労災保険の傷病(補償)等年金|支給要件と職権決定の仕組みを解説

労災保険の傷病(補償)等年金|支給要件と職権決定の仕組みを解説 労働社会保険諸法令の基礎知識

労災保険の傷病(補償)等年金は、療養が長期化し重度の障害が残っている労働者に支給される給付です。この記事では、支給要件と他の給付との違いについて解説します。

林 利恵

Rie HAYASHI, MPH, PhD
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博士(医学)
特定社会保険労務士
東豊社労士事務所 代表
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医学研究者から社労士へ転身
労働衛生の専門知識を活かし
・就業規則作成
・メンタルヘルス対策
・両立支援
を得意としています
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傷病(補償)等年金とは

業務災害の場合は「傷病補償年金」、通勤災害の場合は「傷病年金」と呼ばれます。

療養開始から1年6か月を経過しても治ゆしない重度の傷病に対して、休業(補償)給付に代わって支給される給付です。

支給要件

傷病(補償)等年金が支給されるためには、次の両方の要件を満たす必要があります。

①療養開始後1年6か月を経過しても傷病が治っていないこと 長期療養が必要な状態が継続していることが要件です。

②傷病による障害の程度が傷病等級(第1級~第3級)に該当すること 重度の障害が認められることが必要です。

「治ったとき」とは

労災保険における傷病が「治ったとき」とは、身体の諸器官・組織が健康時の状態に完全に回復した状態のみをいうものではなく、傷病の症状が安定し、医学上一般に認められた医療(注1)を行っても、その医療効果が期待できなくなった状態(注2)をいい、この状態を労災保険では「治ゆ」(症状固定)といいます。
したがって、「傷病の症状が、投薬・理学療法等の治療により一時的な回復がみられるにすぎない場合」など症状が残存している場合であっても、医療効果が期待できないと判断される場合には、労災保険では「治ゆ」(症状固定)として、療養(補償)等給付を支給しないこととなっています。
(注1) 「医学上一般に認められた医療」とは、労災保険の療養の範囲(基本的には、健康保険に準拠しています)として認められたものをいいます。したがって、実験段階または研究的過程にあるような治療方法は、ここにいう医療には含まれません。
(注2) 「医療効果が期待できなくなった状態」とは、その傷病の症状の回復・改善が期待できなくなった状態をいいます

休業(補償)等給付 傷病(補償)等年金の請求の手引き|厚生労働省

給付額

傷病(補償)年金額(給付基礎日額)

  • 1級:313日分
  • 2級:277日分
  • 3級:245日分

傷病特別支給金(一時金)

  • 1級:114万円
  • 2級:107万円
  • 3級:100万円

傷病特別年金額(算定基礎日額)

  • 1級:313日分
  • 2級:277日分
  • 3級:245日分

傷病(補償)等年金の特徴

傷病(補償)等年金には、他の労災給付にはない特徴があります。

労働基準監督署長の職権による支給決定 労働者からの請求ではなく、労働基準監督署長が職権で支給を決定します。

休業(補償)給付からの切り替え 療養開始後1年6か月が経過し、要件を満たした場合、休業(補償)給付から傷病(補償)等年金へ切り替わります。

傷病等級の特徴 傷病等級は障害等級と異なり、第1級から第3級のみです。第4級以下に該当する場合は、引き続き休業(補償)給付が支給されます。

むすび

傷病(補償)等年金は、長期療養が必要で重度の障害が残っている労働者を支援する制度です。

労働者の請求ではなく職権で決定される点、休業給付から自動的に切り替わる点が大きな特徴です。

療養開始から1年6か月が経過する前に、労働基準監督署から傷病の状態に関する調査が行われますので、医師の診断に基づいて適切に対応することが大切です。

休業(補償)等給付 傷病(補償)等年金の請求の手引き|厚生労働省