障害者法定雇用率が2.7%に|2026年7月1日施行、義務の対象は37.5人以上へ

障害者法定雇用率が2.7%に|2026年7月1日施行、義務の対象は37.5人以上へ 労働社会保険諸法令の基礎知識
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2026年7月1日、民間企業の障害者法定雇用率が2.5%から2.7%に引き上げられました。同時に、雇用義務が生じる企業の範囲が「常用労働者40.0人以上」から「37.5人以上」へと広がっています。これまで「うちは40人未満だから関係ない」と整理していた企業が、今月から義務の対象に入りました。制度の根拠条文から、なぜ「37.5人」という半端な数字になるのかまで、順に確認します。

林 利恵

Rie HAYASHI, MPH, PhD
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博士(医学)
特定社会保険労務士
東豊社労士事務所 代表
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医学研究者から社労士へ転身
労働衛生の専門知識を活かし
・就業規則作成
・メンタルヘルス対策
・両立支援
を得意としています
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一般事業主の雇用義務(法第43条第1項)

障害者雇用率制度の根拠は、障害者雇用促進法第43条第1項です。

事業主(常時雇用する労働者(以下単に「労働者」という。)を雇用する事業主をいい、国及び地方公共団体を除く。次章及び第八十一条の二を除き、以下同じ。)は、厚生労働省令で定める雇用関係の変動がある場合には、その雇用する対象障害者である労働者の数が、その雇用する労働者の数に障害者雇用率を乗じて得た数(その数に一人未満の端数があるときは、その端数は、切り捨てる。第四十六条第一項において「法定雇用障害者数」という。)以上であるようにしなければならない。

要点は3つです。

  • 法定雇用障害者数=労働者数×障害者雇用率
  • 1人未満の端数は切り捨てる
  • 国及び地方公共団体は、この条文の「事業主」から除かれている(公務部門は法第38条で別建て)

なお、ここでいう対象障害者とは、身体障害者、知的障害者又は精神障害者(精神障害者保健福祉手帳の交付を受けているものに限る)を指します(法第37条第2項)。手帳を持たない障害者は、差別禁止・合理的配慮の対象にはなりますが、雇用率にはカウントできません。

「雇用関係の変動がある場合には」という条文構造

法第43条第1項を文字どおり読むと、義務がかかるのは「厚生労働省令で定める雇用関係の変動がある場合」です。つまり条文の建付けとしては、すでに雇っている状態を常時ジャッジする規定ではなく、採用・離職といった変動の局面で、法定雇用障害者数以上になるようにせよという組み立てになっています。

もっとも実務上は、障害者雇用状況報告(法第43条第7項)、雇入れ計画作成命令(法第46条第1項)、障害者雇用納付金(法第53条)が状態をチェックする役割を担うため、「変動がなければ放置してよい」という結論にはなりません。条文の書きぶりと実際の運用がずれている典型例です。試験対策としては条文どおりに、実務としては状態管理として押さえるのが正解です。

障害者雇用率はどう決まるのか(法第43条第2項)

2 前項の障害者雇用率は、労働者(労働の意思及び能力を有するにもかかわらず、安定した職業に就くことができない状態にある者を含む。第五十四条第三項において同じ。)の総数に対する対象障害者である労働者(労働の意思及び能力を有するにもかかわらず、安定した職業に就くことができない状態にある対象障害者を含む。第五十四条第三項において同じ。)の総数の割合を基準として設定するものとし、少なくとも五年ごとに、当該割合の推移を勘案して政令で定める。

ここには2つの重要な設計思想が埋め込まれています。

その1|分母・分子とも失業者を含む。 「労働の意思及び能力を有するにもかかわらず、安定した職業に就くことができない状態にある者」とは失業者のことです。就業している人だけで比率を取るのではなく、働きたいのに就けていない障害者も分子に入るのが本法の考え方です。だからこそ、障害者雇用が進めば進むほど率が上がるのではなく、「働きたい障害者がどれだけいるか」が率を押し上げます。率が上がり続けている構造的な理由がここにあります。

その2|少なくとも5年ごとに、政令で定める。 委任先は政令であって省令ではありません。試験では「3年ごと」「厚生労働省令で定める」と差し替えた誤り肢が定番です。

2026年7月1日からの法定雇用率

時期民間企業国・地方公共団体都道府県等の教育委員会対象事業主の範囲
〜令和5年度2.3%2.6%2.5%43.5人以上
令和6年4月〜2.5%2.8%2.7%40.0人以上
令和8年7月〜2.7%3.0%2.9%37.5人以上

根拠条文は次のとおりです。

  • 民間企業(一般事業主)2.7% — 令第9条(法第43条第2項に規定する障害者雇用率は、百分の二・七とする)
  • 国、地方公共団体 3.0% — 令第2条本文(法第38条第1項の政令で定める率は、百分の三とする)
  • 都道府県等の教育委員会 2.9% — 令第2条ただし書

なぜ「37.5人以上」という半端な数字なのか

1÷0.027=37.03…ですから、素直に考えれば「37.04人以上」になりそうです。しかし実際の基準は37.5人です。

理由は、常用労働者数のカウントが0.5刻みでしか動かないからです。週の所定労働時間が20時間以上30時間未満の短時間労働者は0.5人と数えるため、常用労働者数は37.0人、37.5人、38.0人…としか刻めません。

