障害者雇用促進法|納付金・調整金制度について解説

障害者雇用促進法|納付金・調整金制度について解説 労働社会保険諸法令の基礎知識
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障害者を雇用するには、職場環境の整備や採用コストなど、相応の負担がかかります。法定雇用率を達成している企業と、未達成のまま障害者雇用に取り組んでいない企業とでは、負担の重さに大きな差が生じます。この不公平を是正するために設けられているのが、障害者雇用納付金・調整金制度です。今回は、この制度の骨格を条文とともに整理します。

林 利恵

Rie HAYASHI, MPH, PhD
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博士(医学)
特定社会保険労務士
東豊社労士事務所 代表
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医学研究者から社労士へ転身
労働衛生の専門知識を活かし
・就業規則作成
・メンタルヘルス対策
・両立支援
を得意としています
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制度の考え方:事業主間の経済的負担の調整

障害者雇用納付金制度は、障害者雇用促進法第53条を中心とする制度で、事業主間の経済的負担を公平にすることを目的としています。仕組みは単純です。

  • 法定雇用率未達成の常用労働者100人超の事業主 → 納付金を徴収
  • 法定雇用率達成の常用労働者100人超の事業主 → 調整金を支給

徴収した納付金を財源として、達成企業への調整金や、中小企業向けの報奨金、各種の障害者雇用関係助成金の支給に充てる構造になっています。「未達成企業への罰金」と「達成企業へのご褒美」という単純な二項対立ではなく、障害者雇用に伴う経済的負担を、事業主全体で分かち合う仕組みとして設計されている点が重要です。

障害者雇用納付金(法第53条第1項、額の算定は第54条〜第56条)

常用労働者数が100人を超える事業主であって、法定雇用障害者数を下回っている場合、障害者雇用納付金を納付する義務を負います。

常用雇用労働者の総数が100人を超える事業主であって、法定雇用障害者数を下回っている場合には、「障害者雇用納付金」を徴収することとされています。

納付金の額は、次の計算式で算出します。

障害者雇用納付金の額=(法定雇用障害者数の年間合計-実際の雇用障害者数の年間合計)×50,000円

つまり、不足している障害者1人あたり、月額5万円が徴収されるということです。申告・納付は、毎年4月1日から5月15日までの間に、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)に対して行います。

障害者雇用調整金(法第50条第1項)

一方、常用労働者数が100人を超える事業主であって、法定雇用率を超えて障害者を雇用している事業主には、超過人数分に応じて障害者雇用調整金が支給されます。

  • 支給額:超過1人あたり月額29,000円
  • ただし、支給対象人数が年120人月を超える場合、その超過分については1人あたり月額23,000円に減額

「120人月」とは、月ごとの超過人数を1年間合計した単位です。たとえば毎月10人の超過を12か月続ければ、120人月に達します。これを超えた部分は減額後の単価が適用されます。大規模に障害者雇用を進める企業ほど、限界的な支給額が下がっていく設計です。

なお、特例子会社等の制度の適用を受けている親事業主については、調整金の額を親事業主・特例子会社・関係会社に分割して支給することができます(法50条第5項)。

納付金と調整金、金額は同額ではない

ここで押さえておきたいのは、納付金(不足1人あたり月5万円)と調整金(超過1人あたり月29,000円、120人月まで)の金額が一致していないという点です。

納付金調整金
対象常用労働者100人超・未達成事業主常用労働者100人超・達成事業主
金額(1人あたり月額)50,000円(不足分)29,000円(超過分、120人月まで)
根拠条文法第53条、第54条〜第56条法第50条

未達成企業が支払う金額と、達成企業が受け取る金額の差額は、報奨金の支給や、施設整備・雇用管理に関する各種助成金の財源など、制度の運営全体に充てられます。「集めた分をそのまま配る」という単純な収支の制度ではないということです。

「37.5人」と「100人」、2つの基準を混同しない

これまでのシリーズで扱ってきた「常用労働者37.5人以上」(2026年7月〜)は、雇用義務(法第43条)が発生する基準でした。今回の「常用労働者100人超」は、納付金・調整金(法第50条・第53条)が発生する、まったく別の基準です。

この2つの基準を重ねると、次のような3層構造になります。

常用労働者数雇用義務納付金・調整金
37.5人未満なしなし
37.5人〜100人ありなし
100人超ありあり

37.5人〜100人の事業主には雇用義務がありますが、未達成であっても金銭的なペナルティ(納付金)は課されません。この「義務はあるが金銭的な仕組みが及ばない」ゾーンについては、厚生労働省の研究会で、将来的に納付金の対象を100人以下にも拡大することが検討課題として挙がっています。今後この基準自体が動く可能性がある以上、37.5人〜100人規模の事業主には、現状の理解にとどまらない情報提供が有効です。

まとめ

  1. 障害者雇用納付金・調整金制度は、事業主間の経済的負担の公平化を目的とする制度(法第53条ほか)。
  2. 対象は常用労働者100人超の事業主のみ。未達成なら不足1人あたり月5万円の納付金(法53条・54〜56条)、達成なら超過1人あたり月29,000円(120人月超は23,000円)の調整金(法50条)。
  3. 雇用義務の基準(37.5人以上)と、納付金・調整金の基準(100人超)は別物。混同しないこと。
  4. 100人以下の事業主は納付金の対象外だが、後述する報奨金の対象にはなり得る。

自社が100人超か以下かによって、法定雇用率未達成のリスクの性質はまったく異なります。100人超であれば毎年の納付金額が具体的な経営コストとして発生し、100人以下であれば行政指導のプロセスが主なリスクになります。どちらに該当するかを正確に把握しておくことが、対応の優先順位を判断する出発点です。

障害者雇用納付金|独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構