労災保険の社会復帰促進等事業は、被災労働者の社会復帰や遺族の援護、労働災害の防止などを目的とした事業です。この記事では、3つの事業内容と保険給付との違いについて解説します。
社会復帰促進等事業とは
社会復帰促進等事業は、労災保険の保険給付とは別に、被災労働者の社会復帰の促進や遺族の援護、労働災害の防止などを図るために実施される事業です。
事業の3つの種類
社会復帰促進等事業には、次の3つの種類があります。
①社会復帰促進事業
被災労働者の社会復帰を促進するための事業です。
- 療養施設、リハビリテーション施設の設置・運営
- 義肢等補装具の支給
- アフターケア
- その他
②被災労働者等援護事業
被災労働者とその遺族を援護するための事業です。
- 特別支給金の支給
- 労災就学等援護費の支給
- 労災就労保育援護費の支給
- その他
③安全衛生確保等事業
労働災害の防止や労働者の健康確保を図るための事業です。
- 労働災害防止対策の実施
- 健康診断施設の設置・運営
- 母性健康管理等対策の実施
- その他
対象者
社会復帰促進等事業の対象者は、労働者とその遺族です。
保険給付との違い
社会復帰促進等事業には、保険給付とは異なる重要な特徴があります。
保険給付ではない 社会復帰促進等事業は、労災保険の保険給付(療養給付、休業給付など)ではなく、別の枠組みで実施される事業です。
審査請求の根拠法が異なる 社会復帰促進等事業に対する不服申立ては、行政不服審査法(行審法)に基づく審査請求の対象となります。
一方、保険給付に対する不服申立ては、労働保険審査官及び労働保険審査会法(労審法)に基づく審査請求の対象となります。
このため、審査請求先が異なります。下図の左側が社会復帰促進等事業について、右側が保険給付についての審査請求の流れです。

社会復帰促進事業等について|厚生労働省
社会復帰促進等事業の給付に係る審査請求制度の見直しについて
実際、下記の具体例のような課題が想定されます。
令和8年1月14日に労働政策審議会が厚生労働大臣に制度の見直しを建議しました。

(3)社会復帰促進等事業について
労災保険制度の見直し(建議) 労審発第1728号 令和8年1月14日|労働政策審議会
社会復帰促進等事業として実施されている給付について、特別支給金も含めて処分性を認め、審査請求や取消訴訟の対象とすることが適当である。
また、労働者等に対する給付的な社会復帰促進等事業に対する不服申立てについては、保険給付と同様に労働保険審査官及び労働保険審査会法の対象とすることが適当である。
むすび
社会復帰促進等事業は、労災保険の保険給付を補完する重要な事業です。被災労働者の社会復帰支援、遺族の援護、労働災害の防止など、幅広い取り組みが行われています。特別支給金やアフターケアなど、私たちが日常的に利用する制度も、この社会復帰促進等事業の一環として提供されています。保険給付とは法的な位置づけが異なる点に注意が必要ですが、制度の見直しが進みつつあるところで、今後の動向に注目です。
