障害者雇用促進法の総まとめ|37.5人・100人・300人・5人、4つの基準値と条文番号の整理

障害者雇用促進法の総まとめ 労働社会保険諸法令の基礎知識
この記事は約12分で読めます。

障害者雇用促進法には、企業規模に応じた基準値が4つあります。37.5人、100人、300人、そして5人。それぞれ根拠条文も判定方法も違います。2026年7月1日から法定雇用率が2.7%になり、義務の対象が37.5人以上に広がったこの機会に、制度の全体像と条文番号を横断的に整理します。

林 利恵

Rie HAYASHI, MPH, PhD
-----------------
博士(医学)
特定社会保険労務士
東豊社労士事務所 代表
-----------------
医学研究者から社労士へ転身
労働衛生の専門知識を活かし
・就業規則作成
・メンタルヘルス対策
・両立支援
を得意としています
-----------------
オンライン相談(Zoom)で全国対応
まずは無料相談(30分)から
【無料相談お申し込み】

\【就業規則ラボ】就業規則の知識を毎日お届け!フォローすると労務リスクに強くなります/

この法律は二段構造になっている

まず出発点です。障害者雇用促進法は、ひとつの法律の中に対象者の範囲が異なる2つの層を持っています。

差別禁止・合理的配慮雇用率・納付金
条文法第34条〜第36条の6法第43条〜
対象障害者」(法第2条第1号)対象障害者」(法第37条第2項)
障害者手帳不要必要
範囲難病・高次脳機能障害・手帳未取得の発達障害等を含む身体・知的・精神の3類型に限定

手帳を持たない発達障害の社員は、実雇用率にカウントすることはできませんが、合理的配慮の提供義務はかかります。「カウントできないから何もしなくてよい」という判断が、紛争の入口になります。

混同しやすい4つの基準値

人数何が発生するか根拠条文判定方法
37.5人以上雇用義務法第43条除外率控除後の常用労働者数。特殊法人は33.5人以上(令和8年7月〜)
100人超納付金・調整金法第53条・第50条100人を超える(100.5人以上の)月が年度内に5か月以上
100人以下報奨金法附則第4条
300人以下もにす認定の申請資格
5人以上障害者職業生活相談員の選任義務法第79条第2項事業所単位・実人数

37.5人はなぜ半端な数字なのか

1÷0.027=37.03…ですが、常用労働者数は短時間労働者を0.5人と数えるため0.5刻みでしか動きません。

  • 37.0人×2.7%=0.999 → 端数切捨てで0人(義務なし)
  • 37.5人×2.7%=1.0125 → 1人(義務あり)

法定雇用障害者数が1人以上になる最小の常用労働者数が37.5人だということです。

なお、この人数は除外率による控除後の数で判定します。除外率設定業種(建設業10%、医療業20%、特別支援学校35%など)では、控除前が40人を超えていても義務が生じない場合があります。

100人超の判定は「5か月以上」

JEEDの案内は次のように定義しています。

「常用雇用労働者の総数が100人を超える事業主」とは、(当該年度の)12か月のうち、常用雇用労働者の総数が100人を超える(100.5人以上の)月が5か月以上あるすべての事業主です。

年度の一部の月だけ100人を超えても、それが4か月以下であれば報奨金の側に留まります。

なお納付金制度上の「常用雇用労働者」は、週所定労働時間が20時間以上で1年を超えて雇用される者です。週20時間未満の労働者は含まれません。各月の人数を把握する「算定基礎日」は、毎月初日または賃金締切日とすることが原則です。

5人以上に実雇用率のカウントは使えない

もっとも誤りやすい点です。障害者職業生活相談員の選任義務は、障害の程度や労働時間の長短に関わらず、常時雇用している障害者の実人数が5名以上いる事業所に生じます。ダブルカウントや0.5カウントは適用されません。

また事業所単位です。企業全体で10人雇用していても、5つの事業所に2人ずつ分散していれば、どの事業所にも義務は生じません。

金額の整理

制度単価逓減根拠条文
障害者雇用納付金不足1人月5万円法第53条
障害者雇用調整金超過1人月29,000円年120人月超は23,000円法第50条
報奨金超過1人月21,000円年420人月超は16,000円法附則第4条
在宅就業障害者特例調整金21,000円×(支払総額÷評価額350,000円)法第74条の2
在宅就業障害者特例報奨金17,000円×(同)法附則第4条第4項・第6項

