待遇の相違等に関する説明書は、法律で様式が決まっているわけではありません。けれども、何を書かなければならないかは、法第14条第2項と施行通達から読み取れます。記載事項を5つに整理し、待遇ごとの整理表を中心にした説明書の構成例を紹介します。
説明書に入れる5つの事項
法第14条第2項、雇用管理指針、施行通達から、説明書に入れる事項は次の5つに整理できます。
| 事項 | 中身 |
|---|---|
| ① | 比較対象として選定した通常の労働者と、その選定の理由 |
| ② | 待遇ごとの、待遇に関する基準の相違の有無 |
| ③ | 待遇ごとの、個別具体的な内容または待遇に関する基準 |
| ④ | 待遇ごとの、待遇の相違の理由 |
| ⑤ | 第6条〜第13条の措置の決定に当たって考慮した事項 |
①から④が「待遇の相違の内容及び理由」にあたります。⑤は、法第14条第2項が別に定めている説明事項です。
構成の例
5つの事項を、次のように配置すると整理しやすくなります。
| 部分 | 内容 |
|---|---|
| 本体 | 宛名、日付、事業主名、①比較対象と選定理由 |
| 別紙1 | 待遇ごとの整理表(②③④) |
| 別紙2 | ⑤措置の決定で考慮した事項 |
| 末尾 | 問い合わせ窓口と、説明を求めたことを理由に不利益な取扱いをしない旨 |
末尾の一文は、法令上の記載義務ではありません。ただ、法第14条第3項は、説明を求めたことを理由とする不利益な取扱いを禁止しています。指針は、不利益な取扱いをおそれて説明を求められないことがないようにする、という趣旨も示しています。説明書にこの一文を入れておくと、その趣旨を形にできます。
整理表は列が多くなるので、別紙を横向きにすると読みやすくなります。
待遇ごとの整理表の列
整理表には、次の列を置きます。
| 待遇名 | 待遇の目的 | 基準の相違の有無 | 通常の労働者の内容 | 短時間・有期雇用労働者の内容 | 相違の理由 |
|---|
「待遇の目的」の列は、法令上の記載事項ではありません。ただ、理由は待遇の性質・目的に照らして説明するものなので、目的を先に書いておくと理由がぐっと書きやすくなります。
整理表の行はガイドラインの順に
行は、同一労働同一賃金ガイドラインの項目の順に並べると、書き漏れを防げます。
- 基本給(能力・経験、業績・成果、勤続年数、昇給)
- 賞与
- 退職手当
- 各種手当(役職手当、精皆勤手当、時間外労働手当、通勤手当、家族手当、住宅手当など)
- 福利厚生(福利厚生施設、慶弔休暇、病気休職、夏季冬季休暇、褒賞など)
- その他(教育訓練、安全管理)
整理表の書き方のルール
- 自社に制度がない待遇は「制度なし」と書く
- 短時間・有期雇用労働者にだけない待遇は「支給なし」と書き、理由を必ず書く
- 待遇差がない待遇も、「基準は同一、相違なし」と書く
記入例は次のとおりです。
| 待遇 | 目的 | 基準の相違 | 通常の労働者 | パートタイム労働者 | 理由 |
|---|---|---|---|---|---|
| 通勤手当 | 通勤費用の補填 | なし | 実費支給(上限〇万円) | 実費支給(上限〇万円) | 基準は同一、相違なし |
| 住宅手当 | 転居を伴う配置の変更に伴う住宅費の補助 | あり | 月額〇万円(転居を伴う配置の変更がある者) | 支給なし | 転居を伴う配置の変更がないため |
| 退職手当 | ― | ― | 制度なし | 制度なし | ― |
作る順番
- 就業規則・賃金規程から、待遇を全部書き出す
- 待遇ごとに目的を書く
- 比較対象を選ぶ
- 内容と理由を埋める
- ⑤の措置の決定で考慮した事項を整理する
いきなり整理表を埋め始めるより、目的と比較対象を先に決めたほうが、内容と理由がぶれません。
抜けやすいのは⑤
整理表ができあがると、説明書が完成したような気になります。けれども、⑤の「第6条〜第13条の措置の決定に当たって考慮した事項」は、整理表からは出てきません。第6条(労働条件の明示)、第7条(就業規則の作成手続)、第10条(賃金)、第11条(教育訓練)、第12条(福利厚生施設)、第13条(通常の労働者への転換)などについて、何を考慮して決めたのかを別に整理しておく必要があります。
作った後の運用
- 待遇を見直したら、説明書も更新する(更新日を書いておく)
- 比較対象を一人にする場合は、個人情報に配慮して示し方を工夫する
- 就業規則の条番号を整理表に書き添えておくと、根拠を示しやすい
まとめ
- 説明書に入れる事項は、比較対象と選定理由、基準の相違の有無、内容、理由、措置の決定で考慮した事項の5つ
- 本体、待遇ごとの整理表、措置の決定で考慮した事項の3つに分けると整理しやすい
- 整理表には「待遇の目的」の列を置き、行はガイドラインの項目の順に並べる
- 制度がない待遇、支給がない待遇、相違がない待遇も書く
- 一番抜けやすいのは、措置の決定で考慮した事項
