障害者雇用の相談先として「障害者職業センター」の名前を聞くことがあります。ところがこのセンターには総合・広域・地域の3種類があり、役割がはっきり分かれています。同じ「職業評価」という業務が、あるセンターでは付随的な業務、別のセンターでは中核業務として書かれている。この違いは条文の書きぶりに現れています。今回は職業リハビリテーションの原則から、ハローワークと3つのセンターの役割分担までを整理します。
職業リハビリテーションとは何か(法第2条第7号)
まず定義です。法第2条第7号は「職業リハビリテーション」を次のように定めています。
障害者に対して職業指導、職業訓練、職業紹介その他この法律に定める措置を講じ、その職業生活における自立を図ること
「職業生活における自立を図ること」が目的であり、そのための手段として職業指導・職業訓練・職業紹介が並んでいます。法第1条の3本柱のうち、3つめの柱がこれに当たります。
職業リハビリテーションの原則(法第8条)
第八条 職業リハビリテーションの措置は、障害者各人の障害の種類及び程度並びに希望、適性、職業経験等の条件に応じ、総合的かつ効果的に実施されなければならない。
2 職業リハビリテーションの措置は、必要に応じ、医学的リハビリテーション及び社会的リハビリテーションの措置との適切な連携の下に実施されるものとする。
第1項が重要です。判断の基準となる条件として、「障害の種類及び程度」だけでなく「希望、適性、職業経験等」が並べて挙げられています。障害の重さだけで支援内容を決めるのではなく、本人の希望や職業経験も同列の考慮要素として条文に書き込まれているということです。
1項と2項の書き分け
条文の末尾に注意してください。
| 文末 | |
|---|---|
| 第1項(各人の条件に応じた総合的・効果的な実施) | 実施されなければならない |
| 第2項(医学的・社会的リハビリテーションとの連携) | 実施されるものとする |
第1項が強い義務的な書きぶり、第2項がやや緩やかな書きぶりになっています。医学的リハビリテーション・社会的リハビリテーションは他の法律・他の主体が担う領域であるため、この法律の側から一方的に義務づけることが難しいという事情が反映されているものと読めます。
ハローワークが行う措置(法第9条〜第18条)
第二章第二節「職業紹介等」には、主として公共職業安定所(ハローワーク)が行う措置が置かれています。
| 条文 | 内容 |
|---|---|
| 法第9条 | 求人の開拓等 |
| 法第10条 | 求人の条件等 |
| 法第11条 | 職業指導等 |
| 法第12条 | 障害者職業センターとの連携 |
| 法第13条〜第16条 | 適応訓練 |
| 法第17条 | 就職後の助言及び指導 |
| 法第18条 | 事業主に対する助言及び指導 |
職業指導等(法第11条)
第十一条 公共職業安定所は、障害者がその能力に適合する職業に就くことができるようにするため、適性検査を実施し、雇用情報を提供し、障害者に適応した職業指導を行う等必要な措置を講ずるものとする。
適性検査・雇用情報の提供・職業指導が、ハローワークの基本的な役割として列挙されています。
なお、施行規則第3条は、ハローワークが求職者が法第2条第1号の障害者であるかどうかを確認するために必要があると認めるときは、身体障害者手帳その他の資料の提示または提出を求めることができるとしています。法第2条第1号の「障害者」に手帳は要件ではありませんが、実務上の該当性確認の手続がここに置かれています。
ハローワークからセンターへの流れ(法第12条)
法第12条は、法第11条の適性検査・職業指導等について、「特に専門的な知識及び技術に基づいて行う必要があると認める障害者」については、障害者職業センターとの密接な連携の下に行うか、センターで受けることについてあっせんを行うとしています。
制度設計としては、ハローワークが第一次窓口、専門性を要する場合にセンターへという流れです。企業側から見れば、求人・紹介はハローワーク、雇用管理の専門的な相談は地域障害者職業センターという使い分けになります。
適応訓練の主体は都道府県(法第13条)
見落としやすい規定です。
都道府県は、必要があると認めるときは、求職者である障害者(身体障害者、知的障害者又は精神障害者に限る。)について、その能力に適合する作業の環境に適応することを容易にすることを目的として、適応訓練を行うものとする。
主体は国でもハローワークでも機構でもなく、都道府県です。
もう一点、対象が「身体障害者、知的障害者又は精神障害者に限る」と限定されている点も重要です。法第2条第1号の「障害者」全般ではありません。施行規則第4条の適応訓練の基準も、訓練職種について「障害者(法第2条第2号に規定する身体障害者、知的障害者及び精神障害者に限る。)」としており、法律・省令の両方で限定が確認できます。