納付金(5万円)と調整金(29,000円)が同額でないのは、差額が報奨金や各種助成金の財源に充てられる構造だからです。

⚠️ 調整金の額を27,000円と記載している解説が今も流通していますが、これは過去の水準です。現行は29,000円です。

申告・申請期限が違う

手続対象期限
納付金の申告・調整金の申請常用労働者100人超4月1日〜5月15日
報奨金等の申請常用労働者100人以下4月1日〜7月31日

年度の中途に事業を廃止した場合(吸収合併等を含む)は、廃止した日から45日以内に申告申請が必要です。

実雇用率のカウント

区分30時間以上20時間以上30時間未満10時間以上20時間未満
身体障害者(重度以外)1人0.5人対象外
重度身体障害者2人1人0.5人
知的障害者(重度以外)1人0.5人対象外
重度知的障害者2人1人0.5人
精神障害者1人1人(特例)0.5人

押さえるべき点が4つあります。

  • 精神障害者にダブルカウントはありません。そもそも「重度」という区分自体が存在しません。
  • 精神障害者である短時間労働者(週20〜30時間未満)は、当分の間1人としてカウントされます。令和5年3月31日までの時限措置として始まりましたが、令和5年4月1日以降は雇入れからの期間等に関係なく適用される形に延長されています。
  • 特定短時間労働者(週10〜20時間未満)から、就労継続支援A型事業所の利用者は除かれます
  • 特定短時間労働者は、実雇用率の分子にのみ算入され、分母(常用労働者数)には含まれません

紛争解決の三層と、それぞれの対象範囲

条文ごとに対象となる事項が異なります。ここが実務でも試験でも問われる箇所です。

法第74条の4
苦情の自主的解決
法第74条の6
労働局長の助言等
法第74条の7
調停
法第34条(募集採用の差別)××
法第35条(待遇の差別)
法第36条の2(募集採用時の合理的配慮)××
法第36条の3(採用後の合理的配慮)

法第74条の4の対象が2つに限られているのは、苦情処理機関が「当該事業所の労働者を代表する者を構成員とする当該事業所の労働者の苦情を処理するための機関」であり、まだ労働者でない応募者を扱えないからです。

法第74条の7は「第74条の5に規定する紛争(労働者の募集及び採用についての紛争を除く。)」と明記しています。つまり募集・採用の紛争は、社内の苦情処理も調停も使えず、都道府県労働局長の助言・指導・勧告だけが用意されているということです。採用選考における合理的配慮の対応が、他の場面より慎重さを要する理由がここにあります。

公務員への適用除外(法第85条の3)

公務部門への適用関係は、この1条に集約されています。

第八十五条の三 第三十四条から第三十六条まで、第三十六条の六及び前章の規定は、国家公務員及び地方公務員に、第三十六条の二から第三十六条の五までの規定は、一般職の国家公務員(行政執行法人の労働関係に関する法律第二条第二号の職員を除く。)、裁判所職員臨時措置法の適用を受ける裁判所職員、国会職員法の適用を受ける国会職員及び自衛隊法第二条第五項に規定する隊員に関しては、適用しない。

前段と後段で、除外される規定と除外される者が異なります。

適用除外される規定適用除外される者
前段法第34条〜第36条(差別の禁止と指針)、法第36条の6(助言・指導・勧告)、前章(紛争の解決)国家公務員及び地方公務員
後段法第36条の2〜第36条の5(合理的配慮とその指針)一般職の国家公務員(行政執行法人の職員を除く)、裁判所職員、国会職員、自衛隊員

後段の列挙に地方公務員が入っていません。したがって地方公務員には合理的配慮の規定が適用されます。法第36条の5(指針の根拠)も適用されますから、合理的配慮指針(平成27年厚生労働省告示第117号)がそのまま地方自治体に及びます。

