高齢者医療確保法|後期高齢者医療の被保険者を解説(75歳・障害認定・資格の取得と喪失)

高齢者医療確保法|後期高齢者医療の被保険者を解説 労働社会保険諸法令の基礎知識
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75歳の誕生日を迎えると、会社員でも自営業でも、それまでの医療保険を抜けて後期高齢者医療に移ります。在職中の従業員も例外ではありません。誰が被保険者になり、いつ資格を取得し、いつ失うのかを条文に沿って整理します。

林 利恵

Rie HAYASHI, MPH, PhD
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博士(医学)
特定社会保険労務士
東豊社労士事務所 代表
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医学研究者から社労士へ転身
労働衛生の専門知識を活かし
・就業規則作成
・メンタルヘルス対策
・両立支援
を得意としています
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被保険者になる人(第50条)

後期高齢者医療の被保険者は、第50条で次のように定められています。

次の各号のいずれかに該当する者は、後期高齢者医療広域連合が行う後期高齢者医療の被保険者とする。
一 後期高齢者医療広域連合の区域内に住所を有する七十五歳以上の者
二 後期高齢者医療広域連合の区域内に住所を有する六十五歳以上七十五歳未満の者であつて、厚生労働省令で定めるところにより、政令で定める程度の障害の状態にある旨の当該後期高齢者医療広域連合の認定を受けたもの

75歳以上の人(第1号)

広域連合の区域内に住所があり、75歳以上であれば、それだけで被保険者になります。本人が届出や申請をして加入する仕組みではありません。職業や収入も関係ありません。

65〜74歳で障害認定を受けた人(第2号)

65歳以上75歳未満で一定の障害の状態にある人は、広域連合の認定を受けると被保険者になります。こちらは自動的には移りません。本人が申請する必要があります。

申請には、障害の状態を明らかにできる国民年金の年金証書や身体障害者手帳などの書類を添付します(施行規則第8条第1項)。障害の程度は、施行令の別表で定められています。

申請した人は、いつでも、将来に向かって申請を撤回できます(施行規則第8条第2項)。65〜74歳の人にとって、後期高齢者医療に移るかどうかは本人が選べるということです。

被保険者にならない人(第51条)

第50条に当てはまっても、次のいずれかに該当する人は被保険者になりません。

号対象
1生活保護を受けている世帯(保護を停止されている世帯を除く)に属する人
2その他特別の理由がある人で厚生労働省令で定めるもの

第2号の具体的な中身は、施行規則第9条に定められています。たとえば、住民基本台帳に記録される外国人住民でない外国籍の人や、病院で医療を受ける目的で日本に滞在している外国籍の人などです。

生活保護は「世帯」単位で判断されます。保護が停止されている世帯に属する人は、適用除外になりません。

資格を取得する日(第52条)

次のいずれかに当てはまった日、または第51条の適用除外に当てはまらなくなった日から、資格を取得します。

号取得のきっかけ
1区域内に住所がある人が75歳に達したとき
275歳以上の人が区域内に住所を移したとき
3区域内に住所がある65〜74歳の人が障害認定を受けたとき

実務では、75歳の誕生日当日から被保険者になると案内されています。

資格を失う日(第53条)

資格を失う日は、原則として「翌日」です。ただし、例外があります。

事由資格を失う日条文
区域内に住所がなくなった(海外への転出など)翌日第53条第1項本文
障害の状態に該当しなくなった翌日第53条第1項本文
同じ日に他の広域連合の区域に住所を移したその日第53条第1項ただし書
生活保護を受ける世帯に属するようになったその日第53条第2項

他の都道府県へ引っ越した場合、元の広域連合の資格はその日に失い、同じ日に新しい広域連合の資格を取得します。空白の日ができないように組み立てられているわけです。

施設に入ったときの特例(第55条)

病院への入院や、特別養護老人ホーム・介護保険施設などへの入所で住所を移した場合、住所を移す前の広域連合の被保険者のままになります。これを住所地特例といいます。

たとえば、東京都に住んでいた人が埼玉県の特別養護老人ホームに入所して住所を移しても、東京都の広域連合の被保険者のままです。施設の多い地域に医療費の負担が集中しないようにするための仕組みです。

健康保険との関係

75歳になると健康保険を抜ける

健康保険の被保険者も、75歳になると健康保険の被保険者ではなくなります。健康保険法は、後期高齢者医療の被保険者を健康保険の適用除外としているためです(健康保険法第3条第1項第7号)。在職中かどうかは関係ありません。

75歳の家族は被扶養者になれない

後期高齢者医療の被保険者は、健康保険の被扶養者にもなれません(健康保険法第3条第7項ただし書)。75歳になった親や配偶者は、健康保険の扶養から外れ、後期高齢者医療に移ります。

残された家族の手続

見落としやすいのが、75歳になった本人に扶養されていた74歳以下の家族です。本人が健康保険を抜けると、その家族も被扶養者ではなくなります。国民健康保険などに加入する手続が必要になります。

たとえば、76歳の社長が健康保険を抜けると、70歳の配偶者は自分で国民健康保険に入らなければなりません。会社としても、該当する従業員には早めに案内しておくと安心です。

まとめ

  • 区域内に住所がある75歳以上の人は、届出がなくても後期高齢者医療の被保険者になります(第50条第1号)。
  • 65〜74歳の人は、障害認定の申請をして認定を受けると被保険者になります。申請はいつでも撤回できます(第50条第2号、施行規則第8条)。
  • 生活保護を受けている世帯に属する人などは適用除外です(第51条)。
  • 資格の喪失は原則「翌日」、他の広域連合への住所移転と生活保護は「その日」です(第53条)。
  • 75歳になると健康保険を抜けるため、扶養されていた74歳以下の家族には国民健康保険などへの加入手続が必要です。

参考資料