労働安全衛生法シリーズに続き、ここから新しい科目である労働契約法の解説を始めます。
この記事では、労働契約法の目的と5つの基本原則について解説します。
労働契約法とは
労働契約法とは、労働契約に関する基本的なルールを定めた法律です(2008年・平成20年施行)。
労働基準法のような「罰則」はありませんが、裁判などでの「判断基準(民事ルール)」となります。
目的(第1条)
労働契約法の目的は、労働者及び使用者の自主的な交渉の下で、労働契約が合意により成立・変更されるという基本原則の下、合理的な労働条件の決定・変更が円滑に行われるようにすることです。
労働契約の5つの原則(第3条)
労働契約には、次の5つの原則があります。
①労使対等の原則
②均衡考慮の原則 就業の実態に応じて均衡を考慮します。
③仕事と生活の調和への配慮の原則
④信義誠実の原則
⑤権利濫用の禁止
この「権利濫用の禁止」が、後の第14条(出向)、第15条(懲戒)、第16条(解雇)の判断基準につながる重要な柱となります。
労働契約の成立(第6条)
労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて合意することによって成立します。
書面の作成は成立要件ではありません(合意のみで成立)。
つまり「働きます」「雇います(給与を払います)」という口頭の合意のみでも、労働契約は成立します。
だからこそ、後から「言った・言わない」のトラブルにならないため書面での契約が重要なのです。
労働契約の内容の理解の促進(第4条)
使用者は、労働者に労働条件等をできる限り書面により確認するものとされています。
第4条に「できる限り書面」とありますが、これはあくまで努力義務です。ただし、労働基準法第15条では書面明示が義務化されていますので、実務上は「書面明示は義務」として運用します。
労働基準法第15条と労働契約法第4条の違い
- 労基法15条:絶対的明示事項(賃金、場所、時間など)を「通知」する義務
- 労契法4条:労働契約の内容(合意した中身)全体を「確認」する努力義務
むすび
労働契約法は、労働契約に関する民事ルールを定めた法律です。
労使対等、均衡考慮、仕事と生活の調和、信義誠実、権利濫用禁止の5つの原則があり、特に権利濫用禁止は出向・懲戒・解雇の判断基準となる重要な原則です。
労働契約は合意のみで成立しますが、トラブル防止のため書面での確認が重要です。
労働基準法が労働条件の通知を義務づけるのに対し、労働契約法は契約内容全体の確認を努力義務としています。
これから労働契約法の各論について順次解説していきます。
