国民健康保険団体連合会とは|法第83条と診療報酬審査委員会の仕組みを解説

国民健康保険団体連合会とは 労働社会保険諸法令の基礎知識
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病院で受け取る領収書の裏側では、レセプトの審査が行われています。国保の場合、それを担うのが国民健康保険団体連合会です。各都道府県にあり、市町村や国保組合が会員になっています。令和7年10月には、支払基金との連携を求める新しい規定も加わりました。

林 利恵

Rie HAYASHI, MPH, PhD
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博士(医学)
特定社会保険労務士
東豊社労士事務所 代表
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医学研究者から社労士へ転身
労働衛生の専門知識を活かし
・就業規則作成
・メンタルヘルス対策
・両立支援
を得意としています
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連合会は何のための組織か(法第83条)

法第83条は、都道府県もしくは市町村または組合は、共同してその目的を達成するため、国民健康保険団体連合会を設立することができると定めています。

内容
第1項都道府県・市町村・組合が共同して設立できる
第2項連合会は法人とする
第3項名称中に「国民健康保険団体連合会」という文字を用いなければならない
第4項連合会でない者は、この名称またはこれに類する名称を用いてはならない

条文の主体が「都道府県若しくは市町村又は組合」となっているのは、平成30年度の都道府県単位化に対応したものです。都道府県が保険者に加わったことで、条文も書き換えられました。

保険者が個別にレセプトを審査して支払うのは、あまりに非効率です。共同で処理するために設けられたのが連合会です。

設立と会員(法第84条)

内容
第1項設立しようとするときは、その区域を含む都道府県の知事の認可を受けなければならない
第2項連合会は、設立の認可を受けた時に成立する
第3項都道府県の区域を区域とする連合会に、その区域内の都道府県および市町村ならびに組合の3分の2以上が加入したときは、その他の都道府県・市町村・組合はすべて会員となる

第3項が特徴的です。3分の2以上が加入すれば、残りは自動的に会員になります。任意設立でありながら、実質的には全員が参加する仕組みです。

実際、すべての都道府県に連合会が設立されており、市町村と国保組合は会員になっています。

連合会の主な業務

審査支払

対象内容
国民健康保険診療報酬の審査支払
後期高齢者医療診療報酬の審査支払
公費負担医療医療費の審査支払
福祉医療地方公共団体が独自に実施するもの
介護保険介護給付費の審査支払
障害者総合支援法給付費の審査支払

国保だけを扱っているわけではありません。市町村が関わる医療・介護・障害福祉の給付費を、まとめて処理しています。

保険者事務の共同処理

レセプト点検の支援、第三者行為による求償事務、特定健診・特定保健指導のデータ管理など、保険者から委託を受けた事務も担っています。

出産育児一時金等の支払事務

法第58条第3項は、出産育児一時金・葬祭費と傷病手当金の支払に関する事務を、国民健康保険団体連合会または社会保険診療報酬支払基金に委託できると定めています。

出産育児一時金の直接支払制度で、分娩施設への支払いが国保連を経由して行われるのは、この規定によるものです。

診療報酬審査委員会(法第87条)

連合会には、国民健康保険診療報酬審査委員会が置かれます。

委員は三者構成です。

委員
保険医および保険薬剤師を代表する委員
保険者を代表する委員
公益を代表する委員

①と②は同数とされます。診療する側と支払う側を対等に置き、そこに公益代表を加えることで、審査の中立性を確保する設計です。

③の公益代表は同数とはされていません。この点は細かいところですが、条文の書き方として押さえておく価値があります。

審査委員会の権限

審査に必要があるときは、保険医療機関等に報告や診療録その他の帳簿書類の提出・提示を求め、開設者、管理者、保険医、保険薬剤師などに出頭や説明を求めることができるとされています。

書面だけで判断できない場合に、実態を確認する手段が用意されているわけです。

令和7年10月施行の新しい規定(法第85条の2)

令和7年10月1日から、連合会に対する努力義務規定が加わりました。

内容は次のとおりです。

努めるべきこと
診療報酬請求書の審査における公正性および中立性の確保を通じた国民の保健医療の向上および福祉の増進
診療報酬請求書情報等の分析等を通じた国民の保健医療の向上および福祉の増進ならびに医療費適正化
情報通信の技術の活用による業務運営の効率化の推進
業務運営における透明性の確保

そのうえで、医療保険制度の安定的かつ効率的な運営に資するよう、支払基金と有機的に連携しつつ、診療報酬の適正な請求に資する支援その他の取組を行うよう努めなければならないとされています。

なぜこの規定が置かれたのか

審査支払機関をめぐっては、以前から課題が指摘されてきました。

  • 国保連と支払基金で審査結果が異なることがある
  • 同じ内容の審査を二重に行っている
  • システムがそれぞれ別に構築されている

審査基準の統一、レセプト情報の分析活用、システムの共同化といった改革が進められており、法第85条の2はその方向を条文に書き込んだものといえます。

ただし努力義務規定です。「努めなければならない」であり、違反に対する制裁があるわけではありません。

2つの審査支払機関

国保連と支払基金の関係を整理しておきます。

国民健康保険団体連合会社会保険診療報酬支払基金
根拠法国民健康保険法第83条社会保険診療報酬支払基金法
扱う保険国保、後期高齢者医療など被用者保険
組織都道府県ごと全国組織

法第58条第3項が「国民健康保険団体連合会又は支払基金」と並べているのは、この2つが審査支払機関として並び立っているためです。

国民健康保険中央会

各都道府県の連合会の全国組織として、国民健康保険中央会があります。

ただし、国保法に根拠規定はありません。連合会が法律に基づく法人であるのに対し、中央会は連合会が集まって作った団体です。位置づけが異なります。

まとめ

  • 連合会は、都道府県・市町村・組合が共同して設立できる法人(法第83条)
  • 設立には都道府県知事の認可が必要。認可を受けた時に成立(法第84条)
  • 区域内の3分の2以上が加入すると、残りはすべて会員になる
  • 業務は国保だけでなく、後期高齢者医療、公費負担医療、介護、障害福祉にも及ぶ
  • 診療報酬審査委員会は三者構成。保険医・保険薬剤師代表と保険者代表は同数(法第87条)
  • 令和7年10月施行の法第85条の2で、支払基金との有機的連携が努力義務とされた
  • 国保中央会に国保法上の根拠規定はない

従業員が交通事故に遭って第三者行為の届出をしたとき、実際に加害者側へ求償するのは国保連である場合があります。市町村から求償事務の委託を受けているためです。「市役所に届けたのに国保連から連絡が来た」と戸惑われることがありますので、そういう仕組みだと伝えられるようにしておくと安心です。

参考資料