労働契約法の有期労働契約①(契約期間中の解雇・雇止め法理)|やむを得ない事由と雇止め法理を解説

労働契約法の有期労働契約①(契約期間中の解雇・雇止め法理)|やむを得ない事由と雇止め法理を解説 労働社会保険諸法令の基礎知識

前回の出向・懲戒・解雇に続き、この記事では有期労働契約の特別なルールについて解説します。有期労働契約には、期間中の解雇制限と雇止めに関する重要な規定があります。

林 利恵

Rie HAYASHI, MPH, PhD
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博士(医学)
特定社会保険労務士
東豊社労士事務所 代表
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医学研究者から社労士へ転身
労働衛生の専門知識を活かし
・就業規則作成
・メンタルヘルス対策
・両立支援
を得意としています
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契約期間中の解雇等(第17条)

有期労働契約には、次の2つの規定があります。

①期間中の解雇制限 使用者は、期間の定めのある労働契約について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができません。

有期契約の期間中の解雇は「やむを得ない事由」が必要です。無期契約より厳格です。

②細切れ契約の反復更新の配慮義務 使用者は、有期労働契約について、その有期労働契約により労働者を使用する目的に照らして、必要以上に短い期間を定めることにより、その有期労働契約を反復して更新することのないよう配慮しなければなりません。

細切れ契約の反復更新を避ける配慮義務です。

雇止め法理(第19条)

有期労働契約が次のいずれかに該当し、労働者が契約更新の申込みをした場合、使用者が雇止めをすることが客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められないときは、従前と同一の労働条件で契約が更新されます。

①過去に反復更新され、雇止めが無期契約の解雇と社会通念上同視できる場合

②契約期間満了時に更新されるものと期待することに合理的な理由がある場合

判例法理(東芝柳町工場事件・日立メディコ事件)を明文化したものです。

申込みは契約期間満了日までに行う必要があります(黙示でも可)。

なぜ「黙示でも可」とされているのか

【労働者保護の観点】
・有期契約労働者は立場が弱く、明確に「更新してください」と 言いにくい場合がある
・形式的な申込みがないことを理由に保護を否定すると、 雇止め法理が骨抜きになる
 
【判例・通達の趣旨】
・実質的に更新への期待があれば保護すべき
・形式より実態を重視する

実務上の注意点(使用者側)

ポイント
労働者が「更新してください」と言わなかったから雇止め法理が適用されない、とは限らない
労働者が通常通り出勤していれば、黙示の申込みがあったと判断される可能性が高い
雇止めをする場合は、労働者の意向を明確に確認し、記録に残すことが重要

実務上の注意点(労働者側)

ポイント
「更新してください」と明言しなくても、働き続ける意思を示していれば申込みとなりうる
ただし、トラブル防止のためには書面で更新希望を伝える方が安全
雇止めに納得できない場合は、早めに異議を表明しておくことが大切

雇止めの予告(労基法に基づく基準)

3回以上更新、1年を超えて継続雇用、または1年を超える期間で契約している有期契約労働者を雇止めする場合、契約期間満了日の30日前までに予告が必要です。

雇止めが有効となるためのチェックリスト

雇止めを行う場合、次の点を確認する必要があります。

  • 雇止めの客観的合理的理由があるか?
  • 雇止めが社会通念上相当か?
  • 30日前までに予告をしたか?(該当する場合)
  • 更新上限を事前に明示していたか?
  • 契約更新時に適切な説明をしていたか?

更新の上限を定める場合

使用者は、有期労働契約締結後、下記の場合は、更新上限(有期労働契約の通算契約期間または更新回数の上限)を新たに設ける、または短縮する理由を、当該労働者にあらかじめ(更新新上限の新設・短縮をする前のタイミングで)説明しなければなりません。
①更新上限を新たに設ける場合
②更新上限を短縮する場合

有期労働契約の締結、更新、雇止め等に関する基準について|厚生労働省(2024年4月)

むすび

有期労働契約では、期間中の解雇に「やむを得ない事由」が必要であり、無期契約より厳格です。

雇止め法理により、反復更新された契約や更新への合理的期待がある場合、客観的合理的理由と社会的相当性がなければ雇止めは無効となります。

3回以上更新または1年超継続雇用の場合は30日前予告が必要です。

細切れ契約の反復更新を避ける配慮義務もあります。適切な有期労働契約の管理が、トラブル防止のために重要です。

有期労働契約の締結、更新、雇止め等に関する基準について|厚生労働省(2024年4月)