由と考慮した事項) 労働社会保険諸法令の基礎知識
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パートタイム労働者や有期雇用労働者から「正社員との待遇の違いを説明してください」と求められたら、会社は説明しなければなりません。パートタイム・有期雇用労働法第14条第2項の義務です。説明することは2つあります。そして、多くの会社が準備しているのは、そのうち1つだけです。

林 利恵

Rie HAYASHI, MPH, PhD
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博士(医学)
特定社会保険労務士
東豊社労士事務所 代表
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医学研究者から社労士へ転身
労働衛生の専門知識を活かし
・就業規則作成
・メンタルヘルス対策
・両立支援
を得意としています
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第14条第2項の条文

事業主は、その雇用する短時間・有期雇用労働者から求めがあったときは、当該短時間・有期雇用労働者と通常の労働者との間の待遇の相違の内容及び理由並びに第6条から前条までの規定により措置を講ずべきこととされている事項に関する決定をするに当たって考慮した事項について、当該短時間・有期雇用労働者に説明しなければなりません。

条文は「並びに」で2つの事項をつないでいます。

説明すること対象
①待遇の相違の内容及び理由通常の労働者との待遇差
②措置を決めるときに考慮した事項第6条〜第13条の各措置

①待遇の相違の内容・理由

雇用管理指針では、①の説明を3つの要素に分けて整理しています。

要素中身
比較の対象職務の内容、職務の内容及び配置の変更の範囲などが、説明を求めた労働者と最も近いと事業主が判断する通常の労働者
待遇の相違の内容待遇に関する基準が同じか違うか。そのうえで、待遇の個別具体的な内容か、待遇に関する基準
待遇の相違の理由職務の内容、変更の範囲その他の事情のうち、その待遇の性質・目的に照らして適切なものに基づく理由

「通常の労働者」は、いわゆる正社員だけを指す言葉ではありません。期間の定めのない労働契約で働くフルタイムの労働者(無期雇用フルタイム労働者)も含まれます。無期転換後もフルタイムで働いている人がいれば、比較の対象の候補になります。

理由の説明は、基準が同じか違うかで変わります。

  • 基準が同じ場合:同じ基準の中で違いが生じている理由(成果、能力、経験の違いなど)
  • 基準が違う場合:基準に違いを設けている理由(職務の内容や変更の範囲の違い、労使交渉の経緯など)と、それぞれの基準をどう当てはめているか

「正社員だから」「パートだから」は理由になりません。雇用形態の違いは、待遇差を生む原因ではなく、待遇差そのものだからです。

②措置を決めるときに考慮した事項

②の対象は、第6条から第13条までの各措置です。説明する内容は、次のようなものが考えられます。

条文措置説明の例
第6条労働条件に関する文書の交付等特定事項(昇給・退職手当・賞与の有無、相談窓口など)をどう明示したか
第7条就業規則の作成の手続(努力義務)就業規則を作るとき、短時間・有期雇用労働者の過半数代表者の意見を聴いたか
第8条・第9条不合理な待遇の禁止、差別的取扱いの禁止待遇を決めるときに何を考慮したか
第10条賃金(努力義務)職務の内容、成果、意欲、能力、経験などのうち、何を勘案して賃金を決めたか
第11条教育訓練どのような教育訓練を実施しているか
第12条福利厚生施設どの福利厚生施設を利用できるようにしているか
第13条通常の労働者への転換どの転換推進措置を講じているか

「説明の例」の欄は、条文の文言から組み立てた例です。施行通達に条文ごとの説明例は示されていません。

範囲にも注意が要ります。雇入れ時の説明(第1項)は第8条から第13条まで、求めがあった時の説明(第2項)は第6条から第13条までです。第2項のほうが、第6条(労働条件の明示)と第7条(就業規則の作成手続)の分だけ広くなっています。

①だけでは足りない

同一労働同一賃金の対策として、正社員とパートタイム労働者の待遇を並べた一覧表を作る会社が増えました。これは①の準備としてはとても役に立ちます。けれども、②の「措置を決めるときに考慮した事項」は、一覧表からは出てきません。

条文は①と②を「並びに」で並べています。求められたら、両方を説明しなければなりません。待遇差の一覧表とは別に、第6条から第13条までの措置をどう講じているかを整理した資料を用意しておいてください。

令和8年10月1日からは「求められる前提」で

令和8年10月1日から、雇入れ時の明示事項に「法第14条第2項の規定による説明を求めることができる旨」が加わりました。パートタイム労働者や有期雇用労働者を雇い入れるたびに、会社自身が「説明を求めることができます」と知らせることになります。

「求められたら考えよう」という姿勢では、もう間に合いません。求められる前提で、①と②の両方を準備しておく必要があります。

まとめ

  • 第14条第2項は、短時間・有期雇用労働者から求めがあったときに説明する義務
  • 説明することは、①待遇の相違の内容・理由と、②第6条〜第13条の措置を決めるときに考慮した事項の2つ
  • ①は、比較の対象・待遇の相違の内容・理由の3つの要素で説明する。「パートだから」は理由にならない
  • 待遇差の一覧表だけでは、②が抜ける
  • 令和8年10月1日からは、説明を求めることができる旨を雇入れ時に明示する

参考資料