派遣労働者にも、パートタイム労働者や有期雇用労働者と同じように、待遇について説明を求める仕組みがあります。根拠は労働者派遣法第31条の2です。大きく違うのは「誰と比べるか」で、派遣先均等・均衡方式か労使協定方式かによって、説明の中身が変わります。
説明の義務を負うのは派遣元
派遣労働者を雇っているのは派遣元事業主です。待遇の説明も、派遣元事業主が行います。構造は、パートタイム・有期雇用労働法第14条とほぼ同じです。
| パートタイム・有期雇用労働法 | 労働者派遣法 | |
|---|---|---|
| 説明義務者 | 事業主 | 派遣元事業主 |
| 雇入れ時 | 第14条第1項 | 第31条の2第2項 |
| 派遣時 | ― | 第31条の2第3項 |
| 求めがあった時 | 第14条第2項 | 第31条の2第4項 |
| 不利益取扱いの禁止 | 第14条第3項 | 第31条の2第5項 |
派遣には「派遣時」の明示・説明があります。派遣先が変われば比べる相手や待遇も変わりうるため、派遣するたびに明示・説明をすることになっています。
求めがあった時の説明(第31条の2第4項)
派遣元事業主は、派遣労働者から求めがあったときは、派遣労働者と比較対象労働者(第26条第8項)との間の待遇の相違の内容と理由、そして第30条の3から第30条の6までの措置を決めるときに考慮した事項を説明しなければなりません。
「待遇の相違の内容及び理由」と「措置の決定に当たって考慮した事項」の2つを説明する点は、パートタイム・有期雇用労働法と同じです。
比べる相手は方式で変わる
パートタイム・有期雇用労働法では、比べる相手は同じ会社の通常の労働者です。派遣では、待遇を決める方式によって、比べる相手が変わります。
| 方式 | 賃金 | 教育訓練・福利厚生施設 | その他の待遇 |
|---|---|---|---|
| 派遣先均等・均衡方式 | 派遣先の比較対象労働者 | 派遣先の比較対象労働者 | 派遣先の比較対象労働者 |
| 労使協定方式 | 一般労働者の平均的な賃金(一般賃金) | 派遣先が講ずる措置(第40条第2項・第3項) | 派遣元の通常の労働者 |
派遣先均等・均衡方式
派遣先の通常の労働者と比べて待遇を決める方式です。派遣元は、派遣先から提供を受けた比較対象労働者の待遇などの情報に基づいて、待遇の相違の内容と理由を説明します。
内容と理由の説明の仕方は、パートタイム・有期雇用労働法と同じ枠組みです。待遇の相違の内容として、待遇を決めるときに考慮した事項の違いの有無と、個別具体的な内容または実施基準を説明します。理由は、職務の内容、職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情のうち、待遇の性質・目的に照らして適切なものに基づいて説明します。
労使協定方式
派遣元で労使協定を結び、その協定に基づいて待遇を決める方式です。説明の内容が、待遇によって分かれます。
- 賃金:同じ種類の業務に従事する一般労働者の平均的な賃金の額と同等以上として労使協定に定めたもの、そして協定に定めた公正な評価に基づいて決めていることを説明する
- 賃金、教育訓練(第40条第2項)、福利厚生施設(第40条第3項)以外の待遇:派遣元の通常の労働者との間で、不合理な相違がなく決められていることなどを説明する
労使協定方式だから説明がいらない、ということはありません。説明の中身が変わるだけです。
令和8年10月1日から
パートタイム・有期雇用労働法と同じく、派遣でも明示事項が追加されました(令和8年厚生労働省令第87号)。派遣元事業主が派遣労働者を雇い入れるときの明示事項に、「法第31条の2第4項の規定による説明を求めることができる旨」が加わっています。派遣元事業主は、労働条件通知書などの様式を見直す必要があります。
派遣先にも関係がある
派遣先均等・均衡方式では、派遣元の説明は、派遣先から提供された比較対象労働者の待遇情報が前提です(第26条第7項)。派遣先の情報が不十分だと、派遣元は派遣労働者に説明できません。
派遣先の担当者も、自社の情報が派遣労働者への説明に使われることを前提に、正確な情報を提供してください。
まとめ
- 派遣労働者への待遇の説明は、派遣元事業主が行う(第31条の2)
- 雇入れ時、派遣時、求めがあった時の説明と、不利益取扱いの禁止がある
- 派遣先均等・均衡方式では、派遣先の比較対象労働者と比べて説明する
- 労使協定方式では、賃金は一般賃金と公正な評価、その他の待遇は派遣元の通常の労働者との関係で説明する
- 令和8年10月1日から、雇入れ時の明示事項に「説明を求めることができる旨」が加わった
