従業員が101人以上いる会社は、令和8年4月1日から「男女間賃金差異」と「女性管理職比率」の公表義務があります。何をいつまでに公表するのかを整理します。
女性活躍推進法の改正5つ
改正法(令和7年法律第63号)による女性活躍推進法の改正は、大きく5つに分かれます。
| # | 改正内容 | 条文 | 施行日 |
|---|---|---|---|
| ① | 基本原則に「女性の健康上の特性」を追加 | 第2条第1項 | 令和7年6月11日(公布日) |
| ② | 基本方針に、就業環境を害する言動に起因する問題の解決を促進するための措置に関する事項を追加 | 第5条第2項第3号 | 令和7年6月11日(公布日) |
| ③ | 有効期限を10年延長し、令和18年3月31日まで | 附則第2条第1項 | 令和7年6月11日(公布日) |
| ④ | 情報公表の義務の適用拡大等 | 第20条第1項・第2項、第21条 | 令和8年4月1日 |
| ⑤ | 特例認定一般事業主(プラチナえるぼし)の認定基準に、求職者等セクハラ措置の情報公表を追加 | 第12条 | 令和8年10月1日 |
女性活躍推進法は、もともと10年間の期限つきの法律でした。令和8年3月31日で切れる予定だったのです。それが③により10年延ばされました。
会社が対応する必要があるのは④と⑤です。このうち④はもう始まっています。
情報公表の必須項目が増えました
まずは、企業規模別の改正前と改正後の比較をします。
| 企業規模 | 改正前 | 改正後 |
|---|---|---|
| 301人以上 | 男女間賃金差異+2項目以上 | 男女間賃金差異+女性管理職比率+2項目以上(計4項目以上) |
| 101〜300人 | 1項目以上 | 男女間賃金差異+女性管理職比率+1項目以上(計3項目以上) |
| 100人以下 | 努力義務 | 努力義務 |
ここでいう人数は「常時雇用する労働者の数」です。
男女間賃金差異の公表は、301人以上の会社にはすでに義務となっていますが、今回の改正でさらに101人以上に広がりました。一方、女性管理職比率の追加は今回が初めてです。
選ぶ項目は2つの区分から
必須項目以外は、次の14項目から選びます。
| 女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供 | 職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備 |
|---|---|
| 採用した労働者に占める女性労働者の割合 | 男女の平均継続勤務年数の差異 |
| 男女別の採用における競争倍率 | 10事業年度前及びその前後の事業年度に採用された労働者の男女別の継続雇用割合 |
| 労働者に占める女性労働者の割合 | 男女別の育児休業取得率 |
| 係長級にある者に占める女性労働者の割合 | 労働者の一月当たりの平均残業時間 |
| 役員に占める女性の割合 | 雇用管理区分ごとの労働者の一月当たりの平均残業時間 |
| 男女別の職種又は雇用形態の転換実績 | 有給休暇取得率 |
| 男女別の再雇用又は中途採用の実績 | 雇用管理区分ごとの有給休暇取得率 |
選び方は規模によって違います。
301人以上の会社は、左の区分から1項目以上、右の区分から1項目以上を選びます。つまり両方から選ぶ必要があります。
101〜300人の会社は、14項目のうちどれか1項目以上を選べば足ります。どちらの区分からでもかまいません。
いつまでに公表するのか
ここがいちばん実務で気になるところです。
初回の公表は、次のルールで決まります。改正法の施行後に最初に終了する事業年度の実績を、その次の事業年度が始まってからおおむね3か月以内に公表します。
決算期ごとに見てみましょう。
| 事業年度の終わり | 初回公表の目安 |
|---|---|
| 令和8年4月末 | 令和8年7月末頃まで |
| 令和8年12月末 | 令和9年3月末頃まで |
| 令和9年3月末 | 令和9年6月末頃まで |
その後も、おおむね1年に1回以上、最新の数値を公表します。公表した日を明らかにしておく必要もあります。
数値の出し方
男女間賃金差異
男性労働者の賃金の平均に対して、女性労働者の賃金の平均がどれくらいかを割合(%)で示します。
区分は3つです。「全労働者」「正規雇用労働者」「非正規雇用労働者」に分けて公表します。
