在宅勤務と営業手当!就業規則・賃金規程見直しのポイント

在宅勤務と営業手当!就業規則・賃金規程見直しのポイント ルール作り

営業職に完全在宅勤務をさせています。外回りの営業に対する負担と残業代を含めた意味合いで、月5万円の営業手当を支払っています。

しかし、コロナ禍により直接訪問が減り、客先への訪問もほとんどWeb面談になり外回りが減りました。移動時間が減ったため、残業が減り定時に終わることが多くなりました。

そこで、完全在宅勤務の間は営業手当を支払わなくても良いのではないかと考えましたが、問題はありますでしょうか?

会社の就業規則や賃金規程に営業手当の支給要件が定められているはずので、確認しましょう。

著者プロフィール
林 利恵
林 利恵
Rie HAYASHI, MPH, PhD

博士(医学)
特定社会保険労務士
ISO30414 リードコンサルタント/アセッサー

東豊社労士事務所 代表
株式会社東豊経営 代表取締役

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就業規則・賃金規程の定めによります

会社の就業規則や賃金規程に営業手当の支給要件が定められているはずです。

営業手当の支給要件がご質問の通り

  • 外回りの営業に対する負担
  • 残業代を含めている

であれば、

  • 在宅勤務では【外回りの営業】は無い
  • 在宅勤務では移動時間が削減されるので残業が無い

ことから、完全在宅勤務をする労働者が営業手当の支給要件に当てはまらないと判断して、営業手当を支払わないことも可能だと考えます。

しかし、単に

「営業手当は、営業職の従業員に対して月5万円を支給する。営業職には第〇条の時間外手当を支給しない。」
という定めであれば、在宅勤務で【外回りの営業】が無かったとしても、【営業職】であることには変わりがないので、営業手当をカットすることは難しいでしょう。

営業手当に残業代を含むことの危険性

営業手当・役職手当を支払う代わりに残業手当・休日手当を支払わない、という規則を見かけます。

営業手当は営業職という職責に対する対価、役職手当は役職者としての重責に対する対価であって、固定残業代については固定残業手当として分ける必要があります。純粋な固定残業代としての手当であれば、月〇時間分の残業代を事前に確定させていることから当然に割増賃金の算定基礎には含めません。一方で、純粋に職務・責任に対する営業手当や役職手当であれば、当然に割増賃金の算定基礎に含めます。

営業手当や役職手当に固定残業代を含めると何が問題なのかと言いますと、営業手当や役職手当に固定残業代を含めてしまうと、割増賃金の算定基礎に含めない場合は、割増賃金の計算間違いで未払い賃金が発生しますが、一方で割増賃金の算定基礎に含める場合は本来の残業代よりも割高になってしまいます。いずれにしても正確に賃金計算できていないことが問題です。

また、固定残業手当分を超えて時間外労働をした場合は超過分に対して追加で割増賃金(残業手当)を支払わなければなりませんので、やはり労働時間をキチンと管理して、何時間分が固定残業手当で支払って、何時間分が固定残業手当から超過したのか、追加で支払う金額を計算する必要があるのです。

営業手当の支給要件を見直そう

これまでなんとなく営業手当は外回りのため、昼食を外で食べたり、残業になりがちだったり、他社さんの求人募集を見て何となく相場で決めていることもあるかもしれません。

営業の仕事は会社の利益に直結する重要な業務です。営業職としての職務やスキルに対して支払うのであれば、働く場所は関係ないので、在宅勤務であっても出社勤務であっても同じ手当を支払うべきでしょう。

コロナ禍では、これまで何となく当たり前だったことが見直されています。

この機会に、営業手当は何に対して支払うのかを見直されることをオススメします。