  • 37.0人 × 2.7% = 0.999 → 端数切捨てで 0人(義務なし)
  • 37.5人 × 2.7% = 1.0125 → 1人(義務あり)

つまり、法定雇用障害者数が1人以上になる最小の常用労働者数が37.5人だということです。

過去の基準も同じ計算で説明できます。

法定雇用率1÷雇用率対象事業主の範囲
2.3%43.47…43.5人以上
2.5%40.0040.0人以上
2.7%37.03…37.5人以上

2.5%のときだけ「40.0人」ときれいな数字になったのは、1÷0.025がちょうど40.0だったからです。

法定雇用障害者数の早見(2.7%版)

常用労働者数×2.7%法定雇用障害者数(切捨て)
37.0人0.9990人(義務なし)
37.5人1.01251人
100人2.72人
200人5.45人
500人13.513人
1,000人27.027人

端数が切り捨てられるため、100人企業は実質2.0%を満たせば足ります。この端数の余裕は、企業規模が小さいほど相対的に大きくなります。逆に1,000人規模では端数が生じず、27.0人ぴったりが要求されます。

現在地|令和7年障害者雇用状況の集計結果

厚生労働省が2025年12月に公表した令和7年(2025年6月1日現在)の集計結果は、次のとおりです。

  • 民間企業の雇用障害者数 70万4,610.0人(前年差+2万7,148.5人、前年比+4.0%)— 過去最高を更新
  • 実雇用率 2.41%(前年同率。小数点以下第3位で比較すると前年より上昇)
  • 法定雇用率達成企業の割合 46.0%(前年同率)

雇用障害者数は過去最高を更新し続けているにもかかわらず、実雇用率は当時の法定雇用率2.5%に届いていません。達成企業は半数を割り込んだままです。分子(雇用障害者数)が増えても、法定雇用率の引上げと除外率の引下げによって分母(雇用義務数)がそれ以上に増えているためです。

2.7%になれば、この差はさらに開きます。

障害種別の内訳(令和7年6月1日現在)

区分人数対前年比
身体障害者373,914.5人+1.3%
知的障害者162,153.5人+2.8%
精神障害者168,542.0人+11.8%

伸びの大半を精神障害者が牽引しており、知的障害者を人数で上回りました。2.7%への対応も、実質的には精神障害者の雇用をどう設計するかの問題になります。合理的配慮・職場定着・手帳の有効期限管理といった論点が、雇用率の達成そのものに直結します。

公務部門も同様

区分実雇用率前年
3.04%3.07%
都道府県3.03%3.05%
市町村2.69%2.75%
教育委員会2.31%2.43%
独立行政法人など2.67%2.85%

いずれも前年より低下し、市町村・教育委員会・独立行政法人は当時の法定雇用率(2.8%)を下回っています。2026年7月からの3.0%・2.9%は、公務部門にとってもかなり厳しい水準です。

見落としやすい点|ロクイチ報告との時差

障害者雇用状況報告(いわゆるロクイチ報告)は、毎年6月1日時点の状況を報告するものです。今回の引上げは7月1日施行のため、次のようなずれが生じます。

  • 2026年6月1日時点の雇用状況 → 現行の2.5%で判定
  • 2.7%の新基準で報告するのは → 2027年6月1日時点分から

報告ベースでは約1年間、旧基準での評価が続くことになります。これは移行・準備期間として機能しますが、義務そのものは2026年7月1日に発生済みです。「報告が来ないから大丈夫」ではありません。障害者の採用には相応の期間がかかりますので、この1年をどう使うかが分かれ目になります。

今後の動向|納付金の対象拡大が検討課題に

2026年2月時点で、厚生労働省の研究会において、障害者雇用納付金の対象を常用労働者100人以下の事業主にも拡大することが検討課題として挙げられています。

現在の制度は、37.5人以上の企業に雇用義務がかかる一方、納付金(不足1人あたり月5万円)の徴収対象は常用労働者100人超の企業に限られています。つまり37.5人〜100人の企業には「義務はあるが金銭的ペナルティはない」ゾーンが存在します。

このゾーンが縮小する可能性がある以上、今回新たに義務の対象となった37.5人〜100人規模の企業こそ、早めに手を打っておく価値があります。

まとめ

  1. 法定雇用障害者数=労働者数×障害者雇用率。1人未満の端数は切り捨てる(法第43条第1項)。
  2. 障害者雇用率は、失業者を含む労働者総数に対する対象障害者の割合を基準に、少なくとも5年ごとに政令で定める(法第43条第2項)。委任先は政令であって省令ではない。
  3. 2026年7月1日から、民間企業2.7%(令第9条)、国・地方公共団体3.0%、都道府県等の教育委員会2.9%(令第2条)。
  4. 対象事業主は37.5人以上。常用労働者数が0.5刻みでしか動かないため、法定雇用障害者数が1人になる最小値が37.5人になる。
  5. 令和7年の実雇用率は2.41%、達成企業割合は46.0%。2.5%にも届いていない現状で、2.7%が始まった。

まずやるべきことは、自社の常用労働者数を短時間労働者0.5カウントを含めて数え直し、法定雇用障害者数を再計算することです。40人未満だからと対象外に整理していた企業ほど、この作業が抜けています。

参考資料