令和8年12月25日、こども性暴力防止法が施行されます。学校・保育所・放課後等デイサービスなどの義務対象事業者は、施行日から法律上の措置を行わなければなりません。施行まで残り約2か月。こども家庭庁が公表した「義務事業者用準備ガイド」をもとに、施行までに何を、どの順番で進めるべきかを整理しました。
施行までの「最低限の準備」は4区分
こども家庭庁は、義務対象事業者向けに「こども性暴力防止法施行(12月25日)に向けた義務事業者用準備ガイド」を公表しています。現在の最新版はVer.1.1です。
このガイドには、施行までに最低限対応しなければならない事項が、次の4つの区分で整理されています。
| 区分 | 主な対応事項 |
|---|---|
| ①制度についての従事者等への周知 | 犯罪事実確認の対象になること、施行前に研修受講が必要になることなどを従事者に伝える |
| ②犯罪事実確認・防止措置関係 | 不適切な行為の範囲の検討・確定/対象業務従事者の範囲の検討・確定/就業規則等の見直し/採用募集要項等の見直し、採用過程での性犯罪前科の事前確認 |
| ③安全確保措置の実施のための体制整備 | 報告ルール・対応ルールの策定・周知/相談体制の整備(相談窓口の設置・周知等)/従事者向け研修の計画策定・実施 |
| ④情報管理措置 | 情報管理規程の作成、規程に沿った体制の整備 |
「不適切な行為」とは、それだけでは性暴力にあたらなくても、性暴力につながるおそれのある行為のことです。何を不適切な行為とするかは、ガイドラインの例を参考に、各事業者が従事者と話し合いながら決めます。
たとえば、児童等と私的な連絡先(SNSアカウント等)を交換して私的なやり取りを行うことや、不必要に児童等と密室で二人きりになろうとすることなどが、ガイドラインで例として挙げられています。何を不適切な行為とするかは、こうした例を参考に、各事業者が従事者と話し合いながら決めます。
なお、7月公表版からVer.1.1への改定は、ガイドラインの参照ページの修正、相談窓口の周知広報資料の修正、事業者の取組事例の追加が中心です。求められる準備の中身が大きく変わったわけではありません。
時間がかかるものから着手する
ガイド自身も「一定の時間を要する事項もあり、早めに準備を進めてください」と書いています。4区分を上から順に片付けるのではなく、完了までに時間がかかるものから手をつけるのが実務的です。
なかでも、先に動き出したいのは次の3つです。
就業規則の見直し
就業規則は、いきなり条文を書くことができません。先に「不適切な行為の範囲」と「対象業務従事者の範囲」を決める必要があるからです。対象業務従事者とは、犯罪事実確認の対象になる従事者のことです。教員や保育士は当然に対象になり、事務職員や送迎バスの運転手などは、支配性・継続性・閉鎖性の3要件に照らして個別に判断します。
範囲が決まったら条文にし、そのあとに労働基準法上の手続が続きます。
- 過半数労働組合または過半数代表者の意見を聴く(労働基準法第90条)
- 労働基準監督署に届け出る(常時10人以上の労働者を使用する事業場。労働基準法第89条)
- 従事者に周知する
範囲の検討から周知までを12月25日までに終えるには、逆算すると残された時間は多くありません。
募集要項の見直し
ガイドは、施行前に採用募集を行う段階から募集要項を見直すよう求めています。性犯罪前科を偽っていた人の内定を取り消すには、採用過程で前科がないことを書面などで確認し、内定取消事由をあらかじめ示しておく必要があるからです。
いま募集中の求人や、これから出す求人票も見直しの対象です。
研修
研修は、対象となる全ての従事者に受けさせなければなりません。座学と演習を組み合わせる必要があります。こども家庭庁は、標準動画・要点動画・演習資料・確認テストなどの教材を公開しています。
施行後に新たにこどもと接する業務に就く人は、業務に就く前に研修を受けなければなりません。人数が多い事業所ほど、受講の計画を早めに立てておく必要があります。
事前登録は済んでいますか
法律に基づく手続は、こども家庭庁の「こまもろうシステム」で行います。義務対象事業者は施行日からすぐに手続ができるよう、次の準備が求められていました。
- GビズID(行政手続に使う共通の認証ID)の取得:令和8年4月末頃まで
- こども家庭庁への事業者情報の事前登録:令和8年4月〜7月の指定期間
まだ済んでいない、または済んでいるか分からない場合は、早急に所轄庁へ確認してください。
施行後に続くこと
施行日で準備が終わるわけではありません。施行後も次の対応が続きます。
- 現職者の性犯罪前科の確認は、施行後3年以内に行う(戸籍等の登録などの手続も必要)
- 取組状況を、年1回こども家庭庁へ定期報告する
取組状況は、各業法に基づく指導監査でも確認されます。措置が適切に行われていない場合には、違反事業者の公表、報告徴収、是正命令、認可の取消し等が行われることもあります。
まとめ
- 義務事業者用準備ガイド(Ver.1.1)は、施行までの最低限の準備を4区分で示している
- 就業規則は「範囲の確定→条文化→意見聴取・届出・周知」と工程が長く、最優先で着手したい
- 募集要項は施行前の募集段階から見直し、研修は全従事者の受講計画を早めに立てる
- GビズIDの取得と事業者情報の事前登録が未了・不明なら、すぐに所轄庁へ確認する
- 現職者の確認(3年以内)や年1回の定期報告など、施行後も対応は続く
「最低限」の準備は、ゴールではなくスタートラインです。残りの2か月は、時間のかかるものから逆算して進めてください。
