労働者派遣法は、昭和60年の制定以来、時代の要請に応じて大きく方針を変えてきました。
その歴史は「規制緩和(自由化)」から「派遣労働者の保護・待遇改善」への転換の歴史です。
この記事では、主な改正の流れを時系列で解説します。
昭和60年(1985年)制定・昭和61年施行
それまで職業安定法により労働者供給事業として禁止されていた労働者派遣を、例外的に認める法律として制定されました。
正社員の雇用代替を防ぐため、専門性の高い13業務に限定してスタートし、施行後直ちに3業務が追加され16業務となりました。
平成8年(1996年)対象業務の拡大
適用対象業務が16業務から26業務へ拡大されました。
専門的知識等を必要とする業務を中心とした拡大です。
平成11年(1999年)原則自由化
対象業務を限定列挙する方式から、禁止業務以外は原則自由とする方式(ネガティブリスト化)へ転換しました。
建設・港湾運送・警備・医療・物の製造を禁止業務とし、それ以外を原則自由化しています。
ただし、新たに対象となった業務の派遣受入期間は1年に制限されました。
あわせて派遣労働者の直接雇用の努力義務が創設されました。
平成15年(2003年)製造業務の解禁
禁止されていた物の製造業務への派遣が解禁されました。あわせて26業務以外の業務の派遣受入期間が1年から最長3年に延長されました。また、派遣労働者への直接雇用の申込義務が創設されました。
平成24年(2012年)保護への転換
リーマンショック後の「派遣切り」を受け、労働者保護を前面に出した改正が行われました。
- 日雇派遣(日々または30日以内)の原則禁止
- グループ企業内派遣の8割規制
- 離職後1年以内の労働者を派遣労働者として受け入れることの禁止
- マージン率等の情報公開の義務化
- 労働契約申込みみなし制度の創設(施行は平成27年10月)
この改正で、法律の正式名称に「派遣労働者の保護」が明記されました。
平成27年(2015年)期間制限の一新
専門26業務の区分を廃止し、業務にかかわらず一律の期間制限を導入しました。
- 個人単位の期間制限:同一の派遣労働者を同一の組織単位(課等)で受け入れるのは3年が上限
- 事業所単位の期間制限:同一事業所での受入れは原則3年(過半数労働組合等への意見聴取で延長可能)
- 許可制への一本化(特定労働者派遣事業の届出制を廃止)
- 派遣元へのキャリアアップ措置・雇用安定措置の義務付け
平成30年(2018年)改正・2020年4月施行 同一労働同一賃金
働き方改革関連法の一環として、派遣労働者の不合理な待遇差を是正する規定が整備されました。派遣元は次のいずれかの方式で待遇を確保します。
- 派遣先均等・均衡方式
- 労使協定方式(実務上はこちらが多数)
あわせて、待遇に関する説明義務の強化や、行政ADR(裁判外紛争解決手続)の整備が行われました。
むすび
労働者派遣法の歴史は、専門業務に限定した「限定的容認」から、製造業解禁に至る「規制緩和」、そしてリーマンショック以降の「保護・待遇改善」へと、社会情勢を映しながら大きく方針転換してきました。
特に「派遣労働者の保護」が法目的に明記された平成24年改正と、同一労働同一賃金を導入した平成30年改正(2020年施行)は、現在の実務にも直結する重要な転換点です。
