職場のハラスメント対応 5つのステップ

職場のハラスメント対応5つのステップ ルール作り
職場のハラスメント対応5つのステップ
著者プロフィール
林 利恵
林 利恵
Rie HAYASHI, MPH, PhD

博士(医学)
特定社会保険労務士
ISO30414 リードコンサルタント/アセッサー

東豊社労士事務所 代表
株式会社東豊経営 代表取締役

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ハラスメント対応の流れ

労働者からハラスメントに関する相談があったときの対応の流れは大きくは次のようにまとめられると思います。

ハラスメント対応の流れ
  • Step 1
    ハラスメント相談窓口

    相談窓口で労働者からの相談・苦情に対応します。

  • Step 2
    事実関係の有無を確認

    本人、相手、第三者からの聞き取り、客観的な証拠物等を調査分析し事実関係の有無を確認します。

  • Step 3
    ハラスメントの有無

    事実関係があると判断した場合、法令・指針・就業規則によるハラスメントの定義に照らしてハラスメントの有無を判定します。

  • Step 4
    対処方針の決定

    ハラスメントがあると判断した場合、ハラスメントと判断できないが何らかの対応が必要な場合、に応じて対処方針を決定します。

  • Step 5
    フォローアップ・再発防止策の実施

    本人への説明・メンタルケア、相手への注意指導、相手からの謝罪、関係改善援助、配置転換など

Step 1 ハラスメント相談窓口

根拠法令

労働者から職場のハラスメントに関する相談窓口の設置がすべての事業主に義務付けられています。

  • セクシュアルハラスメントに関する相談窓口(男女雇用機会均等法 第11条)
  • パワーハラスメントに関する相談窓口(労働施策総合推進法 第30条の2)
  • 妊娠・出産等に関するハラスメント(男女雇用機会均等法 第11条の3)
  • 育児休業等に関するハラスメント(育児・介護休業法 第25条)

根拠法令は異なりますが、これらのハラスメントによって労働者の就業環境が害されないように、労働者からの相談に応じるための相談窓口の設置が義務付けられていますので、相談窓口は一元化することをお勧めしています。

そして、相談窓口において企業が適切な対応ができるように体制を整備し、雇用管理上必要な措置を講じるところまでがセットで義務付けられています。

2022年4月からパワーハラスメント防止措置が全ての企業に義務付けられましたので、法改正施行対応として、当事務所でも顧問先様等の就業規則を改定し、職場のハラスメント対応について、相談窓口の設置、相談者の秘密が守られること、相談することによる不利益な取り扱いを受けないこと、相談窓口でどのような対応をするか等を明文化いたしました。

相談窓口

労働者が相談しやすいように、内部と外部の相談窓口があるほうが望ましいと考えます。

内部相談窓口の担当者は、使用者側/労働者側、男性/女性、などの多様性のある構成にして頂くことをお勧めします。

使用者側・労働者側、男性・女性からそれぞれ必ず選任しなければならない、という義務はありませんが、相談者側が相談しやすい体制という意味で、例えば、女性からのセクハラに関する相談は女性の相談員が対応することができますので。使用者側と労働者側、という点では、企業規模や労働組合の有無によって柔軟に考えて頂いてもよろしいでしょう。

外部相談窓口としては、弁護士や社会保険労務士の事務所、ハラスメント対策のコンサルティング会社などを利用頂くことが多いかと思います。

相談担当者の役割としては、相談の受付(一次対応)という役割に限る場合と、相談の受付(一次対応)だけでなく、事実確認も担当する場合があります。あらかじめ、相談窓口の運用マニュアルやヒアリングの記録票などを作成しておくことをお勧めします。

相談者から相談があれば、(相談窓口経由)会社としては、「Step 2 事実関係の有無を確認」へと進むことになりますが、このStep 1 の段階で会社が行う事実関係の確認で相談者が了解できる範囲を確認します。

  • ヒアリングして欲しい人、ヒアリングしないで欲しい人、ヒアリングしても差支えない人
  • 相談の場で話した内容のうち、ヒアリングの際に他の人に話して欲しくないこと など

