労働契約法の出向・懲戒・解雇|権利濫用禁止の具体的適用を解説

労働契約法の出向・懲戒・解雇|権利濫用禁止の具体的適用を解説 労働社会保険諸法令の基礎知識

労働契約法には、出向、懲戒、解雇について権利濫用を禁止する規定があります。

この記事では、これら3つの制度と権利濫用の判断基準について解説します。

林 利恵

Rie HAYASHI, MPH, PhD
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博士(医学)
特定社会保険労務士
東豊社労士事務所 代表
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医学研究者から社労士へ転身
労働衛生の専門知識を活かし
・就業規則作成
・メンタルヘルス対策
・両立支援
を得意としています
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出向(第14条)

使用者が労働者に出向を命ずることができる場合において、当該出向の命令が、その必要性、対象労働者の選定に係る事情その他の事情に照らして、その権利を濫用したものと認められる場合には、当該命令は無効となります。

出向命令が「権利濫用」に当たれば無効です。

出向には労働者の同意が必要です(就業規則の包括的規定+周知でも可)。

出向と転籍の違い

項目出向転籍
元の会社との関係籍を残す籍を移す
同意包括的同意も可個別同意が必要
労働契約法の規定第14条あり規定なし

懲戒(第15条)

使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は無効となります。

「客観的合理性」+「社会的相当性」がなければ無効です。

懲戒の種類・事由は就業規則に明記が必要です。

懲戒の種類(一般的な例)

種類内容重さ
戒告・譴責注意、始末書提出
減給賃金の一部を差し引く
出勤停止一定期間の出勤禁止
降格役職・等級を下げる
諭旨解雇退職を勧告し応じなければ懲戒解雇
懲戒解雇即時解雇(退職金不支給等)

懲戒が有効となる要件

前提要件:

  • 就業規則に懲戒の種類・事由が定められている
  • その就業規則が周知されている

実体要件:

  • 客観的に合理的な理由がある
  • 社会通念上相当である(重すぎないか)

手続要件(判例):

  • 適正な手続きを経ている(弁明の機会等)

解雇(第16条)

解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効となります。

解雇権濫用法理を明文化したものです。

解雇予告(労基法20条)を行っても、権利濫用なら解雇自体が無効となります。

解雇権濫用法理の歴史

判例の積み重ね:

  • 日本食塩製造事件(最高裁昭和50年)
  • 高知放送事件(最高裁昭和52年)

労働基準法に明文化:

  • 平成15年改正で労基法18条の2に規定

労働契約法に移行:

  • 平成20年に労働契約法16条として規定

3条文に共通するポイント

いずれも「権利濫用」に当たれば「無効」となります。

第3条第5項の「権利濫用の禁止」が具体化された規定です。

むすび

労働契約法では、出向、懲戒、解雇について権利濫用を禁止する規定があります。

出向は必要性や選定事情、懲戒は客観的合理性と社会的相当性、解雇も同様の基準で権利濫用かどうかが判断されます。

出向と転籍は同意の要件が異なり、懲戒は就業規則への明記と周知が前提要件となります。

解雇権濫用法理は判例の積み重ねから労働契約法に明文化されました。

これら3つの規定は、いずれも第3条第5項の権利濫用禁止の具体化であり、労働者保護の重要な柱となっています。