国保に「入る手続き」をした覚えがない、という人は多いはずです。それもそのはずで、国保は要件を満たせば当然に被保険者になる仕組みだからです。届出は資格を生む手続きではありません。誰が入り、誰が入らないのか。法第5条と第6条をセットで整理します。
原則:住所があれば被保険者になる(法第5条)
法第5条はこう定めています。
都道府県の区域内に住所を有する者は、当該都道府県が当該都道府県内の市町村とともに行う国民健康保険の被保険者とする。
条文にあるのは「住所を有する者」だけです。年齢の要件も、職業の要件も、所得の要件もありません。生まれたばかりの赤ちゃんも、収入のない人も、要件を満たせば被保険者です。
そして重要なのが、申請や届出によって加入するのではないという点です。要件を満たせば当然に被保険者になります。強制加入と呼ばれる性格です。届出は資格の発生要件ではなく、保険者が資格を把握するための手続きにすぎません。
「住所」に定義規定はない
法律に住所の定義はありません。民法第22条の「各人の生活の本拠をその者の住所とする」という一般原則によります。
実務では、住民基本台帳に記録されているかどうかが判断の出発点になります。法第9条第6項が、住民基本台帳法上の届出があったときは国保の届出があったものとみなすと定めているのも、その表れです。
ただし住民登録と住所が完全に一致するわけではありません。登録がなくても生活の本拠が実際にあれば被保険者になり得ますし、その逆もあります。
例外:適用除外の11項目(法第6条)
法第5条にかかわらず、次のいずれかに該当する者は、都道府県等が行う国保の被保険者としません。
| 号 | 除外される人 |
|---|---|
| ① | 健康保険法の規定による被保険者(日雇特例被保険者を除く) |
| ② | 船員保険法の規定による被保険者 |
| ③ | 国家公務員共済組合法・地方公務員等共済組合法に基づく共済組合の組合員 |
| ④ | 私立学校教職員共済制度の加入者 |
| ⑤ | 健康保険法の規定による被扶養者(日雇特例被保険者の被扶養者を除く) |
| ⑥ | 船員保険法・国家公務員共済組合法・地方公務員等共済組合法の規定による被扶養者 |
| ⑦ | 日雇特例被保険者手帳の交付を受け、その手帳に健康保険印紙をはり付けるべき余白がなくなるに至るまでの間にある者及びその被扶養者 |
| ⑧ | 後期高齢者医療の被保険者 |
| ⑨ | 生活保護法による保護を受けている世帯(保護を停止されている世帯を除く)に属する者 |
| ⑩ | 国民健康保険組合の被保険者 |
| ⑪ | その他特別の理由がある者で厚生労働省令で定めるもの |
4つのグループに分けて覚える
11項目を丸暗記する必要はありません。理由で束ねると4つになります。
| グループ | 号 | 理由 |
|---|---|---|
| 被用者保険でカバーされている | ①〜⑦ | 二重加入を防ぐ |
| 別制度に移った | ⑧ | 75歳以上は後期高齢者医療へ |
| 医療扶助でカバーされている | ⑨ | 生活保護 |
| 同じ国保の中の整理 | ⑩ | 組合との二重加入を防ぐ |
| 政策的な除外 | ⑪ | 外国人の一部など |
引っかかりやすい3つのポイント
①生活保護は「世帯」単位、しかも停止中は除く
第9号をよく読むと、除外されるのは「保護を受けている世帯に属する者」です。個人単位ではありません。世帯として保護を受けていれば、その世帯の全員が国保から外れます。
さらに括弧書きで「その保護を停止されている世帯を除く」とあります。
| 状態 | 国保の被保険者か |
|---|---|
| 保護を受けている | ならない |
| 保護が停止されている | なる |
| 保護が廃止された | なる |
停止と廃止はどちらも国保に入りますが、条文が明示しているのは停止のほうです。廃止されれば、そもそも「保護を受けている世帯」に当たらなくなります。
②日雇特例被保険者は国保に入れる
