同一労働同一賃金ガイドライン|基本給・賞与・退職手当の考え方を解説(令和8年10月改正・退職手当の新設)

同一労働同一賃金ガイドライン|基本給・賞与・退職手当の考え方を解説 労働社会保険諸法令の基礎知識
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同一労働同一賃金ガイドラインは、どんな待遇差が不合理で、どんな待遇差なら不合理でないかを示した指針です。令和8年10月1日から改正後の内容が適用されています。退職手当が独立した項目になり、賞与の考え方も追加されました。

林 利恵

Rie HAYASHI, MPH, PhD
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博士(医学)
特定社会保険労務士
東豊社労士事務所 代表
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医学研究者から社労士へ転身
労働衛生の専門知識を活かし
・就業規則作成
・メンタルヘルス対策
・両立支援
を得意としています
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同一労働同一賃金ガイドラインとは

正式名称は「短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針」(平成30年厚生労働省告示第430号)です。今回の改正は令和8年厚生労働省告示第203号で行われました。

ガイドラインは待遇ごとに「原則となる考え方」を示し、多くの項目に「問題とならない例」「問題となる例」を添えています。改正後、短時間・有期雇用労働者の部分(第3)は次の構成になりました。

項目見出し改正
第3の1基本給―
第3の2賞与注を追加
第3の3退職手当新設
第3の4各種手当(退職手当を除く。)無事故手当・家族手当・住宅手当を追加
第3の5福利厚生夏季冬季休暇・褒賞を追加など
第3の6その他―

ガイドラインに書かれていない待遇や、例に当てはまらないケースでも、第8条・第9条が適用されることに変わりはありません。

基本給|4つの類型

基本給は、何に応じて支給しているかで考え方が分かれます。

類型原則となる考え方
能力又は経験に応じて支給するもの通常の労働者と同一の能力・経験なら、その部分は同一の支給。一定の相違があれば、相違に応じた支給
業績又は成果に応じて支給するもの同一の業績・成果なら同一の支給。一定の相違があれば、相違に応じた支給
勤続年数に応じて支給するもの同一の勤続年数なら同一の支給。一定の相違があれば、相違に応じた支給
昇給であって、勤続による能力の向上に応じて行うもの同様に能力が向上したなら同一の昇給。一定の相違があれば、相違に応じた昇給

たとえば勤続年数に応じて基本給を上げている会社なら、有期雇用労働者の勤続年数も同じように数えて反映させる必要があります。契約を更新するたびに勤続年数をゼロに戻す扱いは、この考え方に合いません。

賃金の決め方そのものが違う場合

通常の労働者は職能給、パートタイム労働者は時給制、というように賃金の決定基準・ルールが違う会社は多いでしょう。この場合もガイドラインは、「将来の役割期待が異なるため」といった主観的・抽象的な説明では足りないとしています。職務の内容、職務の内容及び配置の変更の範囲、その他の事情の客観的・具体的な実態に照らして、不合理であってはなりません。この考え方は、改正で「第2 基本的な考え方」に移され、基本給以外の賃金にも共通するものとして整理されました。

賞与

原則となる考え方は、会社の業績等への労働者の貢献に応じて支給する賞与であれば、通常の労働者と同一の貢献をした短時間・有期雇用労働者には同一の賞与を、一定の相違があれば相違に応じた賞与を支給する、というものです。

改正で追加された注

賞与には、労務の対価の後払い、功労報償、生活費の補助、労働意欲の向上など、さまざまな性質・目的が含まれうると明記されました。そのうえで、次の3つがそろうと、賞与の相違は不合理と認められるものに当たりうる、としています。

  1. 賞与の性質・目的が、短時間・有期雇用労働者にも当てはまる
  2. それなのに、均衡のとれた内容の賞与を支給していない
  3. その見合いとして、労使交渉を経て基本給を高くしている、といった事情もない

「当たりうる」という書き方のとおり、結論は個別の事情で変わります。最高裁でも、アルバイト職員に賞与を支給しないことが不合理とまではいえないとされた例があります(大阪医科薬科大学事件、令和2年10月13日)。「パートには賞与なし」とだけ決めて理由を説明できない状態は、改正後はより危うくなると考えてください。

退職手当(新設)

退職手当は、独立した項目(第3の3)として新しく置かれました。

退職手当にも、労務の対価の後払い、功労報償など、さまざまな性質・目的が含まれうるとしたうえで、その性質・目的が短時間・有期雇用労働者にも当てはまるのに、通常の労働者との違いに応じた均衡のとれた退職手当を支給しない場合は、不合理と認められるものに当たりうることに留意すべき、としています。

最高裁では、契約社員に退職金を支給しないことが不合理とまではいえないとされた例があります(メトロコマース事件、令和2年10月13日)。ただ、この判決は個別の事実関係に基づく判断です。長く勤める有期雇用労働者がいる会社は、自社の退職手当の目的と照らし合わせて点検してください。

最初にやること|賞与・退職手当の「目的」を言葉にする

厚生労働省のリーフレットは、点検の手順として次の2つを挙げています。

  • 自社の賞与・退職手当の目的を確認する
  • その目的がパートタイム・有期雇用労働者にも当てはまるなら、支給要件が、通常の労働者との働き方や役割などの違いに応じたバランスのとれたものか確認する

目的が規程や社内資料に書かれていない会社では、この段階で止まってしまいます。目的を言葉にできなければ、待遇差の理由も説明できません。説明を求められたときの準備にもなるので、まず目的を書き出してみてください。

まとめ

  • ガイドラインの正式名称は「短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針」。令和8年10月1日から改正後の内容を適用
  • 基本給は、能力・経験、業績・成果、勤続年数、昇給の4類型ごとに、同じなら同一、違えば違いに応じて支給する
  • 賃金の決め方が違う場合も、「将来の役割期待が異なる」という抽象的な説明だけでは足りない
  • 賞与は性質・目的の多様性が明記され、見合いの事情もなく均衡のとれた支給をしない場合は不合理に当たりうる
  • 退職手当は独立した項目として新設された

参考資料