高齢者医療確保法|保健事業と介護予防の一体的実施を解説(第125条・市町村への委託・特定健診の記録の引継ぎ)

高齢者医療確保法|保健事業と介護予防の一体的実施 労働社会保険諸法令の基礎知識
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75歳になると、医療保険は後期高齢者医療に変わり、健康づくりの担い手も後期高齢者医療広域連合に移ります。一方で、介護予防は引き続き市町村が担います。担い手が分かれたままでは、74歳までの健康づくりが75歳で途切れかねません。これをつなぐのが、令和2年4月に始まった「保健事業と介護予防の一体的実施」です。

林 利恵

Rie HAYASHI, MPH, PhD
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博士(医学)
特定社会保険労務士
東豊社労士事務所 代表
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医学研究者から社労士へ転身
労働衛生の専門知識を活かし
・就業規則作成
・メンタルヘルス対策
・両立支援
を得意としています
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高齢者保健事業(第125条第1項)

後期高齢者医療広域連合は、高齢者保健事業を行うよう努めなければなりません。第125条第1項は次のように定めています。

後期高齢者医療広域連合は、高齢者の心身の特性に応じ、健康教育、健康相談、健康診査及び保健指導並びに健康管理及び疾病の予防に係る被保険者の自助努力についての支援その他の被保険者の健康の保持増進のために必要な事業(以下「高齢者保健事業」という。)を行うように努めなければならない。

75歳以上の人の健診は、この規定にもとづいて行われています。40〜74歳の特定健診が保険者の「行うものとする」事業だったのに対し、こちらは「努めなければならない」です。

一体的に実施するもの(第125条第3項)

広域連合は、高齢者保健事業を行うときは、市町村との連携の下に、次の事業と一体的に実施するものとされています。

事業根拠担い手
高齢者の心身の特性に応じた国民健康保険の保健事業国民健康保険法第82条第5項市町村
介護保険の地域支援事業介護保険法第115条の45第1項〜第3項市町村

条文は、その目的を「高齢者の身体的、精神的及び社会的な特性を踏まえ、高齢者保健事業を効果的かつ効率的で被保険者の状況に応じたきめ細かなものとするため」としています。74歳までの国保の保健事業と、市町村の介護予防の取組を、75歳を境に途切れさせないための規定です。

市町村への委託(第125条の2)

広域連合は市町村に委託できる

広域連合は、広域計画にもとづき、高齢者保健事業の一部の実施を市町村に委託できます(第125条の2第1項前段)。

委託を受けた市町村は基本的な方針を定める

委託を受けた市町村は、国保の保健事業や地域支援事業との一体的な実施のあり方を含む基本的な方針を定めるものとされています(第125条の2第1項前段)。

広域連合は市町村に情報を提供できる

広域連合は、委託した市町村に対し、委託した事業に必要な範囲で、療養に関する情報や健康診査・保健指導の記録の写しなどを提供できます(第125条の2第1項後段)。

委託を受けた市町村の職員や元職員は、高齢者保健事業で知った個人の秘密を、正当な理由なく漏らしてはなりません(第125条の2第2項)。

特定健診の記録を引き継ぐ(第125条の3第1項)

広域連合と委託を受けた市町村は、被保険者が75歳になる前に加入していた保険者に対し、特定健康診査や特定保健指導の記録の写しの提供を求めることができます。

74歳までの健診結果を引き継げるので、75歳以降の健康づくりに、それまでの経過を生かせます。

国の支援(第125条第6項・第7項)

厚生労働大臣は、高齢者保健事業が適切かつ有効に行われるよう、指針の公表、情報の提供その他の必要な支援を行うものとされています(第125条第6項)。

指針には、広域連合と市町村との連携や、地域の関係機関・関係団体との連携に関する事項などを定めます(第125条第7項)。

75歳前後の担い手の整理

事業74歳まで75歳以上
医療保険健康保険・国民健康保険後期高齢者医療(広域連合)
健診・保健事業保険者の特定健診など広域連合の高齢者保健事業(市町村に委託できる)
介護予防市町村の地域支援事業市町村の地域支援事業

医療保険と健診の担い手は75歳で変わりますが、介護予防の担い手は市町村のまま変わりません。一体的実施は、健康づくりと介護予防を市町村でまとめて行えるようにする仕組みです。

案内が市区町村から届く理由

75歳以上の人あてに、健診や健康教室の案内が、広域連合ではなく市区町村から届くことがあります。広域連合が高齢者保健事業の一部を市町村に委託している場合があるためです。

従業員の親あてにこうした案内が届いたと相談されたときは、この仕組みを伝えると安心してもらえるでしょう。

まとめ

  • 広域連合は、75歳以上の人の健康づくりのため、高齢者保健事業を行うよう努めます(第125条第1項)。
  • 高齢者保健事業は、市町村の国保の保健事業や介護保険の地域支援事業と一体的に実施します(第125条第3項)。
  • 広域連合は、高齢者保健事業の一部を市町村に委託でき、委託を受けた市町村は基本的な方針を定めます(第125条の2)。
  • 広域連合と委託を受けた市町村は、74歳まで加入していた保険者に特定健診の記録の写しを求められます(第125条の3第1項)。

参考資料