労働安全衛生法の健康診断②(特殊健康診断・事後措置)|有害業務従事者への健診と事後措置を解説

労働安全衛生法の健康診断②(特殊健康診断・事後措置)|有害業務従事者への健診と事後措置を解説 労働社会保険諸法令の基礎知識

前回の一般健康診断に続き、この記事では特殊健康診断と健康診断の事後措置について解説します。特殊健康診断は有害業務に従事する労働者を対象とする重要な制度です。

林 利恵

Rie HAYASHI, MPH, PhD
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博士(医学)
特定社会保険労務士
東豊社労士事務所 代表
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医学研究者から社労士へ転身
労働衛生の専門知識を活かし
・就業規則作成
・メンタルヘルス対策
・両立支援
を得意としています
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特殊健康診断(第66条第2項・第3項)

特殊健康診断は、有害業務に従事する労働者に対して実施する健康診断です。

対象 有害業務に従事する労働者(現に従事する者+過去に従事した者の一部)

頻度 雇入れ時、配置替え時、および6か月以内ごとに1回(一部は3か月ごと)

費用 事業者負担

受診時間 労働時間として賃金支払義務があります。

判例や行政解釈(昭和47.9.18基発第602号)に基づき、特殊健康診断は「業務遂行との関連性が強いため、労働時間と解すべき」とされています。

13 健康管理

(2) 第六六条関係

イ 第一項から第四項までの規定により実施される健康診断の費用については、法で事業者に健康診断の実施の義務を課している以上、当然、事業者が負担すべきものであること。

ロ 健康診断の受診に要した時間についての賃金の支払いについては、労働者一般に対して行なわれる、いわゆる一般健康診断は、一般的な健康の確保をはかることを目的として事業者にその実施義務を課したものであり、業務遂行との関連において行なわれるものではないので、その受診のために要した時間については、当然には事業者の負担すべきものではなく労使協議して定めるべきものであるが、労働者の健康の確保は、事業の円滑な運営の不可決な条件であることを考えると、その受診に要した時間の賃金を事業者が支払うことが望ましいこと。

特定の有害な業務に従事する労働者について行なわれる健康診断、いわゆる特殊健康診断は、事業の遂行にからんで当然実施されなければならない性格のものであり、それは所定労働時間内に行なわれるのを原則とすること。また、特殊健康診断の実施に要する時間は労働時間と解されるので、当該健康診断が時間外に行なわれた場合には、当然割増賃金を支払わなければならないものであること。

ハ 第四項の「その他必要な事項」には、健康診断項目の追加等があること。

昭和47.9.18基発第602号

特殊健康診断の対象となる有害業務の例

次のような有害業務が対象となります。

  • 高気圧業務
  • 放射線業務
  • 特定化学物質を取り扱う業務
  • 石綿を取り扱う業務
  • 鉛業務
  • 四アルキル鉛業務
  • 有機溶剤を取り扱う業務

一般健康診断との違い

受診時間の取扱いが異なります。

一般健康診断 受診時間の賃金は労使協議(法的:賃金支払義務なし、行政:支払うのが望ましい)

特殊健康診断 受診時間は労働時間(賃金支払義務あり)

健康診断の事後措置

健康診断実施後、事業者には次の事後措置が義務づけられています。

①結果の記録 健康診断個人票を作成し5年間保存(一部は30年・40年)

②結果の通知 遅滞なく労働者に通知

③医師等の意見聴取 異常所見者について医師等から意見を聴く

④事後措置 就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮等

⑤結果の報告 常時50人以上の事業場は所轄労働基準監督署へ報告

保健指導

健康診断の結果、特に健康の保持に努める必要があると認める労働者に対し、医師または保健師による保健指導を行うよう努めなければなりません(努力義務)。

むすび

特殊健康診断は、有害業務に従事する労働者を対象とし、6か月以内ごとに1回実施されます。

一般健康診断と異なり、受診時間は労働時間として賃金支払義務があります。

健康診断実施後は、結果の記録・通知、医師等の意見聴取、就業場所の変更等の事後措置が必要です。

常時50人以上の事業場は労働基準監督署への報告も義務づけられています。

適切な健康診断と事後措置により、有害業務による健康障害を防止することが重要です。

特殊健康診断について|大阪労働局

化学物質取扱業務従事者に係る特殊健康診断の項目を見直しました(令和2年7月1日 施行)|厚生労働省