パートタイム労働者や有期雇用労働者から待遇の違いについて説明を求められたら、まず「誰と比べるか」を決めなければなりません。比べる相手は会社が選びますが、選び方には施行通達が示す基本の順番があります。しかも、選んだ理由まで説明する必要があります。
比べる相手は「最も近い」通常の労働者
待遇の相違の内容と理由は、職務の内容、職務の内容及び配置の変更の範囲などが最も近いと事業主が判断する通常の労働者と比べて説明します。
ここでいう「通常の労働者」は、いわゆる正社員だけではありません。期間の定めのない労働契約で働くフルタイムの労働者(無期雇用フルタイム労働者)も含まれます。無期転換した後もフルタイムで働いている人が、最も近い比較対象になることもあります。
誰と比べるかを決めるのは事業主です。説明を求めた労働者が相手を指定するわけではありません。
「近い」と判断する順番
施行通達は、次の順に「近い」と判断することを基本としています。
| 順番 | 職務の内容 | 職務の内容及び配置の変更の範囲 |
|---|---|---|
| ① | 同一 | 同一 |
| ② | 同一 | 同一でない |
| ③ | 業務の内容または責任の程度が同一 | ― |
| ④ | 同一でない | 同一 |
| ⑤ | 同一でない | 同一でない |
「職務の内容」は、業務の内容と、その業務に伴う責任の程度を合わせたものです。「職務の内容及び配置の変更の範囲」は、転勤、人事異動、昇進などの有無や範囲のことです。
①と④は似ていますが、別の区分です。①は2つの要素がいずれも同一の場合、④は職務の内容は違うものの、職務の内容及び配置の変更の範囲だけが同一の場合です。
①に当たる通常の労働者がいれば、説明を求めた人は第9条(均等待遇)の対象になる可能性があります。そのため、実務で多くなるのは②から⑤です。
同じ区分に何人もいるとき
同じ区分に当てはまる通常の労働者が何人もいる場合は、さらに絞り込むことが考えられます。施行通達は、絞り込みの観点として次の例を挙げています。
- 基本給の決定などで重要な要素の実態(職能給なら能力・経験、成果給なら成果など)
- 説明を求めた人と同じ事業所で雇用されているかどうか
どの観点で絞り込むかは、事業主が判断します。選んだ観点で、最も近いと考える人を選びます。
一人でなくてもよい
比較対象は、一人の通常の労働者に限られません。施行通達は、次のような選び方を例に挙げています。
| 比較対象の単位 | 向いている場面 | 注意点 |
|---|---|---|
| 一人の通常の労働者 | 職務が近い人がはっきりしている | 賃金額から個人が特定されやすい |
| 複数人の通常の労働者または雇用管理区分 | 同じ職種の通常の労働者が何人もいる | 平均額や幅で示すことになる |
| 過去1年以内に雇用していた一人または複数人の通常の労働者 | いまは近い通常の労働者がいない | 1年以内という期間に限られる |
| 通常の労働者の標準的なモデル(新入社員、勤続3年目の一般職など) | 実在の個人を出したくない | モデルの設定根拠を説明できるようにする |
一人を選ぶと、その人の賃金額が説明を求めた人にわかってしまいます。雇用管理区分やモデルで示す方法も、選択肢に入れておいてください。
選んだ理由も説明する
施行通達には、次のように書かれています。
比較対象として選定した通常の労働者及びその選定の理由についても、説明を求めた短時間・有期雇用労働者に説明する必要があること。
「誰と比べたか」と「なぜその人を選んだか」はセットです。たとえば、「職務の内容が同一の通常の労働者はいないため、業務の内容が同一である販売職の通常の労働者を選んだ」のように、区分と理由の両方を書きます。
比較対象は説明のためのもの
ここで選ぶ比較対象は、説明をするためのものです。第8条(不合理な待遇の禁止)に違反するかどうかは、待遇ごとに、さまざまな事情を考慮して判断されます。ここで選んだ人との比較だけで結論が決まるわけではありません。
説明書に書く項目
- 比較対象として選んだ通常の労働者(一人、雇用管理区分、モデルなど)
- その人の職務の内容と、職務の内容及び配置の変更の範囲
- その人を選んだ理由
まとめ
- 比較の対象は、職務の内容などが最も近いと事業主が判断する通常の労働者
- 「近い」順は、①いずれも同一、②職務の内容が同一、③業務の内容または責任の程度が同一、④職務の内容及び配置の変更の範囲が同一、⑤いずれも同一でない、が基本
- 同じ区分に複数いる場合は、基本給の決定要素や事業所などの観点で絞り込む
- 一人のほか、雇用管理区分、過去1年以内に雇用していた人、標準的なモデルも選べる
- 選んだ通常の労働者と、選んだ理由の両方を説明する
