障害者雇用促進法|障害者就業・生活支援センターとジョブコーチ、そして就労選択支援

障害者雇用促進法|障害者就業・生活支援センターとジョブコーチ、そして就労選択支援 労働社会保険諸法令の基礎知識
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障害者雇用の相談先として、ハローワーク、地域障害者職業センター、障害者就業・生活支援センターの3つがあります。名前は似ていても、指定する主体も業務範囲も違います。職業紹介を行うのは1つだけ、生活面の支援まで担うのも1つだけです。今回は障害者就業・生活支援センターとジョブコーチ制度を整理し、あわせて令和7年10月に始まった就労選択支援との接続を確認します。

林 利恵

Rie HAYASHI, MPH, PhD
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博士(医学)
特定社会保険労務士
東豊社労士事務所 代表
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医学研究者から社労士へ転身
労働衛生の専門知識を活かし
・就業規則作成
・メンタルヘルス対策
・両立支援
を得意としています
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障害者就業・生活支援センターとは

通称「ナカポツ」または「就ポツ」と呼ばれる機関です。平成14年の障害者雇用促進法改正により創設され、障害者の身近な地域において、就業面と生活面の一体的な相談・支援を行います。令和6年4月現在で全国337センターが設置されています。

根拠条文は法第27条から第33条までです。

条文内容
法第27条指定
法第28条業務
法第29条地域障害者職業センターとの関係
法第30条事業計画等
法第31条監督命令
法第32条指定の取消し等
法第33条秘密保持義務

指定するのは都道府県知事(法第27条)

都道府県知事は、職業生活における自立を図るために就業及びこれに伴う日常生活又は社会生活上の支援を必要とする障害者(以下この節において「支援対象障害者」という。)の職業の安定を図ることを目的とする一般社団法人若しくは一般財団法人、社会福祉法第二十二条に規定する社会福祉法人又は特定非営利活動促進法第二条第二項に規定する特定非営利活動法人その他厚生労働省令で定める法人であつて、次条に規定する業務に関し次に掲げる基準に適合すると認められるものを、その申請により、同条に規定する業務を行う者として指定することができる。

押さえるべき点が3つあります。

  • 指定するのは都道府県知事。障害者職業センター(法第19条)が厚生労働大臣であるのと対比されます。
  • その申請により指定します。行政が一方的に指定するのではなく、法人側の申請が前提です。
  • 「指定することができる」という裁量規定です。

「支援対象障害者」の定義に生活面が入っている

この条文でもっとも重要なのは、「支援対象障害者」の定義です。

職業生活における自立を図るために就業及びこれに伴う日常生活又は社会生活上の支援を必要とする障害者

「就業」だけでなく「これに伴う日常生活又は社会生活上の支援」が明記されています。ハローワークや障害者職業センターの条文には、こうした生活面への言及がありません。生活習慣の形成、健康管理、金銭管理、住居、年金、余暇活動といった助言がこのセンターの業務に含まれるのは、この定義があるからです。

予算の構造もこれを反映しています。就業支援は委託費、生活支援は国と都道府県が2分の1ずつ負担する補助金として、雇用側(職業安定局)と福祉側(障害保健福祉部)の連携事業として実施されています。就業支援担当者2〜7名、生活支援担当者1名が配置されるのが標準的な体制です。

業務は3号構成(法第28条)

第二十八条 障害者就業・生活支援センターは、次に掲げる業務を行うものとする。
一 支援対象障害者からの相談に応じ、必要な指導及び助言を行うとともに、公共職業安定所、地域障害者職業センター、社会福祉施設、医療施設、特別支援学校その他の関係機関との連絡調整その他厚生労働省令で定める援助を総合的に行うこと。
二 支援対象障害者が障害者職業総合センター、地域障害者職業センターその他厚生労働省令で定める事業主により行われる職業準備訓練を受けることについてあつせんすること。
三 前二号に掲げるもののほか、支援対象障害者がその職業生活における自立を図るために必要な業務を行うこと。

第1号に列挙されている関係機関を見てください。公共職業安定所(雇用)、地域障害者職業センター(職業リハビリテーション)、社会福祉施設(福祉)、医療施設(医療)、特別支援学校(教育)。雇用・福祉・医療・教育の連絡調整のハブとして条文上位置づけられているということです。

職業紹介は行わない

実務上、企業や本人が誤解しやすい点です。このセンターは職業のあっせん(紹介)を行いません。労働局の案内にも明記されています。求人・紹介はハローワークの役割であり、センターが行うのは相談支援・準備支援・定着支援と関係機関との連絡調整です。相談・支援料は無料です。

職業準備訓練のあっせんは職業評価が前提(法第29条)