数値だけでなく、前提も付け加えます。対象期間はいつか。対象にした労働者の範囲はどこまでか。「賃金」に何を含めて何を除いたか。こうした点を書き添えます。
女性管理職比率
「管理職」の意味は、従来から変わっていません。課長級と、課長級より上位の役職(役員は除く)の合計です。
課長級とは、次のどちらかに当てはまる人をいいます。
- 事業所で通常「課長」と呼ばれている人で、2係以上の組織の長、または構成員が10人以上(課長を含む)の組織の長
- 同じ事業所で、呼び方や構成員に関係なく、職務の内容と責任の程度が課長級に相当する人(ただし一番下の職階ではないこと)
たとえば「課長代理」や「課長補佐」は、一般的に課長級には該当しません。役職名だけで判断しないよう注意してください。
なお、女性管理職比率は公表時点で得られる最新のものである必要があります。古くても、公表を行う事業年度の前事業年度時点の情報でなければなりません。
どこで公表するのか
厚生労働省が運営する「女性の活躍推進企業データベース」が最も適切とされています。自社のホームページに載せることも認められています。
ここで注意点がひとつあります。
有価証券報告書だけに載せても、女性活躍推進法の義務を果たしたことにはなりません。求職者から見て、どこに情報があるのかがわかるように公表する必要があるからです。
えるぼし認定も変わりました
情報公表とあわせて、認定制度も見直されています。こちらは法律ではなく、省令と指針の改正によるものです(令和7年12月23日公布・告示)。
えるぼし認定(1段階目)の基準の見直し
えるぼし認定の1段階目には、「基準を満たさない項目について2年以上連続して実績が改善していること」という要件がありました。
今回、これに新しい選択肢が加わりました。3つの事業年度の平均値を3組つくって比べる方法です。
- A:直近の事業年度までの連続する3事業年度の平均値
- B:その前の事業年度までの連続する3事業年度の平均値
- C:そのさらに前までの連続する3事業年度の平均値
このA・B・Cが連続して改善していれば(A>B>C)、基準を満たします。従来の「2年以上連続して改善」でも引き続き認められます。
年ごとの数字が上下してしまう会社にとっては、挑戦しやすくなりました。
えるぼしプラスの創設
女性の健康支援に取り組む会社を認定する制度が新しくできました。「えるぼしプラス」と「プラチナえるぼしプラス」です。令和8年4月1日から申請できます。
追加された基準は4つです。えるぼし1段階目から3段階目、プラチナえるぼしのすべてで共通します。
- 女性の健康上の特性に配慮した休暇制度を設けていること。あわせて、半日単位・時間単位の年次有給休暇、所定外労働の制限、時差出勤、フレックスタイム制、短時間勤務、在宅労働等のいずれかの制度を設けていること
- 女性の健康上の特性への配慮に関する方針を示すこと。1の制度の内容とあわせて労働者に周知する取組を行っていること
- 女性の健康上の特性への配慮に関する研修など、労働者の理解を進める取組を行っていること
- 担当者を選任して相談に応じさせること。その措置を労働者に周知していること
令和8年10月1日からの変更
プラチナえるぼしの認定基準に、ひとつ項目が加わります。求職者等に対するセクシュアルハラスメント防止の措置の内容を「女性の活躍推進企業データベース」に公表していることです。
これは同じ改正法による均等法の改正と連動しています。求職者等セクハラ対策の義務化が令和8年10月1日からだからです。
プラチナえるぼしを持っている会社、これから申請する会社は、10月に向けた準備が必要になります。
まとめ
- 女性活躍推進法の有効期限は10年延び、令和18年3月31日までになりました
- 令和8年4月1日から、101人以上の会社は「男女間賃金差異」と「女性管理職比率」の公表が義務になりました
- 301人以上は計4項目以上、101〜300人は計3項目以上の公表が必要です
- 初回は、施行後に最初に終了する事業年度の実績を、次の事業年度の開始後おおむね3か月以内に公表します
- 有価証券報告書だけの公表では義務を果たしたことになりません
- えるぼし認定の基準が見直され、「えるぼしプラス」が新しくできました
- 令和8年10月1日から、プラチナえるぼしの認定基準に求職者等セクハラ措置の公表が加わります
まずは自社の決算期を確認してください。そこから初回の公表期限が決まります。数値の集計には時間がかかります。早めに動くことをおすすめします。
