パートタイム・有期雇用労働法|令和8年10月1日施行の明示事項の追加を解説(説明を求めることができる旨・労働条件通知書)

パートタイム・有期雇用労働法|令和8年10月1日施行の明示事項の追加 労働社会保険諸法令の基礎知識
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令和8年10月1日から、パートタイム労働者や有期雇用労働者を雇い入れるときの労働条件通知書に、新しい項目が1つ必要になりました。「待遇の違いについて説明を求めることができる」ことを知らせる一文です。違反すると10万円以下の過料の対象になります。様式の差し替えがまだの会社は、早めに対応してください。

林 利恵

Rie HAYASHI, MPH, PhD
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博士(医学)
特定社会保険労務士
東豊社労士事務所 代表
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医学研究者から社労士へ転身
労働衛生の専門知識を活かし
・就業規則作成
・メンタルヘルス対策
・両立支援
を得意としています
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何が変わったのか

令和8年厚生労働省令第87号により、パートタイム・有期雇用労働法第6条第1項の「特定事項」に、1項目が加わりました。特定事項とは、短時間・有期雇用労働者を雇い入れたときに、文書で明示しなければならない事項のことです(施行規則第2条第1項)。

改正前令和8年10月1日から
昇給の有無昇給の有無
退職手当の有無退職手当の有無
賞与の有無賞与の有無
相談窓口相談窓口
―法第14条第2項の規定による説明を求めることができる旨

追加された事項の意味

施行通達は、「法第14条第2項の規定による説明を求めることができる旨」を次のように説明しています。

短時間・有期雇用労働者は、雇い入れられた後、通常の労働者との間の待遇の相違の内容及び理由と、第6条から第13条までの措置を決めるときに考慮した事項について、事業主に説明を求めることができる、ということです。

つまり、法第14条第2項の2つの説明事項が、そのまま明示の中身になります。

法第14条第2項の説明事項中身
待遇の相違の内容・理由通常の労働者との待遇差と、その理由
措置の決定で考慮した事項第6条〜第13条の各措置を決めるときに考慮したこと

労働条件通知書にはどう書くか

厚生労働省のモデル労働条件通知書では、次のように書く形になっています。

次の窓口に対して通常の労働者との間の待遇の相違(内容・理由)等について説明を求めることができる。
部署名/担当者職氏名/連絡先

「通常の労働者」は、「正社員」など自社での呼び方に置き換えてもかまいません。

窓口は、同じ通知書に書く「相談窓口」と同じ部署でも差し支えありません。施行通達は、相談窓口を「事業主が労働者からの苦情を含めた相談を受け付ける窓口」としています。

明示の方法

原則は文書の交付です。労働者が希望した場合に限り、FAXや電子メールなどで明示することもできます(施行規則第2条第3項)。会社の都合で、一方的に電子メールに切り替えることはできません。

違反した場合

特定事項を明示しなかった者は、10万円以下の過料に処せられます(法第31条)。さらに、厚生労働大臣の勧告に従わなかった場合は、公表の対象にもなります(法第18条第2項)。

労働基準法第15条の労働条件の明示義務と、罰則の種類が違う点に注意してください。

根拠明示事項違反
労働基準法第15条第1項契約期間、就業場所・業務、労働時間、賃金など30万円以下の罰金(刑罰)
パートタイム・有期雇用労働法第6条第1項昇給・退職手当・賞与の有無、相談窓口、説明を求めることができる旨10万円以下の過料(行政罰)

誰に明示すればよいか

対象者明示義務
10月1日以降に雇い入れる短時間・有期雇用労働者あり
10月1日以降に契約を更新する有期雇用労働者あり(更新は「雇い入れ」に当たる)
10月1日時点で契約期間中の有期雇用労働者次の更新時に明示する
10月1日より前に雇い入れた無期のパートタイム労働者改めて明示する義務はない

最後の行の人たちにも、説明を求められることを周知しておくのが望ましいとされています(雇用管理指針)。社内掲示やメールで一度案内しておけば、10月1日前後で雇入れ時期が違う人の間に、情報の差が生まれずに済みます。

派遣労働者も同じ

派遣元が派遣労働者を雇い入れるときの明示事項にも、同じ趣旨の事項が加わりました。労働者派遣法第31条の2第4項の規定による説明を求めることができる旨です。派遣元事業主も、様式の差し替えが必要です。

今日やること

  1. 労働条件通知書の様式を、改正後のものに差し替える
  2. 説明を求める窓口の部署名、担当者、連絡先を決めて記入する
  3. その担当者が、待遇の相違の内容・理由と、措置の決定で考慮した事項を説明できる資料を持っているか確かめる

3が一番大切です。通知書に窓口を書いた以上、説明を求められたら説明しなければなりません。窓口の担当者が何も持っていない、という状態は避けてください。

まとめ

  • 令和8年10月1日から、特定事項に「法第14条第2項の規定による説明を求めることができる旨」が加わった
  • 中身は、待遇の相違の内容・理由と、措置の決定で考慮した事項について説明を求められること
  • 明示は文書の交付が原則。違反は10万円以下の過料
  • 10月1日以降の雇入れと契約更新が対象。それ以前から雇っている無期のパートタイム労働者には、周知が望ましい
  • 様式の差し替えと同時に、窓口の担当者が説明できる資料を準備する

参考資料