見落としやすい規定です。

障害者就業・生活支援センターは、地域障害者職業センターの行う支援対象障害者に対する職業評価に基づき、前条第二号に掲げる業務を行うものとする。

法第28条第2号の職業準備訓練のあっせんは、地域障害者職業センターの職業評価に基づいて行うこととされています。センターが独自の判断であっせんするのではなく、地域センターの専門的評価を前提とする建て方です。機関間の連携が、条文レベルで義務づけられているということになります。

法第22条第5号(地域センターが障害者就業・生活支援センターに技術的助言・研修を行う)と、この法第29条は、双方向の関係を形成しています。

指定の取消しと秘密保持義務(法第32条・第33条)

法第32条(指定の取消し等)

都道府県知事は、次のいずれかに該当するときは指定を取り消すことができます。

  1. 法第28条に規定する業務を適正かつ確実に実施することができないと認められるとき
  2. 指定に関し不正の行為があったとき
  3. この節の規定または当該規定に基づく命令もしくは処分に違反したとき

取り消したときは、その旨を公示しなければならないとされています。取消しは「できる」規定ですが、公示は義務です。

法第33条(秘密保持義務)

障害者就業・生活支援センターの役員若しくは職員又はこれらの職にあつた者は、第二十八条第一号に掲げる業務に関して知り得た秘密を漏らしてはならない。

対象が法第28条第1号の業務に限られている点に注意が必要です。第2号(職業準備訓練のあっせん)や第3号(その他の業務)は条文上含まれていません。第1号が相談・指導助言という、もっとも機微な情報を扱う業務であることに対応した書き方です。また、「これらの職にあつた者」も対象ですから、退職後も義務が続きます。

職場適応援助者(ジョブコーチ)の3類型

法第20条第3号のカッコ書きは、職場適応援助者を「知的障害者等が職場に適応することを容易にするための援助を行う者」と定義しています。実務上は「ジョブコーチ」と呼ばれ、所属先によって3つの類型に分かれます。

類型所属依頼先費用
配置型地域障害者職業センター地域障害者職業センター無料
訪問型障害者の就労支援を行う法人(社会福祉法人、就労移行支援事業所等)所属法人訪問型職場適応援助者助成金
企業在籍型障害者を雇用する企業自社で養成・雇用企業在籍型職場適応援助者助成金

配置型を「企業内に常駐」と説明する解説は誤り

ここは誤情報が流通している箇所です。配置型ジョブコーチは、地域障害者職業センターに所属します。JEEDの公式説明は「地域障害者職業センターに所属するジョブコーチ(配置型ジョブコーチ)が支援を行います」としています。

企業に雇用されるのは企業在籍型です。「配置型=企業に配置されている」と読んでしまう解説を見かけますが、配置型と企業在籍型を取り違えたものです。

訪問型の資格要件

訪問型ジョブコーチになるには、JEEDまたは厚生労働大臣が定める「訪問型職場適応援助者養成研修」を修了し、かつ障害者の就労支援に関する業務に1年以上就業した経験が必要です。研修だけでは足りず、実務経験が求められます。

支援は「終わること」を目指す制度

ジョブコーチ支援の考え方は、条文からは読み取れませんが、制度設計として明確です。JEEDの説明は次のとおりです。

  • 支援期間は個別に設定するが、標準的には2〜4か月を想定
  • 障害者と事業主に直接支援を行いながら、上司や同僚に適切な支援方法を伝える
  • 支援の主体をジョブコーチから事業所の担当者へ徐々に移行する
  • 職場適応上の課題が改善され、職場内での上司・同僚からの支援が適切に行われるようになった段階で支援を終了する
  • 支援終了後も必要なフォローアップを行う

つまり、ジョブコーチに支援を任せきりにするのではなく、社内に支援のノウハウを移すことが目的の制度です。この考え方は、合理的配慮の相談体制(法第36条の4第2項、合理的配慮指針第6)と接続します。ジョブコーチ支援の期間中に社内の受け入れ体制と相談窓口を整えることが、支援終了後の定着を左右します。

就労選択支援との接続(令和7年10月1日実施)

障害者総合支援法第5条第13項に規定する「就労選択支援」は、令和7年10月1日から実施が始まった新しい障害福祉サービスです。

内容

厚生労働省の説明によれば、就労選択支援では、本人が就労能力や適性を客観的に評価するとともに、本人の強みや課題を明らかにし、就労に当たって必要な支援や配慮を整理します。具体的には就労アセスメントの方法を活用し、本人と協同の上で、本人への情報提供、作業場面等を活用した状況把握、多機関連携によるケース会議、アセスメント結果の整理を行うものとされています。

