障害者雇用納付金の対象は常用労働者100人超の事業主です。では100人以下の事業主は、この制度から完全に切り離されているのでしょうか。そうではありません。納付金を納める義務がない代わりに、一定数を超えて障害者を雇用していれば「報奨金」が支給されます。今回は、この報奨金と、在宅就業障害者への発注を評価する特例制度を整理します。
報奨金の根拠は「附則」にある
報奨金の根拠は、障害者雇用促進法の附則第4条です。条文の見出しは「雇用する労働者の数が百人以下である事業主に係る納付金及び報奨金等に関する暫定措置」となっています。
この条文は、常用労働者100人以下の事業主について、次の規定を「当分の間、適用しない」と定めています。
- 第49条第1項第1号(納付金関係業務のうち調整金支給に係る業務)
- 第50条(調整金の支給)
- 第3章第2節第2款(納付金の徴収)
- 在宅就業に関する特例の規定
そのうえで、これらの代わりとなる措置として報奨金を用意している、という構造です。
つまり100人以下の事業主は、単に「納付金がない」のではなく、そもそも適用される制度の条文の階層が違うということです。100人超の調整金は法本則(第50条)、100人以下の報奨金は法附則(第4条)。同じ「達成企業への支給」でありながら、法律上の位置づけが異なります。
この違いは、制度の将来を考えるうえでも意味を持ちます。厚生労働省の研究会では、納付金の対象を100人以下の事業主にも拡大することが検討課題として挙げられていますが、これが実現する場合には、この附則第4条そのものの改正または廃止が必要になります。
報奨金の額
- 支給額:基準を超えて雇用している障害者1人あたり月額21,000円
- ただし、支給対象人数が年420人月を超える場合、その超過分については1人あたり月額16,000円に減額
調整金(100人超・月額29,000円、120人月超は23,000円)と比べると、単価は低い一方で、逓減が始まる人月数は420人月と大きく設定されています。100人以下の事業主が420人月(月平均35人)を超えて障害者を雇用するケースは限られますから、実務上は21,000円で計算して差し支えありません。
基準は「4%」か「72人」か
報奨金の支給対象になるかどうかは、各月の雇用障害者数の年度間合計が、次のいずれか多い数を超えているかで判定します。
- 各月の常用雇用労働者数の4%の年度間合計数
- 72人
ここで注意が必要なのは、4%は各月ごとに計算し、1人未満の端数を月単位で切り捨ててから12か月分を合計するという点です。年度合計に対して4%を掛けるのではありません。
JEEDの算定例で確かめる
JEEDが公表している算定例(令和7年4月〜令和8年3月)を見ると、この仕組みがよく分かります。
| 数値 | |
|---|---|
| 短時間労働者以外の常用雇用労働者数(年度合計) | 1,043人 |
| 短時間労働者数(年度合計) | 70人 |
| 常用雇用労働者の総数(①+②×0.5、年度合計) | 1,078人 |
| 各月の4%(1人未満切捨て)の年度合計 | 36人 |
| 72人 | 72人 |
| → いずれか多い数 | 72人 |
| 対象障害者数(年度合計) | 117人 |
| 報奨金の額 | (117−72)×21,000円=945,000円 |
年度合計1,078人に単純に4%を掛ければ43.12人ですが、月ごとの切捨てを経ると36人まで下がります。この例では各月の常用雇用労働者数が74人〜100.5人で推移しており、4%は月あたり2人〜4人にとどまるためです。
JEEDの資料自身が「72人>36人」と注記しているとおり、100人規模の事業主では72人の側が基準になります。したがって実務上は、年度合計72人=月平均6人を超えて障害者を雇用しているかで判断できます。
なお、短時間労働者を0.5人としてカウントするルールは分母(常用雇用労働者数)にも分子(対象障害者数)にも及びます。上の例で対象障害者数に0.5刻みの数字が現れるのは、そのためです。
「100人以下」はどう判定するのか
上の算定例では、令和8年3月の常用雇用労働者数が100.5人となっています。100人を超えているにもかかわらず、報奨金の算定例として示されています。
これは「100人以下」の判定が、毎月100人以下であることを求めるものではないからです。判定基準は次のとおりです。
常用雇用労働者の人数が100人を超える月が、4月〜3月の1年間を通して5か月以上あること(=納付金の対象になる条件)
