パートタイム労働者や有期雇用労働者が、正社員との待遇の違いについて説明を求めたとします。その人を、会社は説明を求めたことを理由に不利に扱ってはなりません。パートタイム・有期雇用労働法第14条第3項の規定です。解雇だけでなく、契約の更新拒否や評価の引下げも問題になりえます。
第14条第3項の条文
事業主は、短時間・有期雇用労働者が前項の求めをしたことを理由として、当該短時間・有期雇用労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはなりません。
「前項の求め」とは、第14条第2項の説明の求めのことです。つまり、次の2つについて説明を求めたことが対象になります。
- 通常の労働者との間の待遇の相違の内容・理由
- 第6条から第13条までの措置を決めるときに考慮した事項
禁止される不利益な取扱い
厚生労働省のパンフレットは、禁止される不利益な取扱いとして、次のものを挙げています。
- 解雇
- 配置転換
- 降格
- 減給
- 昇給停止
- 出勤停止
- 労働契約の更新拒否
有期雇用労働者にとって、最も影響が大きいのは労働契約の更新拒否(雇止め)です。説明を求めた直後に雇止めをすれば、「説明を求めたことが理由ではないか」と問われることになります。
ただ、この規定で問題になるのは、説明を求めたことと不利益な取扱いの間に因果関係があるかどうかです。雇止めに別の正当な理由があれば、説明を求めた後の雇止めがすべて違反になるわけではありません。それでも、時期が近いほど、会社は「説明の求めとは関係のない理由だ」と示す必要に迫られます。
指針は「求めにくい空気」も問題にしている
厚生労働省のパンフレットは、指針の内容として次のように書いています。
パートタイム・有期雇用労働者が不利益な取扱いをおそれて、法第14条第2項に定める説明を求めないことがないようにしてください。
不利益な取扱いをしないだけでは足りません。そもそも説明を求めにくい雰囲気をつくらないことまで、事業主に求めているのです。パンフレットはあわせて、不利益な取扱いを恐れることなく説明を求められる職場環境にしていくことが望まれる、とも書いています。
なぜ第3項が必要なのか
法第14条第2項により、事業主は、求めがあれば待遇の相違の内容・理由などを説明しなければなりません。けれども、説明を求めた人を不利に扱うことが許されれば、誰も説明を求められなくなります。そうなれば、説明義務そのものが成り立ちません。
令和8年10月1日からは、雇入れ時に「法第14条第2項の規定による説明を求めることができる旨」を明示することにもなりました。説明を求めてよいと会社自身が知らせる以上、求めた人を守る第3項の意味はさらに大きくなります。第2項(説明義務)と第3項(不利益取扱いの禁止)は、セットで働く規定です。
違反した場合
第14条第3項の違反に、過料はありません。厚生労働大臣による助言・指導・勧告の対象になり、勧告に従わなければ公表されることがあります(法第18条第2項)。公表の対象には、第12条から第14条までの違反が含まれています。
民事上は、説明を求めたことを理由とする解雇や雇止めの効力そのものが争われることになります。
同じ構造の規定
パートタイム・有期雇用労働法には、もう1つ同じ構造の規定があります。
| 条文 | 理由とされる行為 | 禁止されること |
|---|---|---|
| 第14条第3項 | 第14条第2項の説明を求めたこと | 解雇その他不利益な取扱い |
| 第24条第2項 | 都道府県労働局長に紛争解決の援助を求めたこと | 解雇その他不利益な取扱い |
どちらも「してはならない」と書かれた禁止規定です。努力義務ではありません。
現場で起きやすいこと
規定そのものは知っていても、現場では次のようなことが起こりがちです。
- 説明を求めた人を「扱いにくい人」とみなして、評価を下げる
- 次の契約更新の面談で、説明を求めたことに触れる
どちらも、第14条第3項の問題になりえます。原因の多くは、現場の管理職がこの規定を知らないことです。
対策としては、次のような運用が考えられます。
- 説明の窓口の担当者と、その労働者の直属の上司・評価者を分けておく
- 説明を求めた記録と、評価や更新判断の記録を別々に管理する
- 管理職研修で、説明を求めることは法律で認められた行動であり、求めた人を不利に扱ってはならないと伝える
まとめ
- 第14条第3項は、第2項の説明を求めたことを理由とする解雇その他不利益な取扱いを禁止している
- 不利益な取扱いには、解雇、配置転換、降格、減給、昇給停止、出勤停止、労働契約の更新拒否などが含まれる
- 指針は、不利益な取扱いをおそれて説明を求めないことがないようにすることまで求めている
- 第2項(説明義務)と第3項(不利益取扱いの禁止)はセット。令和8年10月1日からは、説明を求めることができる旨の明示も始まった
- 管理職への周知と、窓口と評価者を分ける運用が、実務上の対策になる
