労働組合法シリーズに続き、ここから新しい科目である最低賃金法の解説を始めます。
この記事では、最低賃金法の目的と2種類の最低賃金について解説します。
最低賃金法とは
最低賃金法とは、賃金の最低額を保障することにより、労働条件の改善を図り、労働者の生活の安定、労働力の質的向上等に資することを目的とした法律です。
最低賃金の効力(第4条)
最低賃金には、次のような効力があります。
- 使用者は最低賃金額以上の賃金を支払わなければなりません
- 最低賃金額に達しない賃金を定める労働契約は、その部分について無効となります
無効となった部分は最低賃金と同様の定めをしたものとみなされます。
合意していても最低賃金未満は無効になる強行規定です。
罰則があります。最低賃金法の罰則について|大阪労働局
最低賃金の種類
最低賃金には、次の2種類があります。
①地域別最低賃金(第9条)
- 都道府県ごとに設定(47都道府県すべてに設定)
- すべての労働者に適用
- 毎年10月頃に改定
②特定最低賃金(産業別最低賃金)(第15条)
- 特定の産業について設定
- 地域別最低賃金より高い金額を定めます
- 関係労使の申出に基づき設定
両方が適用される場合は「高い方」を支払う必要があります。
地域別最低賃金の決定基準(第9条第2項)
地域別最低賃金は、次の3つの基準で決定されます。
①労働者の生計費 ②労働者の賃金 ③通常の事業の賃金支払能力
生計費を考慮するに当たっては、生活保護に係る施策との整合性に配慮されます。
地域別最低賃金の決定プロセス
地域別最低賃金は、次のプロセスで決定されます。
厚生労働大臣の諮問 → 中央最低賃金審議会で目安額を提示 → 都道府県労働局長の諮問 → 地方最低賃金審議会で審議・答申 → 都道府県労働局長が決定・公示 → 毎年10月頃に発効
最低賃金審議会の構成
最低賃金審議会は、次の三者構成です。
- 公益代表委員(学識経験者等)
- 労働者代表委員(労働組合等)
- 使用者代表(使用者団体等)
労働委員会と同じ三者構成です。
最低賃金の対象となる賃金
最低賃金の対象となるのは、毎月支払われる基本的な賃金です。
対象となる賃金 基本給、諸手当(下記対象外を除く)
対象とならない賃金 精皆勤手当、通勤手当、家族手当、時間外・休日・深夜手当、賞与、臨時の賃金
最低賃金の計算方法
最低賃金の計算方法は、次のとおりです。
- 時間給:時間給 ≧ 最低賃金額
- 日給:日給÷1日の所定労働時間 ≧ 最低賃金額
- 月給:月給÷1か月平均所定労働時間 ≧ 最低賃金額
最低賃金の減額特例(第7条)
都道府県労働局長の許可で減額が可能な場合があります。
- 精神または身体の障害により著しく労働能力の低い者
- 試の使用期間中の者
- 職業訓練を受ける者
- 軽易な業務に従事する者
- 断続的労働に従事する者
むすび
最低賃金法は、賃金の最低額を保障し、労働者の生活の安定を図る法律です。
地域別最低賃金と特定最低賃金の2種類があり、両方が適用される場合は高い方を支払います。
地域別最低賃金は、労働者の生計費、賃金、事業の賃金支払能力を基準に、三者構成の審議会を経て決定されます。
最低賃金の対象には基本給と諸手当が含まれますが、通勤手当や時間外手当等は含まれません。
減額特例は都道府県労働局長の許可で認められる場合があります。
これから最低賃金法の各論について順次解説していきます。
