こども性暴力防止法の準備では、まず「誰が犯罪事実確認の対象になるのか」を決めなければなりません。保育士や教員は迷いませんが、送迎の運転手や事務職員、調理員、短期の非常勤となると判断に迷う事業所も多いはずです。こども家庭庁の資料とQ&Aをもとに、線引きの考え方と進め方を整理しました。
誰が犯罪事実確認の対象か
義務対象事業者(法律上は「学校設置者等」)で、犯罪事実確認の対象になる従事者を「教員等」といいます。教員等にあたるかどうかは、業務の実態が次の3要件を全て満たすかどうかで決まります。
| 要件 | 意味 |
|---|---|
| 支配性 | 指導などを通じて、こどもに対して強い立場に立つ |
| 継続性 | 業務の中で繰り返しこどもと接する |
| 閉鎖性 | 保護者などの目が届かない |
3つのうち1つでも欠ければ、教員等にはあたりません。
職種は2区分で整理されている
こども家庭庁の解説資料は、職種を次の2つに分けています。
(ア)職種全体が対象になる
校長・園長、教員・保育士・保育教諭・児童指導員などです。この職種に就いている人は、個別に判断するまでもなく対象になります。
(イ)職種の一部が対象になり得る
事務職員、スクールバスの運転手、学校用務員、学校医、医療的ケア看護職員などです。同じ職種でも、対象になる人とならない人がいます。どの人が対象になるかは、業務の実態を踏まえて事業者が判断し、特定します。
保育所などの調理員や嘱託医について、こども家庭庁の解説資料では記載を確認できませんでした。ただ、自治体の資料には、調理員・嘱託医を(イ)に挙げている例があります。
(イ)の判断は「職種名」ではなく「実際の業務」で
(イ)の職種は、職種名ではなく、その人が実際にどんな業務をしているかで判断します。3要件の全てを満たす場合は対象になります。
たとえば送迎の運転手であれば、次のような点を確認していきます。
- こどもと1対1で乗車する場面があるか
- 決まったこどもを日常的に送迎しているか
運転手が複数いる事業所なら、運転手ごとに業務の中身が違うこともあります。一人ずつ確認してください。
事務職員の閉鎖性
Q&Aでは、事務職員が本来業務ではない忘れ物対応などで、こどもと一対一になる状況が生じ得る場合の問が取り上げられています。回答は、業務として通常こどもと一対一となる可能性があるものであれば、閉鎖性の要件は満たすものと考えられる、というものです。
事務職員でも、日常の業務の流れでこどもと一対一になる場面があれば、閉鎖性を満たすと判断される可能性があります。
嘱託医の継続性
嘱託医が複数の学校を年に1回ずつ巡回する場合、訪問回数を合算して継続性を判断するのかという問もあります。回答は、対象となる事業所・施設が異なる場合(対象となるこどもも異なる場合に限る)には、合算して判断する必要はない、というものです。そのうえで、支配性・閉鎖性を含めて、業務の実態に応じて判断するよう求めています。
雇用形態は問わない
対象になるかどうかは、正社員かどうかではなく業務の実態で決まります。パート・アルバイト・非常勤であっても、3要件を満たせば対象です。
年に数回だけ従事する人
キャンプ教室などで、外部の人に年に複数回、1回は単日で指導を依頼している場合の問があります。Q&Aは、ガイドラインの「不定期であっても反復継続が見込まれる場合など」は継続性があるものとして判断する、という解釈を示しています。そのうえで、年間を通じて複数回従事する場合は対象に該当し得る、と答えています。
1回あたりの日数が短くても、繰り返し従事するなら継続性を満たし得るということです。
スポットワークなど従事期間が短い人
Q&Aは、対象となる職種には従事期間による例外はないとしています。スポットワークなど従事期間が短い人も対象です。
この場合も、原則として、業務に従事させる前に犯罪事実確認を行わなければなりません。急な欠員などのやむを得ない事情がある場合に限り、確認を終える前に従事させることが認められています。
さらに、事業者と従事者の間で、一定の期間内(最長6か月)に再びその事業者で対象業務に就く可能性がある旨の書面(意向確認書面)を取り交わしておく方法も示されています。この場合、いったん従事が終わったあとも、その期間内は犯罪事実確認記録等を保有できます。再び従事することになったときは、改めて確認をし直さなくても、確認を完了した者として従事させることができます。
短期の人材を繰り返し受け入れる事業所では、この意向確認書面の仕組みを検討しておくと、そのつど確認をやり直す手間を減らせます。
実務の進め方:名簿づくり
線引きは、全従事者の名簿をつくるところから始めると進めやすくなります。
- 全従事者を一覧にする(雇用形態を問わず、委託・ボランティアも含めて)
- (ア)と(イ)に振り分ける
- (イ)の人は、3要件を業務の実態で確認する
- 判断の理由を記録しておく
この名簿は、就業規則に定める「対象業務従事者の範囲」の土台になります。現職者の犯罪事実確認を3年以内にどう進めるかを計画するときにも使えます。
まとめ
- 犯罪事実確認の対象は、支配性・継続性・閉鎖性の3要件を全て満たす「教員等」
- 職種は(ア)職種全体が対象と、(イ)職種の一部が対象になり得る、の2区分
- (イ)の運転手・事務職員・調理員などは、職種名でなく実際の業務で判断する
- 雇用形態は問わない。年に数回の従事やスポットワークでも対象になり得る
- 全従事者の名簿をつくり、判断の理由を記録しておく
線引きに迷う職種ほど、なぜそう判断したのかを残しておいてください。後で説明を求められたときの根拠になります。
