高齢者医療確保法は、75歳以上の医療制度だけを定めた法律ではありません。第1条の目的のはじめに挙げているのは「医療費の適正化を推進するための計画の作成」です。国と都道府県がつくる医療費適正化計画の仕組みを、条文に沿って整理します。
国がつくるもの(第8条第1項)
厚生労働大臣は、次の2つを定めます。
| 名前 | 内容 |
|---|---|
| 医療費適正化基本方針 | 医療費適正化に関する施策についての基本的な方針 |
| 全国医療費適正化計画 | 6年ごとに、6年を一期として定める計画 |
医療費適正化基本方針には、都道府県が計画をつくるときの指針となる事項や、計画の達成状況の評価、医療費の調査・分析に関する基本的な事項などを定めます(第8条第2項)。
都道府県がつくるもの(第9条第1項)
都道府県は、医療費適正化基本方針に即して、6年ごとに、6年を一期として、都道府県医療費適正化計画を定めます。
現在は第4期で、計画期間は令和6年度から令和11年度までです。特定健康診査等実施計画の第4期と同じ期間になっています。
都道府県計画で定めること(第9条第2項)
都道府県医療費適正化計画には、次の事項を定めます。
| 号 | 内容 |
|---|---|
| 第1号 | 住民の健康の保持の推進に関する目標 |
| 第2号 | 医療の効率的な提供の推進に関する目標 |
| 第3号 | 医療計画にもとづく事業を踏まえた、病床の機能の分化及び連携の推進の成果 |
| 第4号 | 計画期間における医療に要する費用の見込み |
柱になるのは、第1号の「健康づくり」と第2号の「医療の効率化」です。この2つを進めた結果、医療費がどれだけ抑えられるかを見込んで、第4号の費用の見込みを立てます。
さらに、おおむね次の事項も定めます(第9条第3項)。
- 目標を達成するために都道府県が取り組むべき施策
- 保険者、後期高齢者医療広域連合、医療機関その他の関係者の連携及び協力
- 医療に要する費用の調査及び分析
- 計画の達成状況の評価
計画の評価(第12条)
計画は、つくって終わりではありません。期間が終わったら実績を評価します。
| 項 | 誰が | 内容 |
|---|---|---|
| 第1項 | 都道府県 | 計画期間が終わった翌年度に、目標の達成状況などを調べて分析し、保険者協議会の意見を聴いて実績を評価する |
| 第2項 | 都道府県 | 評価の結果を公表するよう努め、厚生労働大臣に報告する |
| 第3項 | 厚生労働大臣 | 全国計画の実績を評価し、都道府県の報告を踏まえて各都道府県計画の実績も評価する |
| 第4項 | 厚生労働大臣 | 評価の結果を公表する |
都道府県の公表は「努める」、厚生労働大臣の公表は「ものとする」と、強さが違う点にも注目してください。
診療報酬に係る意見(第13条)
都道府県は、評価の結果、医療の効率的な提供の推進に関する目標(第9条第2項第2号)を達成するために必要があると認めるときは、厚生労働大臣に診療報酬に関する意見を提出できます(第13条第1項)。
意見が出されたときは、厚生労働大臣はその意見に配慮して診療報酬を定めるよう努めなければなりません(第13条第2項)。
診療報酬の特例(第14条)
厚生労働大臣は、評価の結果、目標を達成し医療費適正化を推進するために必要があると認めるときは、一の都道府県の区域内の診療報酬について、他の都道府県と異なる定めをすることができます(第14条第1項)。
この定めをするときは、あらかじめ関係都道府県知事に協議します(第14条第2項)。
第13条と第14条の違い
| 第13条 | 第14条 | |
|---|---|---|
| 動くのは | 都道府県 | 厚生労働大臣 |
| できること | 診療報酬に関する意見を出す | 都道府県ごとに異なる診療報酬を定める |
| 相手方の対応 | 大臣は意見に配慮するよう努める | あらかじめ関係都道府県知事に協議する |
第14条は、都道府県から求められたときに動く規定ではありません。大臣が評価の結果をもとに判断する規定です。都道府県の側から動く規定は第13条です。
会社と医療費適正化計画
都道府県計画には、保険者、後期高齢者医療広域連合、医療機関などの連携・協力に関する事項も定められます(第9条第3項第2号)。会社の健康保険組合も、計画を支える関係者の一つです。
まとめ
- 厚生労働大臣は医療費適正化基本方針と全国医療費適正化計画を、都道府県は都道府県医療費適正化計画を定めます。
- 計画は6年ごとに6年を一期とし、現在は第4期(令和6〜11年度)です。
- 都道府県計画の柱は、住民の健康の保持の推進と医療の効率的な提供の推進です。
- 計画期間が終わった翌年度に実績を評価します(第12条)。
- 都道府県は診療報酬に関する意見を出すことができ(第13条)、厚生労働大臣は都道府県ごとに異なる診療報酬を定めることができます(第14条)。
