こども性暴力防止法|就業規則改定の手続を12月25日に間に合わせる方法を解説(意見聴取・届出・周知)

こども性暴力防止法|就業規則改定の手続を12月25日に間に合わせる方法を解説 労働社会保険諸法令の基礎知識
この記事は約5分で読めます。

こども性暴力防止法への対応で、時間がいちばんかかるのが就業規則の改定です。条文を書くだけでは終わらず、意見聴取・周知・届出という労働基準法の手続が続きます。施行日の令和8年12月25日に間に合わせるには、残りの約8週間をどう使うかを今のうちに決めておく必要があります。

林 利恵

Rie HAYASHI, MPH, PhD
-----------------
博士(医学)
特定社会保険労務士
東豊社労士事務所 代表
-----------------
医学研究者から社労士へ転身
労働衛生の専門知識を活かし
・就業規則作成
・メンタルヘルス対策
・両立支援
を得意としています
-----------------
オンライン相談(Zoom)で全国対応
まずは無料相談(30分)から
【無料相談お申し込み】

\【就業規則ラボ】就業規則の知識を毎日お届け!フォローすると労務リスクに強くなります/

何を改定するか(就業規則参考例の構成)

こども家庭庁は「就業規則参考例」を公表しています。参考例は、次の6つで構成されています。

  1. 対象業務従事者の範囲
  2. 児童対象性暴力等及び不適切な行為の禁止
  3. 犯罪事実確認の手続に応じる義務
  4. 試用期間の解約事由
  5. 懲戒事由
  6. 附則

規定の内容は、こども性暴力防止法|就業規則の整備を解説(服務規律・配置転換・懲戒)で説明しています。この記事では、改定の「手続」に絞って説明します。

改定に必要な労働基準法上の手続

就業規則を変更するときは、作成するときと同じ手続をとります。

手続内容根拠
意見聴取過半数労働組合(ない場合は過半数代表者)の意見を聴く労働基準法第90条
周知変更後の就業規則を労働者に周知する労働基準法第106条
届出意見書を添付して、労働基準監督署長に遅滞なく届け出る労働基準法第89条、労働基準法施行規則第49条

届出の義務があるのは、常時10人以上の労働者を使用する事業場です。

周知の方法には、作業場の見やすい場所への掲示・備え付け、書面の交付、パソコンなどでいつでも見られる状態にしておく方法があります。

カギは「就業規則の施行日」

手続を進めるうえで意識したいのは、就業規則そのものの施行日(附則で定める、改定後の規定を適用し始める日)です。法律の施行日(12月25日)とは別のものとして考えてください。

  • 意見聴取と周知は、就業規則の施行日より前に終える
  • 施行日より前に周知すれば、施行日から適用される
  • 施行日より後に周知すると、周知した日からの適用になる

周知が遅れると、その分だけ適用の開始も遅れます。届出は、周知の後でも遅滞なく行えば足ります。

施行前から適用できるようにする

参考例の附則には、「この就業規則は、こども性暴力防止法の施行前であっても適用されるものとする」とあります。

就業規則の施行日を、12月25日より前に置ける設計です。こうしておけば、施行前に行う採用選考や、不適切な行為の禁止にも就業規則上の根拠ができます。準備ができた時点で、早めに適用を始めることができます。

12月25日からの逆算(目安)

残りの約8週間を、次のように逆算すると進めやすくなります。

時期やること
11月上旬対象業務従事者・不適切な行為の範囲を確定する
11月中旬条文案を作成する
11月下旬従事者へ説明し、過半数代表者を選出して意見を聴く
12月上旬就業規則の施行日より前に周知する
その後遅滞なく労働基準監督署へ届け出る

これは公的な目安ではなく、一般的な進め方の例です。最初の「範囲の確定」が遅れると、その後の工程がすべて後ろにずれます。

つまずきやすい点

過半数代表者の選び方

過半数代表者は、管理監督者ではない人の中から、就業規則の意見を聴く代表者を選ぶという目的を明らかにしたうえで、投票や挙手などの民主的な方法で選びます。会社が指名した人は、過半数代表者として認められません。

意見聴取は「同意」ではない

意見聴取で求められているのは、意見を聴くことです。同意を得ることまでは求められていません。反対意見が出ても、意見書を添付すれば届出はできます。

ただ、意見を聴く前に説明を尽くしておくと、後のトラブルを防ぎやすくなります。

不利益変更への配慮

今回の改定で加える懲戒事由や配置転換の規定は、すでに働いている従事者にとって不利益な変更にあたる可能性があります。労働契約法は、就業規則の変更で労働条件を不利益に変える場合、変更後の就業規則を周知し、その変更が合理的であることを求めています(第9条・第10条)。

法律で求められる措置への対応という変更の必要性はあるものの、既存の従事者には特に丁寧な説明が欠かせません。なぜ規定を加えるのか、どのような場合に適用されるのかを、説明会や書面で伝えておいてください。

届出と周知はどちらも欠かせない

届出と周知は、役割の違う手続です。届出は、労働基準監督署に対して果たす法律上の義務です。周知は、従事者に対する就業規則の効力にかかわります。労働基準監督署へ届け出ても、従事者に周知していなければ、その就業規則の効力が問題になります。逆に、周知していても届出をしていなければ、労働基準法上の義務を果たしていないことになります。どちらか一方で終わらせないでください。

常時10人未満の事業場

常時10人未満の事業場には、就業規則の作成・届出の義務はありません。ただ、就業規則を作るのであれば、従事者への周知は欠かせません。周知されていない就業規則は、従事者に対する効力が問題になるからです。意見聴取についても、従事者の理解を得るために行っておくことが望ましいでしょう。

まとめ

  • こども家庭庁の就業規則参考例は、対象業務従事者の範囲・禁止規定・確認手続の義務・試用期間の解約事由・懲戒事由・附則で構成されている
  • 意見聴取と周知は就業規則の施行日より前に終え、届出は遅滞なく行う
  • 施行日より前に周知すれば施行日から、後に周知すれば周知した日から適用される
  • 参考例の附則は、法律の施行前から適用できる設計になっている
  • 懲戒事由や配置転換の追加は、既存の従事者への丁寧な説明が欠かせない

内容が整っても、周知が終わらなければ適用は始まりません。範囲の確定から周知まで、今週から逆算して動き出してください。

参考資料