一方、前段により紛争の解決の章は国家公務員・地方公務員ともに一律で適用除外です。地方公務員について整理すると次のようになります。

地方公務員への適用
合理的配慮の提供義務(法第36条の2・第36条の3)適用される
意向の尊重・相談体制の整備(法第36条の4)適用される
合理的配慮指針(告示第117号)及ぶ
差別の禁止(法第34条・第35条)適用されない(地方公務員法第13条で対応)
苦情の自主的解決・労働局長の助言・調停適用されない
厚生労働大臣の助言・指導・勧告(法第36条の6)適用されない

義務は促進法、紛争解決は公務員法制(人事委員会・公平委員会等)という組み合わせです。自治体の相談体制を設計する際は、労働局へ持ち込むという出口が存在しないことが前提になります。

なお後段のカッコ書き「行政執行法人の…職員を除く」は二重否定です。行政執行法人の職員には法第36条の2から第36条の5までが適用されます。国家公務員だから一律に及ばない、という理解は正確ではありません。

条文番号の混同ポイント

特例子会社まわりの4条文

条文制度特例子会社の要否
法第44条特例子会社(制度そのもの)
法第45条関係会社特例必要
法第45条の2企業グループ算定特例(=関係子会社特例)不要
法第45条の3事業協同組合等算定特例不要(中小企業向け)

「特例子会社がなくても使えるグループ通算」は法第45条の2です。法第45条と取り違えやすい箇所です。なお、企業グループ算定特例と関係子会社特例は同じ制度の別名であり、厚生労働省の資料も「『企業グループ算定特例』(関係子会社特例)」と併記しています。

合理的配慮の2条文

法第36条の2(募集・採用時)法第36条の3(採用後)
条文の文言障害者からの申出により(申出に関する文言なし)
義務の起点障害者側からの申出事業主側の確認

法第36条の2には条文上「障害者からの申出により」という文言があり、法第36条の3にはありません。この非対称が、採用後は申出を待たずに義務がかかることの根拠です。

なお、指針は採用後について事業主側の確認手続(雇入れ時までに把握している場合は雇入れ時までに、把握できなかった場合は把握した際に遅滞なく、中途障害の場合は障害者となったことを把握した際に遅滞なく、そして必要に応じて定期的に)を定めています。ただし、事業主が必要な注意を払っても労働者が障害者であることを知り得なかった場合には、提供義務違反を問われません(指針第2の2)。

法第36条の4の「前二条」と「前条」

対象条文内容
第1項前二条(法第36条の2・第36条の3)障害者の意向を十分に尊重
第2項前条(法第36条の3のみ)相談体制の整備その他雇用管理上必要な措置

相談体制の整備義務は、採用後の合理的配慮について定められています。

2つの「助言・指導・勧告」

法第36条の6法第74条の6
主体厚生労働大臣(実務上はハローワーク)都道府県労働局長
相手事業主紛争の当事者
契機規定の施行に関し必要があると認めるとき当事者から援助を求められたとき

2人の担当者

障害者雇用推進者(法第78条第2項)障害者職業生活相談員(法第79条第2項)
義務の性質努力義務義務
選任単位企業単位事業所単位
基準障害者雇用状況報告の義務がある規模障害者である労働者が5人以上(実人数)

支援機関の設置・指定主体

機関設置・指定根拠条文
障害者職業センター(総合・広域・地域)厚生労働大臣(業務をJEEDに行わせる)法第19条
障害者就業・生活支援センター都道府県知事が指定法第27条
適応訓練都道府県が実施法第13条

そのほか

  • ジョブコーチの養成・研修は、障害者職業総合センター(法第20条第3号)と地域障害者職業センター(法第22条第4号)の両方にあります。
  • 知的障害者等」の定義(法第20条第3号のカッコ書き)は、身体障害者を含みます。名称に反する点に注意が必要です。改正前は身体障害者が含まれていなかったため、古い教材では対象外として説明されています。

罰則の有無

罰則
法定雇用率の未達成なし(納付金と行政指導で対応)
障害者雇用状況報告(ロクイチ報告)をしない・虚偽の報告をした法第86条第1号により30万円以下の罰金

雇用率を達成しないことに罰則はなく、報告しないことには罰則がある、という構造です。

行政指導のプロセスは、ロクイチ報告(法第43条第7項)→雇入れ計画作成命令(法第46条第1項、原則2年計画)→変更勧告(同条第5項)または適正実施勧告(同条第6項)→特別指導→企業名公表(法第47条)→再公表という段階を踏みます。令和5年度の実績では、雇入れ計画作成命令219社、適正実施勧告63社、特別指導33社、企業名公表1社でした。

