障害者雇用のカウントは「重度」と「時間」で決まる|ダブルカウントと精神障害者の特例を整理する

障害者雇用のカウントは「重度」と「時間」で決まる|ダブルカウントと精神障害者の特例を整理する 労働社会保険諸法令の基礎知識
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障害者を1人雇用すれば実雇用率が1人分上がる、とは限りません。障害の程度と週の労働時間の組み合わせによって、カウントは0.5人にも2人にもなります。同じ「1人の採用」でも、雇用形態の設計次第で自社の実雇用率への影響が変わるということです。この記事では、この実雇用率のカウントルールを整理します。

林 利恵

Rie HAYASHI, MPH, PhD
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博士(医学)
特定社会保険労務士
東豊社労士事務所 代表
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医学研究者から社労士へ転身
労働衛生の専門知識を活かし
・就業規則作成
・メンタルヘルス対策
・両立支援
を得意としています
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原則:週30時間以上なら1人

身体障害者・知的障害者・精神障害者を、週所定労働時間30時間以上で雇用すれば、原則として「1人」としてカウントされます。ここが出発点です。この原則に、2つの軸で例外が加わっていきます。

  • 障害の程度(重度かどうか)
  • 週の労働時間(30時間以上/20時間以上30時間未満/10時間以上20時間未満)

ダブルカウントは「重度」の身体・知的障害者だけ

週30時間以上で雇用する重度身体障害者・重度知的障害者は、1人の雇用で「2人」としてカウントされます。いわゆるダブルカウントです。

  • 重度身体障害者=身体障害者手帳1級・2級(重複障害により3級に該当する場合を含む)
  • 重度知的障害者=療育手帳等で重度と判定された者

ここで押さえておきたいのは、精神障害者にダブルカウントの制度は存在しないという点です。身体障害者・知的障害者には「重度」という区分がありますが、精神障害者にはそもそも重度区分自体がありません。1976年(昭和51年)の法改正で導入されたダブルカウント制度は、重度障害者の就業率が特に低かった当時の状況を背景に、重度障害者を採用する企業へのインセンティブとして設計されたものです。精神障害者が実雇用率に算入されるようになったのは平成18年、法定雇用率の算定基礎に加わったのは平成30年と、そもそも制度への合流時期が異なるため、ダブルカウントという古い枠組みには乗っていません。

短時間労働者(週20時間以上30時間未満):原則0.5人、重度は1人

週所定労働時間が20時間以上30時間未満の短時間労働者は、原則として0.5人としてカウントされます。ただし、重度身体障害者・重度知的障害者については、ダブルカウントの考え方がここにも及び、1人(=2人の半分)としてカウントされます。

特定短時間労働者(週10時間以上20時間未満):対象は3区分のみ

令和6年4月の改正により、週所定労働時間が10時間以上20時間未満の「特定短時間労働者」も、一定の場合に算定対象へ加わりました。ただし対象となる障害種別は限定されています。

  • 重度身体障害者、重度知的障害者、精神障害者 → 0.5人としてカウント
  • 重度でない身体障害者、重度でない知的障害者 → 対象外(カウントできない)

この改正以前は、週20時間未満の雇用は実雇用率に一切反映されず、代わりに「特例給付金」という金銭的な支援で補っていました。特定短時間労働者が算定対象に加わったことに伴い、この特例給付金は廃止されています。「週20時間未満は雇用率にカウントできない」という理解のまま止まっている経営者・人事担当者は今も少なくありませんが、条件を満たせば0.5人としてカウントできる制度に変わっています。

カウント早見表

区分30時間以上20時間以上30時間未満10時間以上20時間未満
身体障害者(重度以外)1人0.5人対象外
重度身体障害者2人1人0.5人
知的障害者(重度以外)1人0.5人対象外
重度知的障害者2人1人0.5人
精神障害者1人1人(特例)0.5人

精神障害者である短時間労働者の特例:0.5人ではなく1人

上の表の「精神障害者」の20〜30時間欄だけ、他の区分と違う数字が入っています。本来の原則どおりなら0.5人のはずですが、精神障害者である短時間労働者については、特例により1人としてカウントされます。

この特例には経緯があります。当初は「新規雇入れから3年以内、または精神障害者保健福祉手帳取得から3年以内の者であって、かつ令和5年3月31日までに雇い入れられた者」に限る時限措置として設けられました。しかし令和5年4月1日以降、雇入れからの期間等に関係なく、当分の間、1人としてカウントできる形に延長されています。つまり現在は、期限を区切らない実質的な恒常措置として運用されているということです。ここは制度の変遷を追わずに古い記事や資料をそのまま参照すると、「令和5年3月31日までに雇い入れられた者に限る」という失効済みの限定条件を今も引きずってしまいやすい箇所です。

なぜ精神障害者だけ設計が違うのか

平成16年の労働政策審議会意見書の段階で、精神障害者については「疲れやすく長時間働くことが困難な精神障害者も少なくない」ことを理由に、短時間労働を評価する方向での制度設計が示されていました。

身体障害者・知的障害者が「障害が重いほど手厚くカウントする」という設計であるのに対し、精神障害者は「短時間であっても、通常のフルタイム雇用と同等に評価する」という設計です。同じ「雇用の質を評価する」という目的でも、障害特性の違いが制度の非対称性としてそのまま表れています。

実務上の着眼点:分母には反映されない

ここまでは実雇用率の分子(雇用障害者数)側の話でした。分母(常用労働者数)についても、週20時間以上30時間未満の労働者は0.5人としてカウントするルールがあります(法定雇用率の対象事業主が「37.5人以上」となる根拠でもあります)。

一方で、特定短時間労働者(週10〜20時間)は分母には算入されません。分子側にだけ0.5人として算入される、非対称な扱いです。分母を増やさずに分子だけを増やせるため、企業側から見れば、条件に合う障害者を特定短時間労働として採用することは、実雇用率の改善に直結しやすい選択肢になります。

まとめ

  1. ダブルカウントの対象は重度身体障害者・重度知的障害者のみ。精神障害者にダブルカウントの制度はない。
  2. 短時間労働者(週20〜30時間)は原則0.5人、重度身体・重度知的は1人。
  3. 特定短時間労働者(週10〜20時間)は、重度身体・重度知的・精神障害者に限り0.5人。重度でない身体・知的は対象外。
  4. 精神障害者である短時間労働者は、当分の間、0.5人ではなく1人としてカウント(令和5年3月31日までの時限措置から、令和5年4月1日以降は恒常的な特例に移行)。
  5. 特定短時間労働者は実雇用率の分子にのみ算入され、分母には含まれない

自社の実雇用率を正確に把握するには、在籍する障害者一人ひとりについて、障害の程度(重度該当性)と週の所定労働時間を突き合わせる作業が欠かせません。手帳のコピーを保管しているだけでは、このカウントは正しく計算できません。