障害者職業センターは3種類(法第19条〜第26条)
設置は厚生労働大臣、運営はJEED(法第19条)
第十九条 厚生労働大臣は、障害者の職業生活における自立を促進するため、次に掲げる施設(以下「障害者職業センター」という。)の設置及び運営の業務を行う。
2 厚生労働大臣は、前項に規定する業務の全部又は一部を独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構に行わせる(以下略)
設置および運営の業務を行うのは厚生労働大臣であり、その業務の全部または一部を独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)に行わせるという構造です。実際に現場を運営しているのはJEEDですが、条文上の主体は厚生労働大臣である点に注意が必要です。
障害者職業総合センター(法第20条)
| 号 | 業務 |
|---|---|
| 1号 | 職業リハビリテーションに関する調査及び研究 |
| 2号 | 障害者の雇用に関する情報の収集、分析及び提供 |
| 3号 | 障害者職業カウンセラー及び職場適応援助者(ジョブコーチ)の養成及び研修 |
| 4号 | 広域センター、地域センター、障害者就業・生活支援センター、就労支援事業者その他の関係機関及びこれらの機関の職員に対する、職業リハビリテーションに関する技術的事項についての助言、指導、研修その他の援助 |
| 5号 | 前各号に掲げる業務に付随して、職業評価・職業指導・職業準備訓練・職業講習、職場適応に関する助言指導、事業主への雇用管理の助言等 |
| 6号 | 前各号に掲げる業務に附帯する業務 |
第4号の「就労支援事業者」は、障害者総合支援法第5条第13項に規定する就労選択支援または同条第14項に規定する就労移行支援を行う事業者と定義されています。就労選択支援は令和7年10月1日施行から実施が始まった新しい障害福祉サービスで、これに伴い就労移行支援が同法第5条第13項から第14項へ繰り下がりました。障害者雇用促進法側の条文も、この改正に合わせて修正されています。
広域障害者職業センター(法第21条)
「広範囲の地域にわたり、系統的に職業リハビリテーションの措置を受けることを必要とする障害者」を対象とし、障害者職業能力開発校または独立行政法人労働者健康安全機構法に定める療養施設その他厚生労働省令で定める施設との密接な連携の下に、次の業務を行います。
- 厚生労働省令で定める障害者に対する職業評価、職業指導および職業講習を系統的に行うこと
- その措置を受けた障害者を雇用し、または雇用しようとする事業主に対する雇用管理に関する助言その他の援助
- 前2号に附帯する業務
訓練施設・医療施設と一体で、まとまった期間をかけて支援する類型であることが条文から読み取れます。
地域障害者職業センター(法第22条)
| 号 | 業務 |
|---|---|
| 1号 | 障害者に対する職業評価、職業指導、職業準備訓練及び職業講習 |
| 2号 | 事業主に雇用されている知的障害者等に対する職場への適応に関する事項についての助言又は指導 |
| 3号 | 事業主に対する障害者の雇用管理に関する事項についての助言その他の援助 |
| 4号 | 職場適応援助者(ジョブコーチ)の養成及び研修 |
| 5号 | 障害者就業・生活支援センター、就労支援事業者その他の関係機関及びこれらの機関の職員に対する、職業リハビリテーションに関する技術的事項についての助言、研修その他の援助 |
| 6号 | 前各号に掲げる業務に附帯する業務 |
「都道府県の区域内において」と地域が限定されています。
第5号の「就労支援事業者」は、法第20条第4号のカッコ書きが「第22条第5号において同じ」としているため、同じ定義(就労選択支援または就労移行支援を行う事業者)が及びます。総合センターも地域センターも、就労選択支援・就労移行支援の事業者およびその職員に対して技術的な助言・研修を行う立場にあるということです。福祉側の就労支援サービスと雇用側の職業リハビリテーションは、この条文で接続しています。
「付随して」が示す性格の違い
3つのセンターの違いは、同じ業務がどの位置に置かれているかを比べるとはっきりします。
職業評価・職業指導・職業準備訓練・職業講習という一連の直接支援は、総合センターと地域センターの双方に登場します。ところが位置づけが違います。
| 直接支援の位置づけ | |
|---|---|
| 総合センター(法第20条) | 第5号。「前各号に掲げる業務に付随して」行う業務 |
| 地域センター(法第22条) | 第1号。本体業務 |
総合センターの本体業務は、第1号から第4号の調査研究・情報の収集分析提供・専門人材の養成研修・他機関への技術的援助です。障害者への直接支援は、それらに付随して行うものと条文上位置づけられています。全国の職業リハビリテーションを支える「頭脳」としての機関だということです。