37.5人企業向け実務チェックリスト

数える

  • 短時間労働者0.5カウントを含めて常用労働者数を数え直したか(除外率設定業種は控除後の数で)
  • 法定雇用障害者数を2.7%で再計算したか(1人未満は切捨て)
  • 事業所ごとの障害者の実人数を把握したか(5人以上なら相談員の選任義務)
  • 100人を超える月が年度内に何か月あるか把握したか(5か月以上なら納付金の申告義務)

整える

  • 合理的配慮の相談窓口を定め、労働者に周知したか(法第36条の4第2項)
  • 就業規則に、合理的配慮に関し相談をしたことを理由とする不利益取扱いの禁止を規定したか(指針第6の4が例示)
  • 相談者のプライバシー保護の措置を講じ、そのことを労働者に周知したか(指針第6の3)
  • 採用後の支障事情の確認手順を決めたか(雇入れ時・障害の把握時・中途障害時・定期的)
  • 「過重な負担」と判断した場合の理由の記録方法を決めたか(指針第5の6要素)

管理する

  • 精神障害者保健福祉手帳の有効期限(2年)の管理台帳をつくったか
  • 障害者雇用推進者を選任したか(努力義務。障害者雇用状況報告書に記入欄がある)
  • 障害者職業生活相談員を選任し、ハローワークに選任届を提出したか(5人以上の事業所)

つなぐ

  • 地域障害者職業センターの所在を確認したか(雇用管理の助言、配置型ジョブコーチ)
  • 障害者就業・生活支援センターの所在を確認したか(生活面を含む相談、全国337センター)
  • もにす認定(常用労働者300人以下)の申請可能性を検討したか

今後の動向

厚生労働省の研究会等で、次の論点が検討課題として挙げられています。

  • 納付金の対象を常用労働者100人以下の事業主にも拡大すること。現在、37.5人以上に雇用義務はかかる一方、納付金の徴収対象は100人超に限られています。この「義務はあるが金銭的な仕組みが及ばない」ゾーンが縮小する可能性があります。
  • 手帳を所持しない精神障害者・発達障害者については、引き続き雇用率制度の対象外とする方針が示されています。手帳を所持しない理由として「必要性を感じない」が最多であったこと等が判断理由に挙げられました。
  • 精神障害者保健福祉手帳を更新できなかった場合に、今後も雇用される見込みであれば一定期間は従来どおり雇用率に算定できるようにする方向も示されています。

3点目は、手帳の有効期限管理をどう仕組み化するかという実務論点に直結します。手帳のコピーを取って終わりではなく、更新時期を管理する台帳と、更新前後の声かけ手順まで含めて設計しておく必要があります。

まとめ

  1. この法律は二段構造。差別禁止・合理的配慮は「障害者」(手帳不要)、雇用率・納付金は「対象障害者」(手帳必要)。
  2. 基準値は37.5人(雇用義務)・100人超(納付金・調整金)・300人以下(もにす認定)・5人以上(相談員)の4つ。判定方法がそれぞれ違う。
  3. 相談員の「5人」は実人数・事業所単位。実雇用率のカウント特例は使えない。
  4. 紛争解決は三層で、対象範囲が異なる。募集・採用の紛争は調停に乗らない(法第74条の7)。
  5. 地方公務員には合理的配慮の規定が適用されるが、紛争解決の章は適用されない(法第85条の3)。
  6. 雇用率未達成に罰則はないが、ロクイチ報告の未報告・虚偽報告には30万円以下の罰金(法第86条第1号)。

2026年7月に義務の対象となった37.5人〜40人未満の企業には、ロクイチ報告が始まる2027年6月まで約1年の準備期間があります。障害者の採用には相応の期間がかかりますので、この1年をどう使うかが分かれ目になります。配慮の中身は個別性が高くあらかじめ決められませんが、手続は先に決められます。内容を決められないからこそ、手続を決めておくというのが、この法律への対応の要点です。