待遇の違いについて説明するとき、一番むずかしいのが「理由」です。施行通達は、待遇に関する基準が同じ場合と違う場合に分けて、説明すべきことを示しています。そして、理由を書く前に、その待遇が何のためにあるのかを決めておく必要があります。
理由は何に基づいて説明するのか
雇用管理指針と施行通達は、待遇の相違の理由について、次のように示しています。
通常の労働者及び短時間・有期雇用労働者の職務の内容、職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情のうち、待遇の性質及び待遇を行う目的に照らして適切と認められるものに基づき説明する必要があること
この枠組みは、法第8条(不合理な待遇の禁止)で待遇差が不合理かどうかを判断するときの要素と同じです。説明の理由と、不合理かどうかの判断は、同じ物差しでつながっています。
基準が同一の場合
通常の労働者と短時間・有期雇用労働者で、待遇に関する基準が同じ場合は、同じ基準のもとで違いが生じている理由を説明します。施行通達は、成果、能力、経験の違いなどを例に挙げています。
たとえば、通常の労働者もパートタイム労働者も同じ等級表を使っていて、等級が違うために基本給に差がある場合です。このときは、なぜ等級が違うのか、つまり能力や経験の違いを説明します。
基準が異なる場合
基準が違う場合は、次の2つを説明します。
- 待遇の性質・目的を踏まえ、待遇に関する基準に違いを設けている理由
- それぞれの基準を、通常の労働者と短時間・有期雇用労働者にどのように適用しているか
1の理由として、施行通達は、職務の内容や、職務の内容及び配置の変更の範囲の違い、労使交渉の経緯などを挙げています。
たとえば、通常の労働者は職能給、パートタイム労働者は職務に応じた時給、という会社を考えます。この場合は、なぜ賃金の決め方を分けているのかを説明し、そのうえで、それぞれの賃金をどう決めているのかも説明します。「なぜ基準を分けたか」と「どう当てはめているか」は、セットで説明します。
書く前に「待遇の目的」を決める
理由は、待遇の性質・目的に照らして説明します。裏を返せば、目的が決まっていない待遇は、理由も書けません。
| 待遇 | 目的の例 | 理由になりうるもの |
|---|---|---|
| 住宅手当 | 転居を伴う配置の変更に伴う住宅費の補助 | 転居を伴う配置の変更の有無 |
| 通勤手当 | 通勤にかかる費用の補填 | 職務の内容や配置の変更の範囲の違いは、理由になりにくい |
同じ「住宅手当」でも、目的が違えば、理由として使える事情も変わります。まず、自社の手当や休暇ごとに目的を書き出してみてください。
主観的・抽象的な説明では足りない
同一労働同一賃金ガイドラインは、賃金の決定基準やルールが違う場合について、次のように書いています。
「将来の役割期待が異なるため」といった主観的または抽象的な説明では足りず、職務の内容、職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情の客観的・具体的な実態に照らして、不合理なものであってはならない。
「役割が違うから」と書くなら、どの業務、どの責任、どの異動の範囲が違うのかまで書く必要があります。
| 待遇 | NG | OK |
|---|---|---|
| 基本給 | 正社員とパートでは役割が違うため | 通常の労働者は、〇〇業務に加え部下の指導と売上管理の責任を負い、全国の事業所への転勤があるため、職能給を適用している。パートタイム労働者は△△業務に従事し、転勤はないため、職務に応じた時給を適用している |
| 賞与 | 正社員のみ対象のため | 賞与は会社業績への貢献に応じて支給する。パートタイム労働者にも、貢献に応じて寸志を支給している(通常の労働者との違いは〇〇) |
NGの例は、どちらも雇用形態そのものを理由にしています。雇用形態の違いは待遇差の「結果」であって、「理由」にはなりません。
理由の書き方の型
待遇ごとに、次の順で書くと整理しやすくなります。
- この待遇の目的
- 基準は同一か、異なるか
- 同一なら、差が生じている理由(成果、能力、経験など)
- 異なるなら、基準を分けている理由と、それぞれの基準の適用方法
まとめ
- 理由は、職務の内容、職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情のうち、待遇の性質・目的に照らして適切なものに基づいて説明する
- 基準が同一なら、同じ基準のもとで差が生じている理由を説明する
- 基準が異なるなら、基準を分けている理由と、それぞれの基準の適用方法を説明する
- 待遇の目的が決まっていなければ、理由は書けない
- 「将来の役割期待が異なる」といった主観的・抽象的な説明では足りない
