柔軟な働き方の措置で「1日6時間以下のパート」を短時間勤務から除外していませんか

柔軟な働き方の措置で「1日6時間以下のパート」を短時間勤務から除外していませんか 就業規則・人事制度
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令和7年10月に始まった「柔軟な働き方を実現するための措置」。短時間勤務を選んだ会社で、3歳未満の時短規定をそのまま準用した結果、1日6時間以下のパートタイマーを対象外にしてしまっている規程が見つかっています。栃木労働局の注意喚起と厚生労働省のQ&Aをもとに、何が問題で、どう直せばよいかを解説します。

林 利恵

Rie HAYASHI, MPH, PhD
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博士(医学)
特定社会保険労務士
東豊社労士事務所 代表
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医学研究者から社労士へ転身
労働衛生の専門知識を活かし
・就業規則作成
・メンタルヘルス対策
・両立支援
を得意としています
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栃木労働局が「至急確認を」と呼びかけている規定

栃木労働局が、育児・介護休業規程の書き方について注意を呼びかけています。対象は、令和7年10月1日に始まった「柔軟な働き方を実現するための措置」です。

育児・介護休業等に関する規程の注意点|栃木労働局 より引用

就業規則の書き方によっては、法律の基準を下回ってしまうケースが発生しているとのことです。典型的なのは、3歳未満の子を養育する従業員向けの短時間勤務の規定を、3歳以上の措置にそのまま準用している場合です。

結論

3歳から小学校就学前の子を養育する従業員向けの「柔軟な働き方を実現するための措置」で短時間勤務を選んだ場合、1日の所定労働時間が6時間以下の従業員を対象から除外することはできません。

3歳未満向けの短時間勤務では認められている除外が、3歳以上の措置では認められていないためです。現在6時間以下の従業員が在籍していなくても、規程は法令に合った内容にしておく必要があります。

なぜ準用すると法を下回るのか

二つの制度は根拠条文が違い、除外できる人の範囲も違います。

3歳未満の短時間勤務3歳〜就学前の柔軟な措置
根拠条文育児・介護休業法第23条第1項同法第23条の3第1項(短時間勤務は第3号)
位置付け短時間勤務そのものが義務5つの選択肢から2つ以上を講じる義務。短時間勤務はその1つ
1日の所定労働時間が6時間以下の人除外できる除外できない
労使協定で除外できる人入社1年未満、週の所定労働日数2日以下、業務上措置が困難な人(代替措置が必要)入社1年未満、省令で定める人など

多くの会社は、3歳未満の短時間勤務で「1日の所定労働時間が6時間以下の者は対象外」と定めています。これは法律上認められた除外です。

ところが、3歳以上の措置の短時間勤務で「手続きや内容は3歳未満の規定を準用する」と書くと、この除外まで一緒に持ち込まれます。その結果、6時間以下のパートタイマーや短時間正社員が短時間勤務を選べなくなり、法律の基準を下回ってしまいます。

厚生労働省のQ&Aでも明記されている

この点は、栃木労働局だけの独自解釈ではありません。厚生労働省の「令和6年改正育児・介護休業法に関するQ&A」のQ2-7-2が、次のように示しています。

  • 1日の所定労働時間が6時間以下のパートタイム労働者等も、柔軟な働き方を実現するための措置の対象となる
  • 短時間労働者も含めて、短時間勤務制度(1日の所定労働時間を少なくとも6時間に短縮できるもの)とそれ以外の措置を合わせて2つ以上講じれば、措置義務を果たしたことになる
  • 従業員の労働契約上の所定労働時間が6時間以下であることをもって、短時間勤務制度を講じたことにはならない

「うちのパートはもともと6時間以下だから、短時間勤務の措置は済んでいる」という考え方は通らない、ということです。

規程の直し方は2通り

栃木労働局は、次のいずれかの方法で対応するよう示しています。

  1. 6時間以下の従業員も対象に含める 準用している3歳未満の規定に「6時間以下の者を除く」とあっても、3歳以上の措置の規定に「所定労働時間が6時間以下の従業員も本措置の対象とする」旨のただし書きを加えます。
  2. 6時間以下の従業員には、選べる別の措置を設ける 除外した6時間以下の従業員のために、別の措置を追加します。

2の方法で正社員とパートの措置の組合せが異なる場合は、パートタイム・有期雇用労働法にも注意が必要です。厚生労働省のQ&A(Q2-6、Q2-7-2)は、職務の内容などを考慮して不合理な待遇差にならないようにし、差の理由を従業員に合理的に説明できるようにすることを求めています。

措置を選ぶときは「実際に使えるか」も確認を

厚生労働省のQ&A(Q2-5)は、従業員の職種や配置などから利用できないことがあらかじめ想定できる措置を講じても、措置義務を果たしたことにはならないとしています。そのうえで、事業所単位や職種ごとに措置の組合せを変えることも差し支えないとしています。

規程の文言を整えるだけでなく、パートタイマーや短時間正社員を含め、対象となる従業員が実際に使える措置になっているかを、自社の勤務実態に照らして確認しておきましょう。

自社の規程のチェックリスト

  • 柔軟な働き方の措置として、短時間勤務を選んでいるか
  • その短時間勤務の規定で、3歳未満の短時間勤務の規定を準用していないか
  • 準用している場合、「1日の所定労働時間が6時間以下の者を除く」という除外まで持ち込まれていないか
  • 準用していなくても、3歳以上の措置の規定に所定労働時間による除外を書いていないか
  • 6時間以下の従業員が今いないことを理由に、修正を見送っていないか

規程を修正するときの手続き

  • 過半数代表等からの意見聴取:柔軟な働き方の措置を講じるときは、あらかじめ過半数労働組合または過半数代表者の意見を聴く必要があります(育児・介護休業法第23条の3第4項)。厚生労働省のQ&A(Q2-7)は、措置を講じた後に内容を追加・変更する場合も、改めて意見聴取が必要としています。
  • 就業規則の変更手続き:育児・介護休業規程は就業規則の一部です。変更後は、従業員代表の意見書を添えて労働基準監督署へ届け出て、従業員に周知します。
  • 届出のまとめ方:パートタイマー用の就業規則など、他の規程の改定が近く予定されていれば、あわせて届け出ると手間が省けます。その場合は、意見書の対象に両方の規程を含めておきましょう。

まとめ

3歳未満の短時間勤務と3歳以上の柔軟な働き方の措置は、似ていても別の制度です。3歳未満の規定を準用するときは、除外規定まで持ち込んでいないかを必ず確認してください。

修正が必要な場合は、意見聴取と届出の手続きも忘れずに行いましょう。判断に迷う場合は、社会保険労務士や管轄の労働局雇用環境・均等室にご相談ください。

参考資料