相談窓口に話を聞いてほしい、というだけの相談であれば、Step 1 でハラスメント対応は終了します。

Step 2 事実関係の有無を確認

会社担当者(相談窓口担当者など)は、相手や第三者から聞き取るとともに、客観的に事実を証明する証拠を調査・分析し、客観的で中立的な立場で事実関係の有無を確認します。事実関係の有無を確認するだけですので、Step 2ではハラスメントの有無の判定は行いません。

相談者と相手と見解の相違があることがほとんどですが、相手の方には相談者に対する報復などは厳禁であることを合わせて伝えましょう。

事実関係の有無の確認においては、相談内容が漏れないように守秘義務を課すことも必要だと考えます。就業規則に根拠があるとよいですね。

相談者と相手の誤解があった等、事実関係が無い場合は、相談者と相手には和解して頂くなどの対応を促し、Step 2でハラスメント対応は終了します。

Step 3 ハラスメントの有無

事実関係が認められた場合には、その事実が法令・指針・就業規則に定めるハラスメントの定義や行為類型に当てはまるかを検討します。

ハラスメントに当てはまれば懲戒処分の決定にも及ぶことから、相談窓口担当者だけではなく、人事担当の責任者も含めて協議します。

その事実が法令・指針・就業規則に定めるハラスメントの定義や行為類型に当てはまるか、そして懲戒処分の検討においては、外部専門家(弁護士、社会保険労務士)に相談することをお勧めします。

Step 4 対処方針の決定

事実はあるがハラスメントと判断できない場合

この段階までくれば、ハラスメントがあったと判断することはできなかったものの、行為者の不適切な言動を放置することは今後同様の問題が起こる可能性がある等、何らかの対応が必要なことが多いと思います。

ハラスメントがあると判断した場合

就業規則の懲戒規定に従い、懲戒処分を行います。懲戒処分の重さは、その事実が法令・指針・就業規則に定めるハラスメントの定義や行為類型や裁判例などへの当てはめを考慮し、会社が判断します。

社内での判断に迷った場合は、守秘義務のある専門家(弁護士や社会保険労務士など)に相談することをお勧めします。

Step 5 フォローアップ・再発防止策の実施

フォローアップ

ハラスメントの有無によらず、事実確認があれば、必要に応じて次のようなフォローアップを行います。

  • 会社が行った取り組みの説明
  • 行為者(場合によっては相談者)への注意・指導
  • 相談者・行為者の関係改善の援助
  • 行為者からの謝罪
  • 配置転換
  • 相談者(場合によっては行為者)の不利益回復
  • 職場環境の回復
  • メンタルケア など

再発防止策の実施

再発防止策は予防策と表裏一体ですので、予防策に継続的に取り組むことが再発防止につながると考えます。

ハラスメント相談窓口の取組の振り返り

年1回程度、相談窓口での取り組み内容を検証し、必要に応じて見直して、継続的改善に取り組みましょう。

職場のハラスメントに関するアンケート調査

また、相談窓口に相談してくれる労働者よりもむしろ、黙って会社を去ってしまう労働者のほうが多いのではないかと思いますので、経営者や人事担当者がまだ気づいていないハラスメントを見つけるために、定期的に職場のハラスメントに関するアンケート調査をすることも有効な再発防止策だと考えます。

職場のハラスメント防止研修

職場のハラスメント防止研修も定期的に行いましょう。厚生労働省では毎年12月は「ハラスメント撲滅月間」と定めています。12月は忘年会など飲酒を伴う催しがあり、ハラスメントが起こりやすい環境になりがちですので、秋くらいの研修が適しているかもしれませんね。

むすび

今回は労働者からハラスメントの相談があったときの対応について概要をまとめました。参考にしていただければ幸いです。

具体的な手続きや必要な書類については、就業規則等の社内規程を確認しましょう。

ハラスメントの有無や懲戒処分の判断にお困りの場合は、迷わず専門家(弁護士・社会保険労務士)に相談することをお勧めします。

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