外国人を採用する際、在留資格の確認は事業主の重要な義務です。
しかし、「いつ」「どのように」確認すべきかについては、法令や行政資料の間で表現が異なる部分があります。この記事では、関係法令の条文に基づいて整理します。
事業主に課される在留資格確認の義務
外国人労働者の雇用管理について、労働施策総合推進法第7条に基づき「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針」(平成19年告示第276号、以下「指針」)が定められています。
指針の第四の一の2「採用」では、次のように規定されています。
事業主は、外国人労働者を採用するに当たっては、第五に定める方法等を通じ、あらかじめ、当該外国人が、採用後に従事すべき業務について、在留資格上、従事することが認められる者であることを確認することとし、従事することが認められない者については、採用してはならないこと。
「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針」(平成19年告示第276号)
つまり、事業主には「あらかじめ」在留資格上の就労可否を確認する義務があります。この確認を怠り、就労資格のない外国人を雇用した場合、不法就労助長罪(出入国管理及び難民認定法第73条の2、3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金またはこれを併科)に問われるリスクがあります。
確認の方法と時期
指針が参照する「第五」は「外国人労働者の雇用状況の届出」に関する規定です。第五では、外国人労働者を新たに雇い入れた場合または離職した場合に、在留カードの提示を求めて届出事項を確認する方法が定められています。
第五 外国人労働者の雇用状況の届出 二 確認の方法
「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針」(平成19年告示第276号)
- イ:ロからニまでに該当する者以外の外国人労働者について
当該外国人労働者の在留カード(在留カードを所持しない者にあっては、旅券又は在留資格証明書)の提示を求め、届け出るべき事項を確認する方法- ロ:資格外活動の許可を受けて就労する者について
当該外国人労働者の在留カード(在留カードを所持しない者にあっては、旅券又は在留資格証明書(当該外国人労働者が資格外活動の許可を受けている旨が記載されていない場合には、資格外活動許可書又は就労資格証明書を含む。))の提示を求め、届け出るべき事項を確認する方法- ハ:特定技能の在留資格をもって在留する者について
当該外国人労働者の在留カード及び特定産業分野を記載した指定書の提示を求め、届け出るべき事項を確認する方法- ニ:特定活動の在留資格をもって在留する者について
当該外国人労働者の在留カード(在留カードを所持しない者にあっては、旅券又は在留資格証明書)及び法務大臣が当該外国人について特に指定する活動を記載した指定書の提示を求め、届け出るべき事項を確認する方法
ここで注目すべきは、指針第四の一の2が「第五に定める方法等」と規定している点です。「等」が付されていることから、在留カード等の提示による確認に限定されず、それ以外の方法も含まれると解されます。
また、第五はあくまで雇入れ時・離職時のハローワークへの届出義務に関する規定であり、採用選考段階の手続きを直接規律するものではありません。

在留カード等読み取りアプリケーション サポートページ|出入国在留管理庁
公正採用選考との関係
在留資格の確認方法を検討する際には、公正採用選考に関する法令上の要請も考慮する必要があります。
職業安定法第3条は、人種、国籍等を理由とする差別的取扱いを禁止しています。
また、職業安定法第5条の5第1項は、求人者等が求職者の個人情報を収集・保管・使用するにあたり、「その業務の目的の達成に必要な範囲内で」「当該目的を明らかにして」行わなければならないと規定しています。ただし、「本人の同意がある場合その他正当な事由がある場合は、この限りでない」とされています。
一方、厚生労働省のリーフレット「外国人雇用はルールを守って適正に(令和7年6月版)」のQ&Aでは、面接時に「国籍」等の質問は行わないこと、在留資格等の確認は口頭での質問や書面での自己申告など在留カードの国籍欄を直接確認する以外の方法で行い、採用が決まり次第、在留カード等の提示を求めるようにすることが案内されています。
Q 外国人を募集したい場合に、どのような点に気をつければ良いでしょうか?
A 求人の募集の際に、外国人のみを対象とすることや、外国人が応募できないという求人を出すことはできません。国籍を条件とするのではなく、スキルや能力を条件として求人を出すようにし、公正採用選考と人権上の配慮からも、面接時に「国籍」等の質問は行わないでください。また、在留資格、在留期間、資格外活動許可の有無などの確認は、口頭での質問で回答を得る・書面で本人から自己申告をしてもらうなど、在留カード等の国籍欄を直接確認する以外の方法で行い、採用が決まり次第、在留カード等の提示を求めるようにしてください。
外国人雇用はルールを守って適正に(令和7年6月版)|厚生労働省 太字・赤字は筆者による
このリーフレットは行政の周知資料であり、告示として定められた指針とは法的性質が異なります。リーフレットの趣旨は、面接段階で在留カードの国籍欄を直接確認することが、実質的に国籍による選別につながるリスクへの配慮にあると考えられます。
実務上の整理
以上の法令・指針・リーフレットの関係を踏まえ、実務上は次のように整理することが考えられます。
採用選考段階では、口頭での質問や応募書類への記載により、在留資格や在留期間を確認する方法があります。その際、「国籍」を問うのではなく、「募集職種に従事可能な在留資格をお持ちですか」といった聞き方が望ましいといえます。
採用決定後・雇入れ時には、指針第五に基づき在留カードの原本を確認し、ハローワークへの雇用状況届出に備えます。
いずれの段階においても、個人情報保護法および職業安定法第5条の5に基づき、収集目的を明示し、目的の範囲内で適切に管理することが求められます。また、確認により得た国籍情報を採用可否の判断基準として用いることは、職業安定法第3条の均等待遇に反するため、厳に慎むべきです。
むすび
外国人の在留資格確認は、不法就労防止のために事業主に課された法的義務です。
一方で、公正採用選考の趣旨を踏まえ、確認の時期と方法には配慮が必要です。
指針が求める「あらかじめの確認」と公正採用選考との両立は、個別の事業所の管理体制や採用フローに応じた具体的な運用設計が求められます。
自社の採用手続きにおける在留資格確認の方法についてお悩みの際は、社会保険労務士等の専門家にご相談ください。