したがって、100人を超える月が4か月以下であれば、報奨金の側に留まります。年度の一部の月だけ100人を超えたからといって、直ちに報奨金の対象から外れるわけではありません。
在宅就業障害者への発注も評価される
障害者雇用促進法には、障害者を「雇用する」のではなく「発注する」ことを評価する制度もあります。在宅就業障害者、または厚生労働大臣の登録を受けた在宅就業支援団体に仕事を発注し、その対価を支払った事業主に対する特例です。
| 対象事業主 | 単価 | 根拠条文 | |
|---|---|---|---|
| 在宅就業障害者特例調整金 | 納付金申告事業主・調整金申請事業主 | 調整額21,000円 | 法第74条の2 |
| 在宅就業障害者特例報奨金 | 報奨金申請事業主 | 報奨額17,000円 | 法附則第4条第4項・第6項 |
支給額は、いずれも次の計算式で算出します。
単価 × (当該年度に支払った対価の総額 ÷ 評価額350,000円)
除して得た数に1未満の端数があるときは切り捨てます。ここでも、100人超向けは本則(第74条の2)、100人以下向けは附則(第4条)という同じ構造が繰り返されています。
なお、この制度における「在宅就業障害者」とは、身体障害者・知的障害者・精神障害者であって、自宅その他厚生労働省令で定める場所において物品の製造、役務の提供その他これらに類する業務を自ら行う者(雇用されている者を除く)をいいます(法第74条の2第3項第1号)。雇用契約を前提としない制度であるため、実雇用率の分子には算入されません。「実雇用率を上げる」ことと「在宅就業支援を評価してもらう」ことは、制度上は別のルートを通ります。
また、法定雇用率未達成の企業については、在宅就業障害者特例調整金の額に応じて障害者雇用納付金が減額される仕組みになっています。
障害者雇用関係助成金
納付金を財源とする支給金は、調整金・報奨金・在宅就業特例のほかに、各種の助成金があります。機構が行う納付金関係業務(法第49条)の一つとして位置づけられているものです。
- 障害者作業施設設置等助成金:障害特性による就労上の課題を解決し、作業がやりやすくなるよう配慮された作業施設の設置・整備を行う事業主への助成
- 障害者福祉施設設置等助成金:障害者が利用しやすく配慮された福利厚生施設等の設置・整備を行う事業主、または事業主が加入する事業主団体への助成
これらは常用労働者100人以下の事業主も対象になります。「納付金を払っていないから助成金は使えない」という理解は誤りです。
申請期限が調整金と違う
見落としやすいのが申請期限です。納付金・調整金と報奨金では、期限が異なります。
| 手続 | 対象 | 期限(令和8年度) |
|---|---|---|
| 納付金の申告・調整金の申請 | 常用労働者100人超 | 4月1日〜5月15日 |
| 報奨金等の申請 | 常用労働者100人以下 | 4月1日〜7月31日 |
いずれも、期限を過ぎた申請に対しては支給されません。報奨金の期限は7月31日と余裕があるように見えますが、申請には申請対象期間(前年度)の各月における人数等の報告が必要です。月ごとの常用雇用労働者数と対象障害者数を、短時間労働者の0.5カウントを含めて整理する作業が発生しますので、期限直前に着手して間に合う内容ではありません。
まとめ
- 報奨金の根拠は法附則第4条(100人以下の事業主に関する暫定措置)。100人超の調整金が法本則(第50条)であるのと、条文の階層が異なる。
- 支給額は超過1人あたり月額21,000円(420人月超は16,000円)。
- 基準は「4%の年度間合計」か「72人」のいずれか多い数だが、4%は月ごとに端数切捨てして合計するため、100人規模では常に72人が基準。実務上は年度合計72人=月平均6人で判断できる。
- 「100人以下」の判定は、100人超の月が年度内に5か月以上あるかどうか。4か月以下なら報奨金側。
- 在宅就業障害者への発注も、特例調整金(法第74条の2)・特例報奨金(法附則第4条第4項・第6項)として評価される。ただし実雇用率の分子には算入されない。
- 報奨金等の申請期限は7月31日(納付金・調整金は5月15日)。
「うちは100人以下だから納付金制度とは関係ない」という理解は、受け取れるはずの報奨金を取りこぼす原因になります。月平均6人を超えて障害者を雇用している100人以下の事業主は、申請すれば支給を受けられます。まずは前年度の各月の雇用障害者数を集計し、年度合計が72人を超えているかを確認するところから始めてください。
