自律的管理では、健康診断の考え方も従来の特殊健康診断とは異なります。
この記事では、リスクアセスメント対象物健康診断の2類型と、がん原性物質に係る記録の30年保存について解説します。
リスクアセスメント対象物健康診断とは(従来の特殊健診と考え方が違う)
特化則等の特殊健康診断は、「作業に常時従事すること」を理由に一律で実施します。
これに対し、自律的管理の健康診断は、「ばく露の程度・リスク」に応じて実施します。
ばく露が適切に抑えられていれば、原則として実施は不要です。
2種類のリスクアセスメント対象物健康診断
第3項健診(則第577条の2第3項)
リスクアセスメントの結果、健康障害のリスクが許容できないと判断された場合に実施します。実施頻度は、リスクに応じて判断します(例:6月以内ごと、1年以内ごと等)。
第4項健診(則第577条の2第4項)
濃度基準値設定物質について、濃度基準値を超えてばく露したおそれがあるときに、速やかに実施します。事故等による一過性のばく露も対象であり、「常時従事」の要件はありません。
健診個人票の保存(則第577条の2第5項)
リスクアセスメント対象物健康診断を行ったときは、リスクアセスメント対象物健康診断個人票を作成します。
- 原則5年間保存
- がん原性物質に係るものは30年間保存
がん原性物質の作業記録等の30年保存
がん原性物質を製造・取り扱う業務では、労働者のばく露状況・作業の概要・従事期間等を1年以内ごとに記録し、30年間保存します。
ここでいう「がん原性物質」とは、リスクアセスメント対象物のうち発がん性区分1の物質で、令和3年3月31日までに区分1と分類されたものをいいます(エタノール・特化則の特別管理物質は除き、告示で指定されています)。
がんの発生把握時の対応
同一の事業場で、1年以内に複数(2人以上)の労働者が同種のがんに罹患したことを把握し、業務起因性が疑われる場合は、医師の意見を聴き、労働局長に報告します。
むすび
自律的管理の健康診断は、「リスクベース」で実施するのが従来との大きな違いです。
ばく露が抑えられていれば原則不要である一方、リスクが許容できない場合や濃度基準値を超えたおそれがある場合には実施が必要です。
発がんの遅発性に備え、がん原性物質については健診個人票・作業記録ともに30年保存が求められる点が、実務上の要となります。