これに対して地域センターは、直接支援そのものが中核業務です。企業が実際に相談する窓口はここになります。
なお、ジョブコーチの養成・研修は総合センター(法第20条第3号)と地域センター(法第22条第4号)の両方に置かれています。片方だけと覚えていると誤ります。
「知的障害者等」は身体障害者を含む
条文を読むうえで注意が必要な定義規定があります。法第20条第3号のカッコ書きです。
職場適応援助者(身体障害者、知的障害者、精神障害者その他厚生労働省令で定める障害者(以下「知的障害者等」という。)が職場に適応することを容易にするための援助を行う者をいう。以下同じ。)
「知的障害者等」という語が、身体障害者を含んでいます。名称からは身体障害者が入らないように読めてしまいますが、定義規定はそうなっていません。
この語は法第20条第5号ロ、法第22条第2号でも使われており、いずれもジョブコーチによる職場適応援助の対象範囲を画する場面です。
注意したいのは、改正前の条文では「知的障害者、精神障害者その他厚生労働省令で定める障害者(以下『知的障害者等』という。)」となっており、身体障害者が含まれていなかったという点です。改正で身体障害者が追加されたにもかかわらず、語そのものは変わっていません。古い教材や解説記事を参照すると、身体障害者が対象外という前提のまま説明されている場合があります。
その他の規定(法第23条〜第26条)
法第23条(名称使用の制限)
障害者職業センターでないものは、その名称中に障害者職業総合センター又は障害者職業センターという文字を用いてはならない。
法第24条(障害者職業カウンセラー)
機構は、障害者職業センターに、障害者職業カウンセラーを置かなければならない。
2 障害者職業カウンセラーは、厚生労働大臣が指定する試験に合格し、かつ、厚生労働大臣が指定する講習を修了した者その他厚生労働省令で定める資格を有する者でなければならない。
「置かなければならない」という義務規定であり、資格要件も試験合格と講習修了の両方が原則として求められます。
法第25条(障害者職業センター相互の連絡及び協力等)
障害者職業センターは、相互に密接に連絡し、及び協力して、障害者の職業生活における自立の促進に努めなければならない。
同条にはさらに、障害者職業センターがハローワークの職業紹介等の措置、障害者就業・生活支援センターの業務、公共職業能力開発施設等の職業訓練と相まって、効果的に職業リハビリテーションが推進されるよう努める旨の規定が置かれています。
法第26条 は職業リハビリテーションの措置の無料実施について定めています。
なお法第20条第1号のカッコ書きは「職業リハビリテーション(職業訓練を除く。第5号イ及び第25条第3項を除き、以下この節において同じ。)」となっています。障害者職業センターの節における「職業リハビリテーション」からは原則として職業訓練が除かれており、職業訓練は職業能力開発促進法に基づく公共職業能力開発施設等の役割として切り分けられているということです。
まとめ
- 職業リハビリテーションとは、職業指導・職業訓練・職業紹介その他の措置により職業生活における自立を図ること(法第2条第7号)。
- 法第8条第1項は、障害の種類・程度だけでなく希望、適性、職業経験等の条件に応じた実施を求める。1項は「実施されなければならない」、2項は「実施されるものとする」で書き分けられている。
- 適応訓練の主体は都道府県(法第13条)。対象は身体障害者・知的障害者・精神障害者に限られ、法第2条第1号の障害者全般ではない。
- 障害者職業センターの設置・運営の業務を行うのは厚生労働大臣で、その業務をJEEDに行わせる(法第19条)。
- 総合センターは調査研究・情報・人材養成・技術的援助が本体で、直接支援は「付随して」行う業務(法第20条第5号)。地域センターは直接支援が本体業務(法第22条第1号)。この位置づけの差が性格の違いを表す。
- ジョブコーチの養成・研修は総合センターと地域センターの両方にある(法第20条第3号・法第22条第4号)。
- 「知的障害者等」の定義(法第20条第3号)は身体障害者を含む。名称と内容がずれているため注意。
- 総合センター(法第20条第4号)・地域センター(法第22条第5号)はいずれも、就労選択支援・就労移行支援を行う事業者およびその職員に対する技術的な助言・研修を担う。福祉側の就労支援と雇用側の職業リハビリテーションは、この条文で接続している。
企業として実務上つながるのは地域障害者職業センターです。雇用管理の相談、職場適応の助言、ジョブコーチ支援の入口はいずれもここにあります。一方で、求人・紹介はハローワークが第一次窓口です。この2つの役割分担を押さえておくと、相談内容に応じてどちらに行くべきかの判断がつきます。
