高齢者医療確保法|後期高齢者医療広域連合と市町村の役割分担を解説(第48条・保険料の賦課と徴収)

高齢者医療確保法|後期高齢者医療広域連合と市町村の役割分担 労働社会保険諸法令の基礎知識
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後期高齢者医療の手続で市役所の窓口に行くと、書類の差出人が「後期高齢者医療広域連合」になっていて戸惑う人がいます。実は、この制度は広域連合と市町村が役割を分けて運営しています。どこまでが広域連合で、どこからが市町村なのかは、条文を読むとはっきりします。

林 利恵

Rie HAYASHI, MPH, PhD
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博士(医学)
特定社会保険労務士
東豊社労士事務所 代表
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医学研究者から社労士へ転身
労働衛生の専門知識を活かし
・就業規則作成
・メンタルヘルス対策
・両立支援
を得意としています
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広域連合の設立(第48条)

後期高齢者医療を運営するのは、「後期高齢者医療広域連合」です。第48条は次のように定めています。

市町村は、後期高齢者医療の事務(保険料の徴収の事務及び被保険者の便益の増進に寄与するものとして政令で定める事務を除く。)を処理するため、都道府県の区域ごとに当該区域内のすべての市町村が加入する広域連合(以下「後期高齢者医療広域連合」という。)を設けるものとする。

ポイントは3つあります。

  • 都道府県ごとに1つ置かれます。
  • その都道府県内のすべての市町村が加入します。入るかどうかを市町村が選ぶ仕組みではありません。
  • 運営しているのは都道府県ではありません。市町村が集まってつくった広域連合です。

広域連合は、地方自治法にもとづく特別地方公共団体の一つです。複数の市町村が共同で仕事をするための組織だと考えるとわかりやすいでしょう。

役割分担の全体像

第48条のかっこ書に注目してください。後期高齢者医療の事務は基本的に広域連合が行いますが、かっこ書で除かれた事務は市町村に残ります。

担う事務
広域連合後期高齢者医療の事務の本体(被保険者の資格の管理、給付、保険料の賦課など)
市町村保険料の徴収/被保険者の便益の増進に寄与する事務(施行令第2条)

市町村が行う「被保険者の便益の増進に寄与する事務」

施行令第2条は、市町村が行う事務を次のように定めています。

号内容
165〜74歳の人の障害認定の申請の受付
2資格の取得・喪失などの届出の受付
3資格を確認する書面の交付の求めの受付と、書面の引渡し(電磁的方法による提供を含む)
4資格に関する事務のうち、厚生労働省令で定めるもの
5後期高齢者医療給付の手続に関する事務のうち、厚生労働省令で定めるもの
6保険料の減免・徴収猶予などの手続に関する事務のうち、厚生労働省令で定めるもの
7広報(広域連合の区域全部を対象とするものを除く)と相談
81〜7に付随する事務

どれも「受付」「引渡し」「相談」など、住民と直接やりとりする事務です。被保険者にとって身近な市町村に窓口を残し、制度の中身は広域連合がまとめて運営する。この分け方が第48条の骨組みです。

たとえば、資格の届出は法律上、広域連合に対して行うものです(第54条第1項)。市町村は、その届出を「受け付ける」役割を担っています。

保険料は「賦課」と「徴収」で担当が分かれる(第104条)

保険料の扱いは、とくに分担がはっきりしています。

担当根拠
保険料を決める(賦課)広域連合第104条第2項:広域連合の条例で定める保険料率で算定した保険料額によって課する
保険料を集める(徴収)市町村第104条第1項:市町村は保険料を徴収しなければならない

決めるのは広域連合、集めるのは市町村です。

保険料率は、広域連合の区域全体で均一にするのが原則です(第104条第2項)。離島など医療の確保が難しい地域には、別の保険料率を定める例外があります。また、保険料率は、医療費の見込みなどに照らして、おおむね2年を通じて財政の均衡を保てるものでなければなりません(第104条第3項)。

特別会計(第49条)

広域連合と市町村は、後期高齢者医療に関するお金の出入りについて、それぞれ特別会計を設けなければなりません。市町村も保険料を集める以上、専用の会計が必要になるわけです。

用語と運営主体の整理

高確法の「保険者」に広域連合は含まれない

高確法でいう「保険者」は、第7条第2項で次のように定義されています。

医療保険各法の規定により医療に関する給付を行う全国健康保険協会、健康保険組合、都道府県及び市町村、国民健康保険組合、共済組合又は日本私立学校振興・共済事業団

この列挙に、後期高齢者医療広域連合は入っていません。高確法の条文に「保険者」と出てきたら、健康保険や国民健康保険などの保険者を指しています。後期高齢者医療の運営主体を指すときは、条文は「後期高齢者医療広域連合」と書き分けています。

運営主体は都道府県ではない

国民健康保険は、平成30年度から都道府県と市町村が共同で運営しています。これと同じように、後期高齢者医療も都道府県が運営していると思われがちです。実際に都道府県の区域ごとに置かれているのは、市町村が加入する広域連合です。

まとめ

  • 後期高齢者医療の運営主体は、都道府県ごとに区域内のすべての市町村が加入する広域連合です(第48条)。
  • 市町村には、保険料の徴収と、届出の受付や相談など被保険者の便益の増進に寄与する事務が残ります(施行令第2条)。
  • 保険料は、広域連合が条例で定める保険料率で賦課し、市町村が徴収します(第104条)。
  • 高確法の「保険者」に広域連合は含まれません(第7条第2項)。

従業員の親が75歳になって手続に迷っているときは、「窓口は市区町村、制度の運営は都道府県ごとの広域連合」と伝えると、書類の差出人の違いにも納得してもらいやすくなります。

参考資料