第1号と第5号には、どちらもただし書があります。健康保険法の被保険者・被扶養者から、日雇特例被保険者とその被扶養者を除く、という内容です。
つまり日雇特例被保険者そのものは、第1号による除外を受けません。国保の被保険者になり得ます。
では第7号は何を除外しているのか。日雇特例被保険者手帳の交付を受けて、その手帳に健康保険印紙をはる余白がなくなるまでの間にある者です。手帳を持って現に日雇健保の保護下にある期間だけ、国保から外す構造になっています。
「日雇特例被保険者は国保に入れない」というのは誤りです。試験では反対に書いた選択肢が出やすいところです。
③外国人は住民基本台帳が基準
第11号の「厚生労働省令で定める者」は、国民健康保険法施行規則第1条に定められています。第1号と第2号は次のとおりです。
| 内容 | |
|---|---|
| 第1号 | 日本の国籍を有しない者であって、住民基本台帳法第30条の45に規定する外国人住民以外のもの(入管法に定める在留資格を有する者で既に被保険者の資格を取得しているもの及び厚生労働大臣が別に定める者を除く) |
| 第2号 | 日本の国籍を有しない者であって、入管法別表第一の五の表の下欄に掲げる活動として法務大臣が定める活動のうち、病院・診療所に入院して疾病・傷害について医療を受ける活動、または当該入院の前後に継続して医療を受ける活動を行うもの |
裏を返せば、住民基本台帳に外国人住民として記録される人(3か月を超える在留期間が決定された人など)は、日本人と同じように国保の対象になります。「外国人は国保に入れない」わけではありません。
第2号が除外しているのは、いわゆる医療滞在ビザで来日した人です。治療目的で入国して国保に加入し、高額な医療を受けるという使われ方を防ぐための規定です。
なぜこの構造が国民皆保険を支えるのか
適用除外に当たらなければ、全員が国保の被保険者になります。
会社を辞めても、自営業でも、無職でも、日本に住所があれば必ずどこかの医療保険に属することになる。国保が「最後の受け皿」と呼ばれるのは、法第6条が除外したもの以外をすべて拾う設計になっているからです。
裏返せば、国保には加入者を選ぶ自由がありません。他の制度から抜けた人が流れ込む構造です。国保の財政が構造的に厳しいと言われるのは、この受け皿としての性格に由来します。
健康保険との決定的な違い
国保には被扶養者という概念がありません。世帯単位で扱いますが、家族一人ひとりが被保険者です。
| 健康保険 | 国民健康保険 | |
|---|---|---|
| 家族の扱い | 被扶養者(保険料の負担なし) | 全員が被保険者 |
| 保険料の算定 | 被保険者の標準報酬月額 | 世帯の所得と人数など |
| 保険料を納める人 | 被保険者(事業主と折半) | 世帯主(法第76条第1項) |
健保なら配偶者や子は被扶養者なので、何人いても保険料は変わりません。国保では人数分の均等割がかかります。
退職して国保に移った人が「思ったより高い」と驚くのは、たいていこの構造の違いによるものです。扶養家族が多い人ほど差が大きく出ます。
まとめ
- 都道府県の区域内に住所があれば、当然に被保険者になる。年齢・職業・所得の要件はない(法第5条)
- 適用除外は11項目。被用者保険・後期高齢者医療・生活保護・国保組合でカバーされる人を外す(法第6条)
- 生活保護は世帯単位。ただし保護を停止されている世帯は国保に入る
- 日雇特例被保険者は国保に入れる。除外されるのは手帳に余白がなくなるまでの間にある者
- 住民基本台帳に記録される外国人住民は国保の対象。医療滞在目的の在留者は除外される
- 国保に被扶養者はいない。家族一人ひとりが被保険者
退職予定の従業員から国保の保険料を尋ねられたら、扶養家族の人数を確認するところから始めてください。健保の任意継続と国保のどちらが有利かは、扶養家族が何人いるかで逆転することがあります。市町村の窓口で試算してもらえば、判断材料が揃います。
