パートタイム・有期雇用労働法|説明の求めがない場合の資料交付・周知を解説(改正雇用管理指針・契約更新時)

パートタイム・有期雇用労働法|説明の求めがない場合の資料交付・周知 労働社会保険諸法令の基礎知識
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これまで待遇差の説明は、パートタイム労働者や有期雇用労働者から「求められたら」するものでした。令和8年10月1日から適用された改正雇用管理指針では、求められていなくても、契約更新の際などに資料を渡したり、説明を求められることを知らせたりするのが望ましいとされました。「求められたら説明する」から「求められる前に渡す」への変化です。

林 利恵

Rie HAYASHI, MPH, PhD
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博士(医学)
特定社会保険労務士
東豊社労士事務所 代表
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医学研究者から社労士へ転身
労働衛生の専門知識を活かし
・就業規則作成
・メンタルヘルス対策
・両立支援
を得意としています
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改正雇用管理指針の新しい項目

令和8年厚生労働省告示第202号により、雇用管理指針に次の内容が加わりました。

事業主は、短時間・有期雇用労働者の自らの待遇に関する納得性の向上が当該待遇に関する紛争の防止に資することを踏まえ、短時間・有期雇用労働者から説明の求めがない場合であっても、労働契約の更新の際等に当該短時間・有期雇用労働者に対して、短時間・有期雇用労働者が待遇の相違の内容及び理由について容易に理解できる内容の資料を交付することや、待遇の相違の内容及び理由について説明を求めることができることを周知すること等が望ましい

求められていなくても行うのが望ましいとされたのは、次の2つです。

すること
資料の交付待遇の相違の内容・理由について、容易に理解できる内容の資料を渡す
周知待遇の相違の内容・理由について、説明を求めることができると知らせる

指針は、その理由として、自分の待遇に納得していることが、待遇をめぐる紛争の防止につながる点を挙げています。

「望ましい」でも軽く見ない

この項目の水準は「望ましい」です。義務でも、努力義務でもありません。

ただ、改正後の同一労働同一賃金ガイドラインには、事業主が十分な説明を行わなかったと認められる場合、その事実も「その他の事情」に含まれ、待遇差が不合理と判断される方向の事情として考慮されうる、と書かれています。求められる前に資料を渡しておけば、説明を尽くしてきたことの記録にもなります。

タイミングは「更新の際等」

指針は「労働契約の更新の際等」と書いています。「等」とあるので、更新時に限りません。たとえば、雇入れのときや、待遇を見直したときに渡すことも考えられます。

更新時の3つの対応を混同しない

有期労働契約を更新するときに、会社がすることは3つあります。同じ更新時の対応でも、水準がそれぞれ違います。

対応根拠水準
措置の内容の説明法第14条第1項(更新は「雇い入れ」に当たる)義務
「説明を求めることができる旨」の明示法第6条第1項義務(違反は過料)
待遇差の資料の交付・説明を求められることの周知雇用管理指針望ましい

「更新時の説明は望ましいだけ」という誤解は、1つ目と3つ目を混同したときに生まれます。第14条第1項の説明は、更新のたびに必要です。

明示と周知の違い

雇入れや更新のときの明示は、そのとき雇い入れる人が対象です。では、10月1日より前から雇っている無期のパートタイム労働者はどうでしょう。契約の更新がないので、明示の機会がありません。

このような人には、周知で補うことになります。明示の機会がある人とない人の間に、情報の差が生まれないようにするためです。

施行通達には周知の方法の例は示されていません。実務では、次のような方法が考えられます。

  • 社内掲示板やイントラネットに掲載する
  • 給与明細と一緒に案内文を配る
  • 面談のときに口頭で伝え、案内文を渡す

更新時の書類はセットにする

更新時に渡す書類をセットにしておくと、漏れを防げます。

書類目的水準
労働条件通知書「説明を求めることができる旨」の明示義務
雇入れ時の説明資料第14条第1項の措置の内容の説明義務
待遇の相違の内容・理由の説明書求めがない場合の資料の交付望ましい

3つ目の説明書は、求められたときに使う資料と同じもので足ります。説明書を1つ作っておけば、求められたときにも、求められていないときにも使えます。

まとめ

  • 改正雇用管理指針で、説明の求めがない場合の資料の交付と周知が「望ましい」とされた
  • 理由は、待遇への納得が紛争の防止につながるから
  • 水準は「望ましい」だが、十分な説明をしなかったことは「その他の事情」として考慮されうる
  • 更新時には、第14条第1項の説明(義務)、明示(義務)、資料の交付・周知(望ましい)の3つがある
  • 明示の機会がない無期のパートタイム労働者には、周知で補う

参考資料