就労継続支援B型の入口が変わった

従来、就労継続支援B型の利用にあたっては、就労移行支援事業所等による「就労アセスメント」が求められていました。令和7年10月以降、これが就労選択支援という独立したサービスとして切り出されています。

  • 新たに就労継続支援B型を利用する意向がある場合は、原則として就労選択支援をあらかじめ利用することになります
  • ただし、50歳に達している者、障害基礎年金1級受給者、就労経験があり年齢や体力の面で一般企業に雇用されることが困難になった者等は、アセスメントを行うことなくB型の利用が可能です
  • 近隣に就労選択支援事業所がなく、最も近い事業所であっても通所が困難である場合等も例外とされています
  • 令和9年4月以降は、新たに就労継続支援A型を利用する場合や、標準利用期間を超えて就労移行支援を利用する場合についても、就労選択支援事業所によるアセスメントが行われている人が対象となります

障害者雇用促進法側の接続点

障害者雇用促進法は、この新サービスを次の形で取り込んでいます。

  • 法第20条第4号(障害者職業総合センターの業務)— 就労支援事業者(就労選択支援または就労移行支援を行う事業者)およびその職員に対する、職業リハビリテーションに関する技術的事項についての助言、指導、研修その他の援助
  • 法第22条第5号(地域障害者職業センターの業務)— 障害者就業・生活支援センター、就労支援事業者その他の関係機関およびこれらの機関の職員に対する、職業リハビリテーションに関する技術的事項についての助言、研修その他の援助

福祉側のアセスメントが、雇用側の職業リハビリテーションの技術的支援を受けながら行われるという構造です。福祉と雇用が別々に動くのではなく、条文レベルで技術移転の経路が用意されています。

なお、障害者就業・生活支援センター事業の受託法人も就労選択支援の実施主体になり得るとされています。すでにナカポツを受託している法人にとっては、事業の選択肢として検討の余地があります。

3つの機関をどう使い分けるか

機関根拠指定・設置主な機能職業紹介生活面の支援
ハローワーク法第9条〜第18条求人開拓、適性検査、職業指導、職業紹介行う行わない
地域障害者職業センター法第22条厚生労働大臣(JEEDが運営)職業評価、職業指導、配置型ジョブコーチ、事業主への雇用管理助言行わない行わない
障害者就業・生活支援センター法第27条〜第33条都道府県知事が指定就業面と生活面の一体的な相談支援、関係機関との連絡調整行わない行う

企業側から見た使い分けは次のようになります。

  • 採用したい → ハローワーク
  • 雇用管理の専門的な助言、ジョブコーチ支援を受けたい → 地域障害者職業センター
  • 本人の生活面も含めて安定させたい、関係機関の調整が必要 → 障害者就業・生活支援センター

まとめ

  1. 障害者就業・生活支援センター(法第27条〜第33条)を指定するのは都道府県知事。障害者職業センター(厚生労働大臣)と対比される。「その申請により」「指定することができる」という裁量規定。
  2. 「支援対象障害者」の定義に就業に伴う日常生活・社会生活上の支援が含まれており、これが生活面の支援を業務とする根拠になっている。
  3. 法第28条第1号の関係機関は、ハローワーク・地域センター・社会福祉施設・医療施設・特別支援学校。雇用・福祉・医療・教育のハブである。
  4. 職業のあっせん(紹介)は行わない。求人・紹介はハローワークの役割。
  5. 職業準備訓練のあっせん(法第28条第2号)は、地域障害者職業センターの職業評価に基づき行う(法第29条)。
  6. 秘密保持義務(法第33条)の対象は法第28条第1号の業務に限られ、退職後も継続する。
  7. ジョブコーチは配置型(地域センター所属)・訪問型(支援法人所属)・企業在籍型(企業雇用)の3類型。配置型を「企業内に常駐」とする説明は誤り。
  8. ジョブコーチ支援は標準2〜4か月で、支援の主体を社内へ移行することを目的とする。
  9. 就労選択支援は令和7年10月1日実施。新たにB型を利用する意向がある場合は原則として事前利用が必要となり、令和9年4月からはA型等にも拡大する。
  10. 障害者雇用促進法は法第20条第4号・法第22条第5号で、就労選択支援・就労移行支援を行う事業者への技術的援助を規定している。

障害者雇用を進める企業がまず接点を持つのは、ハローワークと地域障害者職業センターです。しかし雇用後に本人の生活面が不安定になり、通院・服薬・金銭管理・住居といった課題が定着を左右する場面が出てきます。そのときに社内だけで抱え込まず、障害者就業・生活支援センターに接続できるかどうかが、離職を防ぐ分かれ目になります。雇用前に地域のセンターを把握しておくことをお勧めします。