放射線を扱う現場では、複数の法令が同時に適用されます。なかでも電離放射線障害防止規則(電離則)とRI規制法(放射性同位元素等の規制に関する法律)は混同されやすい関係です。
この記事では、両法令の違いと、RI取扱現場での法令の重なりについて解説します。
2つの法律は「目的」が違う
電離則は労働安全衛生法体系の省令で、厚生労働省が所管します。目的は、労働者を放射線障害から守ること(働く人の保護)です。
一方、RI規制法は原子力規制委員会が所管します。目的は、放射線障害の防止に加え、特定放射性同位元素の防護(公共の安全確保)です。2019年に「放射線障害防止法」から現在の名称に変更されました。
保護対象が違う
電離則が守るのは放射線業務従事者(労働者)です。
これに対しRI規制法は、従事者に限らず一般公衆・環境も視野に入れ、線源・施設そのものを規制します(許可・届出・運搬・廃棄)。
規制アプローチが違う
電離則は、被ばく線量限度・測定・特殊健康診断・記録の30年保存など、「人の被ばく管理」が中心です。
RI規制法は、使用許可・届出・施設基準・数量管理など、「線源・施設の管理」が中心です。
管理する人も違う
電離則ではエックス線作業主任者等が労働者保護の観点から作業を指揮します。
RI規制法では放射線取扱主任者(第1〜3種免状)が施設全体の安全管理を統括します。
複数の法令が重なる場合は「厳しい方」に合わせる
同じ施設に複数の法令が適用される場合、規制の厳しい法令に合わせて運用するのが実務です。
たとえば放射線業務従事者の健康診断の頻度は、電離則(第56条)が6月以内ごとに1回、RI規制法(施行規則第22条)が1年を超えない期間ごととされています。
両法令が適用される施設では、より頻度の高い電離則(6月ごと)に合わせて実施するのが実務上の対応です。
健康診断記録の管理(補足)
RI法と電離則の健康診断は、共通の個人票で管理することができ、分ける必要はありません。
保存については、電離則は30年保存です。一方RI法は保存期間の上限年数の定めはなく、5年以上保存した記録等は、指定機関(公益財団法人放射線影響協会の中央登録センター)に引き渡せば、以後の保存義務を免れます(RI法施行規則第22条第2項第3号)。
むすび
RIを取り扱う事業場では、「線源・施設・労働者=RI規制法」「労働者=電離則」と切り分けて整理することが、コンプライアンスの出発点になります。
労働者の管理で基準が重なる場面では厳しい方に合わせるのが原則であり、健康診断の頻度はその典型例です。
